2010年12月29日

タクール・ハーの戦い7 Takur Ghar 7

「3,2,1、Go!!」。セルフ大尉は、そう叫ぶと同時にチヌークのミニガンをアルカイダの塹壕に向けて発砲した。ヘリの後部ハッチから、レンジャーたちが次々と飛び出し、岩場に向けて走り出した。

最初にヘリから飛び出したレンジャーは、デ・ポゥーリ軍曹であった。セルフ大尉の援護射撃は、アルカイダの塹壕を正確に狙い、テロリストに頭を上げさせなかったが、それでもなお、テロリストは、銃だけを塹壕から出して射撃していた。そんなあてずっぽうな射撃の数発が、ヘリの後部ハッチ付近に当たり、銃弾の破片がデ・ポゥーリ軍曹の防弾ベストに食い込んだが、幸いケガはなかった。

デ・ポゥーリ軍曹が飛び出して、2,3メートル進んだところで、セルフ大尉が射撃している2時方向とは正反対の8時方向に、アルカイダが1名、RPGをかまえているのが見えた。デ・ポゥーリは、瞬時にM4のフルオートの全弾を、そのテロリストに叩き込んだ。日ごろの射撃訓練の成果が出たのか、弾は吸い込まれるように、テロリストに向かい、敵はその場に崩れた。そしてデ・ポゥーリは、岩場に飛び込んだ。

次にヘリを飛び出したのは、ジョシュア・ウォーカー軍曹であった。彼もデ・ポゥーリ軍曹と同様に、銃弾の破片がヘルメットにいくつも当たった。ウォーカーは、塹壕に向かって射撃しながら、岩場に滑り込んだ。
ついで、ランカスター曹長が猛然と岩場に走り、岩場の端にたどり着くとすぐにプローンで塹壕に向けて射撃を開始した。

デ・ポゥーリ、ウォーカー、そしてランカスターの3名が岩場にたどり着き、援護射撃を始めたのを確認すると、機関銃や無線機などの重量物を運ぶ者が続いた。ガンナーのアンダーソン軍曹が続くべきだったが、すでに銃弾に倒れていた。

弾薬転送係のギリアム上等兵は、ほんの少し前に、実戦を前に緊張していた自分を励ましてくれたアンダーソン軍曹のM240を掴むと、ヘリから飛び出した。機関銃の重量のためか、それとも自分が雪中行軍になれていないせいなのか分からなかったが、ヘリから飛び出すと、すぐに膝まで雪に埋まり、転んでしまった。しかしギリアムは必死に岩場まで、這いつくばってたどり着いた。もちろん機関銃を手放すことはなかった。

ギリアムが岩場に到着するのを見届けると、CCTのヴァンス軍曹が大きな無線機を背負い、岩場に滑り込んだ。

チヌークのミニガンを撃ちつつ岩場に向かっていく影がなくなったことを横目で確認したセルフ大尉は、最後に自分が岩場に向かうべく、射撃をやめ、ヘリ後部のタラップへとほふくで向かった。

タラップまでのわずか数メートルの距離に、かつての部下たちの亡骸があった。技術軍曹のマット・コモンは、目を見開いたまま、虚空を見つめていた。セルフ大尉が抱きかかえて見ると、額から血を流していた。血は機外まで流れ、雪を赤く染めていた。
ブラッド・クローズ軍曹もタラップから出た直後に銃弾に倒れたのか、雪に顔をうずめ、微動だにしていなかった。

ほんの少し前まで生きていた部下たちが、今は冷たくなっていた。たった今、死んだのであれば、もう少しぬくもりがあってもよさそうだとセルフは思ったが、しかしこれが戦争なのかもしれないと思い直した。

最後まで機内で生き残っていたのは、PJのジェイスン・カニングハム軍曹だけであった。
「お前が生き残っていたのは、唯一の幸運だ。お前はここに残って、負傷者を助けろ」。セルフ大尉は、ジェイスンにそう言い放つと、生き残った部下たちが待つ岩場に向けて走った。

次回更新は、2011年1月5日「タクール・ハーの戦い8」です。おたのしみ。
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Posted by 友清仁  at 07:02Comments(1)Story(物語)

