2010年06月30日

掃討か?虐殺か? Mop-up? Bloodshed?

11月26日、この日も激しい銃撃戦が行なわれたが、昨晩の空爆と混乱でタリバン軍の戦力は半減した。9時ごろ、ガードナーは、北壁の数箇所にやぐらを設置させた。このやぐらにCCTや観測兵を置き、場外の迫撃砲や上空の航空機にタリバン兵の位置を知らせるためである。やぐらからの情報を基にした砲撃は、非常に効果があり、城内のタリバン兵は、徐々に弱まり始めた。しかし、タリバンは、未だに城塞の南半分、250から300メートル四方の範囲を占拠していた。

CCTの誘導の下、撃砲および空爆が続けられた。もはやタリバン側からの反撃はなかった。否、タリバンの射程から離れたところで、CCTは、攻撃地点の座標を端末に打ち込み、上空の航空機、城外の砲兵に送るだけの、「作業」を続けているだけだった。そのとき、戦場の悪魔がそっと近づいていることに、北壁のCCTたちは気づいていなかった。

「攻撃機パイロットから北壁のグループへ。送られてきた座標がおかしいようだ。確認せよ」。この連絡に北壁のCCTは、手元の端末を確かめることなく、「敵が移動したから、座標をずらしただけだ。座標は正しい。すぐに爆弾を落としてくれ」。と簡単に応答した。

10時53分、GBU-32レーザー誘導爆弾数発が、城外で待機しているドスタム軍の戦車部隊に命中し、大爆発を起した。「なんてこった。そこじゃない」。とCCTは、叫んだが、すでに遅かった。この誤爆で、ドスタム軍の兵士80名および英SAS隊員5名が死傷した。

このようなトラブルがあった中、信じられない情報がガードナーの元に届けられた。なんと、英人ジャーナリストが、監獄の暴動以来、連絡が取れなくなっており、どうやら、城塞で暴動が起きたとき、こっそり潜入し、そのまま取り残されているとの事だった。

ガードナーは、教えられたジャーナリストの衛星携帯電話の番号をダイヤルした。おそらく死んでいるだろうと思ったが、ジャーナリストが電話に出た。「すぐに助け出してくれ」。と悲痛な叫びが電話から聞こえた。「暴動の中に潜入して、あの空爆の中で生きているとは、俺たち(特殊部隊)よりもすげえ奴だ」。ガードナーはあきれながら言った。

ジャーナリストを救出するため、空爆を中止し、その代わりAC-130からバルカン砲で制圧射撃をさせた。この射撃の精度は信じられないほどで、建物に隠れることができないタリバン兵は全員、射殺された。救出に向かったクリス曹長は、まったく敵に遭遇することなく、救出作戦を終えた。

次回更新は、7月7日 「空軍戦闘管制チーム(CCT)」です。お楽しみに。
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Posted by 友清仁  at 07:00Comments(0)Story(物語)

2010年06月23日

ターニングポイント Turning point

「残り4分、3分、30秒、15秒・・・」空軍の戦闘管制 (CCT)士官は、冷静にカウントダウンを始めた。1発のGBU-32 JDAM(直接攻撃弾)が、上空で待機していた海兵隊のホーネットから投下され、城塞の建物の1つに命中し、大爆発が起こった。続けて、6発が投下され、タリバン兵が集中している城塞の南東部は、火の海となった。

突然の爆発に、今までドスタム軍を圧倒していたタリバン兵は、すぐに戦意を喪失し、狭い城内を逃げ始めた。ある者は、西門に向かって走り、またある者は、東門に殺到した。通路で転んだ者は、後から来る者に容赦なく踏み潰され、圧死した。ある者は、「裏切り者が出た」と叫び、さっきまで共に戦っていた同胞に向けて発砲し、まさに阿鼻叫喚の有様となった。

この混乱の中で、かろうじて城外に脱出できた者も、ほとんどがドスタム軍に捕殺された。まさに空爆は、この戦闘のターニングポイントとなった。

タリバン兵の混乱を脇に、クリス曹長の部隊は、暗視ゴーグル越しに城内を捜索した。誤爆・誤射を避けるため、クリスたちは、ディストレスマーカライトを肩につけている。この点滅を欧米の軍関係者が見れば、友軍だと分かるはずである。

空爆が開始されてから30分ほど経過し、クリスは、デイブたちを見つけられないことにあせりを感じ始めていたとき、イギリスSASの隊員が「曹長。あそこに」。と指を刺した。クリスが指の先を見ると、城壁に付随する塔の中ほどから、クリス達がつけているディストレスマーカライトと同じ点滅が見えた。「急げ」。クリスたちは、塔に向けて走った。

塔の階段を駆け上がり、鉄のドアを思い切り開けた。中には、負傷しているデイブとドイツ人テレビクルーがいた。「待たせたな。すぐに家に帰るぞ」。クリスがそう言うと、デイブは、激痛に耐えながら、ニヤリとした。ついでテレビクルー達を見た。次の瞬間、クリスの目が鋭く光った。なんと、テレビクルーは、クリスたちを撮影していたのである。

クリスは、ホルスターからベレッタ92Fを抜くと、カメラマンに向け、「撮影を続けるのなら、あんたらを今すぐここで殺す。カメラをよこせ」。クリスの低い声は、決して脅しではないことは明らかだった。クリスは、テレビカメラをクルーからひったくると、塔の小窓から投げ捨てた。クリスは、負傷したデイブを背負うと、「十分に安全だ。絶対に走るな」。とテレビクルーに言った。

