2009年12月30日

最初の作戦 The first operation

21日の朝7時。バクラム近郊で、ファヒム将軍は、ディアスおよびハード少尉らと面会した。将軍の目は、明らかに猜疑心にあふれていた。開口一番、「我々、北部同盟がアメリカと協働するかどうかは、アメリカ軍の実力にかかっている。弱者と組んでも意味がない」と、言うと、すぐに別室へ消えてしまった。

ファヒム将軍は、ディアスがアメリカ軍を連れてくるというので、てっきり1個大隊くらいの部隊が来ると思っていたらしい。残された部屋で、「ともかく、証拠を見せないかぎりは、話が進まんな」とハード少尉は、ディアスに言った。

ハード少尉は、配下のチーム555に、周囲を偵察するように命令した。やがて隊員から、バグラム空軍基地から南へ80kmの地点にタリバンの大拠点があることが分かった。さらにウズベクの司令部から衛星写真も取り寄せて、拠点の規模を確認した。
タリバン拠点は、10km四方の範囲に塹壕が張り巡らされ、その内側には、司令部、通信施設、砲兵陣地などがあり、周辺には戦車や装甲車が数十台配置されていた。部隊規模は1個大隊、5000名くらいであろう。

ハード少尉は、「この拠点をファヒム将軍の目の前で潰す。方法は、夜間に敵拠点に忍び込み、重要施設に発信機を取り付ける。夜が明けてから空爆を要請して、拠点を根こそぎフッとばす」と、衛星写真を前に隊員たちに言った。
隊員の中には、空爆ではなく、特殊部隊だけで壊滅させたほうがよいという意見もあったが、ハード少尉は、「それでは我々が強いことの証明になっても、アメリカ軍が強いことを証明できない」と、意見を退けた。あとは、どの隊員がどこから侵入し、どの施設に発信機をとりつけるのかを打ち合わせた。

某日深夜。チーム555は、アフガンの闇に消えた。2時間ほどで、全員が帰還した。タリバン兵はまったくの無防備で、特殊部隊が侵入したことに気付かなかったようである。
「明日は、花火大会だ」。ハード少尉は、隊員たちに言った。


次回更新は、1月6日 「近接航空攻撃」です。お楽しみに。
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Posted by 友清仁  at 07:00Comments(0)Story(物語)

2009年12月23日

セイフティハウス Safety house

ヘリが着陸すると、隊員達はすぐにヘリから飛び降りた。一人当たり50kg近い装備をかついでいるのだが、隊員達は、迅速に行動した。ヘリは、隊員たちを降ろすとすぐに上昇し、再び闇の中に消えた。
「周囲を警戒しろ。だが発砲するな」。ハード少尉は無線で隊員たちに言った。暗視ゴーグルをつけていなければ、小さな岩でもつまずくほどの暗闇である。そして、「歓迎パーティーは、なし・・か」とつぶやいた。
ハード少尉は、5、6mほど進んだ。つぎの瞬間である、後ろから、たくましい男の腕で羽交い絞めにされた。しかし、すぐに、「ようこそ、アフガンへ」とアメリカ南部の鉛のある声が耳元で囁かれた。「ファック!はじめからそこにいやがったな。会えて最高にうれしいぜ。」とハード少尉は怒鳴った。ハード少尉率いるチーム555は、無事にCIA工作員ディアスと合流した。

ハード少尉とチーム555は、CIA工作員ディアスが用意したソ連製軍用トラックに乗って、セイフティハウスに向かった。ヘッドライトは点けていない。ディアスは暗視ゴーグルをつけて運転している。車中でハード少尉は、なぜ目印の蛍光棒を置かなかったのか、ディアスに訊いた。するとディアスは「家に忘れてきちまったのさ」。と答えた。ならばなぜ、他の合図をしなかったかと重ねて尋ねると、「そんなことしたら、敵と間違われて、ヘリに蜂の巣にされちまうだろ」。と答えた。ハードはもっともだと思った。

やがてセイフティハウスへ到着した。セイフティハウスと言っても特別なものではなく、現地民の土作りの家である。ディアスは、現地民からこの家を買い取り、資材を持ち込んで司令部と連絡を取り合っていたのである。ハード少尉らが荷物を降ろし、家に入ると、「明日、北部同盟のファヒム将軍と会ってもらう。詳細は明日だ。今日はゆっくり休んでくれ」。そういうと、ディアスは別室へと消えた。