2010年12月22日

タクール・ハーの戦い6 Takur Ghar 6

ロケット弾が命中したエンジンは、それでも懸命に機能を果たそうと、激しく回転していたが、しだいに回転が落ちていった。右側のガンナー、スビタクに続いて、左側のガンナーのデイヴにも、アルカイダの射撃が集中し、デイヴは、腿を撃ち抜かれた。さらに銃弾は、彼の持っていたサバイバルナイフにも命中し、ナイフは砕け散って、デイヴの体に食い込んだ。激しい痛みに耐えながらも、デイヴは、ミニガンを右へ左へと撃ち続けた。

チヌークの正操縦士のチャックは、ひざに銃弾を受けた。さらに頭部に命中し即死した。チャックは、操縦席にもんどりうち、コックピット正面にチャックの鮮血が飛んだが、副操縦士のグレッグは、まったく動じることなく、すぐに操縦機能を自分に移し、チヌークを懸命に操縦した。
グレッグは、先に来たレーザー03もこんな攻撃を受けたのだろうと思った。

「とにかく、この場を離脱しなければ・・」。グレッグは、エンジンの出力を最大にし、操縦桿を思いっきり引いた。しかし2基のエンジンのうち、1基がすでに機能を停止しているヘリは、どんどん高度を下げていった。「不時着する!総員、ショック対応姿勢をとれ!」。グレックは、背後のレンジャー達に怒鳴った。

グレッグが怒鳴った一瞬後、ヘリに衝撃が走った。機体が地面に接触すると、雪で機体が斜面を滑ったが、すぐに機種の着陸装置が作動し、機体は止まった。グレッグは、自分の14年間のパイロット人生の中で、最悪の状態で最高の着陸ができたと思ったが、背後のレンジャー達には、墜落したとしか思えないほどの衝撃が走った。

機体が止まると、すぐにRPGが飛来し、チヌークの右側のドアを吹っ飛ばした。ロケット弾は、炸裂はしなかったものの、機内の酸素タンクを破裂させ、漏れ出た高濃度の酸素に引火し、機内で火災が発生した。

「重傷者をヘリ中央に運べ!」。レンジャー隊長のセルフ大尉は叫んだ。メディックのドグは、重傷者を中央に引きずり、手当てを始めた。

アルカイダは、ここぞとばかりにAK47を撃ち込んできた。弾は、チヌークの外殻を貫通し、内部の断熱材や防音材は、紙ふぶきのようにあたりに舞った。

「すぐに反撃し、主導権を握らねば・・」。
セルフ大尉は思った。アメリカ軍の歩兵指揮教則では、部隊全体が敵に捕捉された場合は、全力で敵主力に向かい、それを撃滅することになっている。

セルフ大尉は、チヌークの中から敵情を見ると、2時方向の塹壕に敵の大部分がいて、激しく銃撃を加えていることが分かった。また、ヘリから15メートルほど離れたところに、10名ほどが隠れることができる岩場も見つけた。
「あの岩場を足がかりに、反撃を開始する。俺が援護射撃する間に、動ける奴は全力で走れ」。セルフ大尉は、怒鳴った。


次回更新は、12月29 日 「タクール・ハーの戦い7」です。お楽しみに。
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Posted by 友清仁  at 07:03Comments(0)Story(物語)

2010年12月15日

タクール・ハーの戦い5 Takur Ghar 5

レーザー01にRPGが命中する、少し前の機内である。

レーザー01機内のレンジャー隊長、セルフ大尉は、Sealsのニール・ロバーツ軍曹を探していた。しかし、ニールはすでにアルカイダの銃弾に斃れており、セルフ大尉をはじめとするレーザー02の全員が懸命に探しても、見つかるわけがなかった。

チヌークのクルー、チャック、グレッグおよびドンは、どうしたものかと互いに顔を見合わせたが、答えを見出すことができなかった。ガルディーズの司令部に無線で確認しようとしたが、無線は通じなかった。

「ニール軍曹は、ヘリから落ちたのではなく、墜落したヘリにいるのではないか?ヘリの墜落とニールの落下の情報が混乱しているのかもしれない・・・」。機内のヘリクルー3名は思った。副操縦士のグレッグも山頂を映すレーダーと地表面を見比べるのをやめてしまった。

とりあえずヘリのレンジャー達を降ろし、付近を捜索することにした。
どこに着陸すべきか、パイロット同士で短く話し合った後、副パイロットのグレッグは、山頂から75メーターの地点がよさそうだと指差した。