クリスたちは、暗闇の城壁をゆっくりと進んだ。途中、混乱したタリバン兵と遭遇することもあったが、彼らは、クリスたちを見ると、すぐに投降した。26日早朝、無事に城外へ脱出し、救出作戦は成功した。


次回更新は、6月30日 「掃討か?虐殺か?」です。お楽しみに。
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Posted by 友清仁  at 07:01Comments(0)Story(物語)

2010年06月16日

攻撃開始2 The Kick Off2

11月25日、深夜0時。照明弾が打ち上げられ、北壁に展開しているドスタム軍が一斉に射撃を開始した。

とはいえ、ドスタム軍は、暗視装置を持っていないため、タリバンがいる南側に向けて、文字通り「めくら撃ち」をしているにすぎない。それに対して、タリバンは、敏感に反応した。彼らは、武器弾薬が豊富なことに加え、決死の覚悟をしているため、ドスタム軍に向けて正確に射撃し、勇猛に突進してきた。

タリバン兵のあまりの勇猛さにドスタム軍は圧倒され、占領した北壁から逃げだす者も現れた。この様子を見たガードナー中尉は、すぐに北壁によじ登り、「クソ虫ども!踏みとどまれ!」と英語で大喝した。

ドスタムの兵に英語が通じるわけもないのだが、ガードナーの一喝は、言葉を超えて、ドスタム兵に響き、兵たちは落ち着きを取り戻した。そしてガードナーは、近くの兵士の銃を取り上げると、「銃は、こうやって撃つんだ」。と叫び、タリバン兵に向け発砲した。至近距離であったため、面白いほど当った。あとは、ガードナー中尉の指揮の下、ドスタム軍は、きびきびと行動した。

一方、城塞の南東側にまわった部隊である。この部隊は、クリス曹長が率いるSAS隊員を含む10名である。「思ったよりも高いな」。クリス曹長は、城壁を見上げ言った。
しかし長年、風雨にさらされた日干しレンガの城壁はぼろぼろで、よじ登ることはさほど難しくなかった。

部隊は難なく壁を越え、城塞に侵入し、すぐにタリバンが密集する内壁付近に到達した。こちらは、ドスタム軍と違って、全員が暗視ゴーグルだけでなくGPSも装備していた。
タリバン兵は、ドスタム軍との戦闘に気をとられ、クリス達が侵入したことにすら気がついていない。

「敵さんが遊んでいる間に、俺たちは、さっさと仕事をしちまおう」。クリス達は、すばやくレーザー識別機を城塞の適所に取り付けた。

クリス曹長は、城塞に侵入した隊員が全員、集合場所に集まったことを確認すると、無線で城外のCCTに、「バーベキューの準備が整った。ウェルダンで焼いてくれ」。と言い、ただちにデイブが篭る南塔の捜索を開始した。


次回更新は、6月23日「ターニングポイント」です。お楽しみに。
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Posted by 友清仁  at 07:00Comments(2)Story(物語)

2010年06月09日

攻撃開始1 The Kick Off 1

デイブたちはどこにいるのか。救出作戦を立てる上で、最も重要であった。幸い、デイブたちが衛星携帯電話を持っていたので、これは簡単に分かった。

彼らは、城塞の中ほどの塔に隠れているようである。デイブからの情報では、タリバンたちは、ドスタム軍の砲撃を恐れ、城塞の南東側に集中しているようである。一時はデイブたちが隠れている塔へ、盛んに銃撃を加えていたが、現在は小康状態だという。

ガードナーは、部下のグリーンベレー、SASおよびドスタムの側近を呼び集めた。ガードナーは、その場にしゃがみ、小石を摘み上げると、クライ・シャンギ城塞の略図を地面に描いた。地面には、2重の長方形が描かれた。

「現在、ドスタム軍が城塞の北壁を押さえている。そして、デイブたちは、内壁の塔に隠れているそうだ」。地面の略図に、情報を書き加え、「そして、タリバン兵は、内壁の南東に集中しているらしいが、5~10人くらいのタリバン兵が絶えず城内をうろうろしていて、負傷したデイブだけでは、民間人を誘導して脱出することは難しいようだ。さらに、我々が侵入しても、タリバンの小部隊と遭遇すれば、戦闘となる。そうなれば、我々は、狭い城内でタリバンに囲まれて全滅する」。

ここまで話して、ガードナーは、顔を上げて、「そこで、人質の救出とタリバンの撃滅を同時に行う」。と皆を見て、凛として言った。

ガードナーの作戦は、以下のとおりである。
1.北壁のドスタム軍がタリバンに向け銃撃を開始する。この銃撃は陽動作戦であり、積極的な行動はしない。
2.タリバンが気を取られている間に特殊部隊が城内南東部に侵入し、戦術レーザー(TLD)を取り付ける。
3.城外の戦闘管制(CCT)が、レーザー識別機(TLD)の信号をもとに航空機を誘導し、タリバンを空爆する。
4.空爆で混乱しているタリバンを避けつつ、デイブらを救出する。(万一、タリバン兵に遭遇しても、彼らは混乱しているため、組織的な行動が取れない)

ガードナーは、城内に進入する隊員を選定すると、「作戦開始は、今夜0時。それまでに各員は、配置につけ」。と言った。

ついで、衛星携帯電話でデイブたちに向けて、「おい、今から助けてやるからな。もうしばらく・・・」。と告げたのだが、電話は途中で切れた。ガードナーは、不思議な胸騒ぎを感じた。


次回更新は、6月16日「攻撃開始2」です。お楽しみに。
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Posted by 友清仁  at 07:02Comments(0)Story(物語)