次回更新は、12月30日 「最初の作戦」です。お楽しみに。
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Posted by 友清仁  at 07:01Comments(0)Story(物語)

2009年12月16日

特殊部隊始動 Special forces kick off

注:特殊部隊の秘密作戦という性質上、本文内の登場人物は、英語の併記がない人物は、すべて仮名です。

2001年10月19日。2機のMH-53Jが、漆黒の闇の中を超低空で飛行していた。ライトなどは点灯せず、パイロットは、ナイトビジョンとGPSだけでヘリを操縦していた。ヘリには防音処理が施されているため、500mも離れれば、ローターの音も聞こえない。場所は、アフガンのパンシャール渓谷である。

兵士と装備で満載のヘリの中では、誰一人として話をする者はなかった。全員、作戦開始の緊張の中にいる。機動部隊ダガー、特殊分遣隊チーム555を率いるダニエル・ハード少尉は、焦りを感じ始めていた。作戦前のブリーフィングでは、現地に侵入したCIA工作員と着地地点で合流し、北部同盟のファヒム将軍と接触することになっていた。さらに、ウズベクの飛行場から着地地点までは、わずか30分と説明を受けていたが、すでに1時間以上も飛行している。その飛行も直線ではなく、何度も旋回、上昇を繰り返していた。

ハード少尉は、ヘリの副操縦士のヘルメットを小突き、現状を尋ねた。副操縦士は「すでに着陸地点付近に到着しているんだが、目印の蛍光棒が見つからない。着陸地点がフラットじゃないと着陸できない」。と答えた
目印の蛍光棒がないということは、CIA工作員は殺害されたのか?しかしその場合でも、ハード少尉には、アフガンの適所に着陸し、後続の部隊のために拠点を作るように命令されていた。

「どこでもいい。着陸してくれ」。ハードは言った。「しかし、着陸地点がフラットじゃないと・・・」と、副操縦士が言いかけると、「そこを何とかするのが、あんたらの仕事だ」。そう言うと、ヘリの格納区画へ戻った。
数分後、ヘリ全体に衝撃が走った。強引に着陸したようである。「全員、ヘリから降りろ!急げ!」。ハード少尉は、隊員に、闇の中で怒鳴った。



次回更新は、12月23日「セイフティハウス」です。お楽しみに。
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Posted by 友清仁  at 06:37Comments(0)Story(物語)

2009年12月09日

空爆開始 The outbreak

アメリカ軍の公式発表によれば、「不屈の自由作戦」は、2001年10月6日夜に行なわれた、「クレセント・ウィンド(弦月旗の風)」作戦で始まったとされている。第1撃の作戦名がアメリカ人らしいジョークに満ちている。クレセント(crescent)とは、オスマン帝国の軍旗のことであり、転じてイスラム勢力の意味もある。

6日深夜、アメリカ・イギリス連合国軍の航空機が、タリバン政権の指揮命令組織および防空施設を爆撃するべく一斉に飛び立った。連合国軍司令部は、この空爆作戦で、多少の損害を覚悟していたが、タリバン政権の対空ミサイルは、SA-2およびSA-3といった何世代も昔のものであり、英米軍の最新鋭戦闘機の前には存在しないも同然だった。迎撃機も対空ミサイルと同様で、パイロットの腕も悪く、あっという間に撃墜されてしまった。
当初、数日間かかると思われていた作戦は、この1晩で完了し、連合国軍は制空権を確立した。

タリバンは、政府というよりはアフガン国内の雑多な勢力の中で最大のものといった方が正しい。つまりタリバンは、ビン・ラディンのアルカイダや地方族長の力の均衡の上に成立しており、彼らの私兵が治安維持軍として機能しているだけであった。したがって、アフガニスタンを統治するには、これらの族長たちを逮捕するか、降伏させるか、懐柔するなどして、国内を「統一」なければならない。この「統一」は、空爆だけでは不可能である。

10月19日深夜、特殊部隊がアフガンに侵入した。


次回更新は、12月16日「特殊部隊始動」です。お楽しみに。
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Posted by 友清仁  at 08:22Comments(0)Story(物語)