ヘリの左側のガンナーである、デイヴ軍曹は、右側のガンナー、フィル・スビタク軍曹に親指を立てて、着陸態勢に入り、周囲を警戒するように合図した。セルフ大尉は、ヘリの格納区画で待機しているレンジャーたちに、「降下準備、装備確認」。と怒鳴った。

ヘリ後部で座っていたガンナー、アンダーソン軍曹は、そばで待機している弾薬転送係のディビット・ギリアム上等兵の背中を叩いて耳元で叫んだ。「ようやく実戦だ。これでお前も一人前のレンジャーだ。」
雪で真っ白い地表が、どんどん近づいてきた。

あと、5メートルほどで着地というときに、セルフ大尉は、眼下の2時方向60メーターの地点に、3人のアルカイダ兵がヘリを狙っているのを認めた。「2時方向に敵発見!」とセルフ大尉は、叫ぶと同時に手中のM4を撃った。

アルカイダは、一斉に塹壕から飛び出し、チヌークに向けて発砲した。銃撃は主にヘリのコックピットに集中した。パイロットのチャックの右側のマルチディスプレイに銃弾が命中し、一瞬にして機能を失った。さらに2発の銃弾が彼のボディアーマに鈍い音を立ててめり込んだ。チャックは、激痛に耐えながら、「2時方向に敵多数」と無線に叫んだ。

ヘリ右舷のガンナー、スビタク軍曹は、地表から沸いて出てくるアルカイダを見て、背後で待機していたメディックのドグに向かって、「ドグ、お前は、後ろに下がっていろ」と怒鳴った。叫ぶや否や、M134ミニガンをアルカイダに向けて発砲した。至近距離であるせいか、銃弾は次々とアルカイダに命中し、テロリストは、ドミノ倒しのようにバラバラと倒れた。

しかし次の瞬間、スビタクは、腹部に焼きゴテを押し付けられるような高熱を感じた。ミニガンを撃ちながらも、ゆっくりと腹部を見ると、真っ赤な血がBDUを染めていた。メディックのドグを呼ぼうと叫んだが、声にならず、スビタクはその場に崩れた。

ミニガンの銃声が止まったことに気がついたセルフ大尉は、すぐに、「銃座に着け!」と怒鳴った。他のレンジャー隊員がすぐにミニガンにとりつき、射撃を続けた。

このときすでに、チヌークは、80フィートの高さまで降下していたため、アルカイダ兵は、塹壕の近くの木によじ登って、RPGをヘリに向けて発砲した。ロケット弾は、ヘリのエンジンに命中し、大爆発を起こした。

次回更新は、12月22日 「タクール・ハーの戦い6」です。お楽しみに。
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Posted by 友清仁  at 07:58Comments(0)Story(物語)

2010年12月08日

タクール・ハーの戦い4 Takur Ghar 4

Sealsの二―ル・ロバーツ軍曹は、薄暗い山頂に放り出された。数メートルの高さから落ちたにもかかわらず、ケガひとつしなかったのは、落下地点に厚く雪が積もっていたからである。
しかしこれが幸運であったといえるかどうか・・・。ヘリから誰かが落ちたことを知ったアルカイダは、落下地点に向け、小銃を撃ってきた。

ニールは、すぐに近くのくぼ地に身を隠し、迫り来るアルカイダに向け、M249を放った。暗闇の中で撃ち合っているため、敵に当っているかどうかは分からない。しかし、ニール軍曹には、暗闇に向けて撃ち続けるほか、するべき行動がなかった。

先に部隊を下ろしたレーザー04は、すさまじい銃声を聞き、僚機がいなくなったことに気がついた。すぐに上昇し、山頂付近を見ると、激しい銃撃戦が行われていた。パイロットは、メインモニターを熱感知レーダーに切り替えると、ニール軍曹とおぼしきマーカーライトを中心に、虫が群がるようにアルカイダが接近しているのが分かった。

パイロットは、すぐさま上空で待機しているAC-130に、「上空から制圧射撃せよ」と無線で怒鳴ったが、AC-130からは、「レーザー04へ。お前がこちらの射線に入っている。誤射の危険性がある。速やかに退避せよ」。ヘリのパイロットは、すぐにスロットを引き、退避行動に移ったが、数分後、山頂のニール軍曹のMinimiの銃声が止んだ。

事態の急変を知った司令部のハーゲンベック将軍は、緊急即応部隊(QRF)を編成し、ニ-ル軍曹を救出するように命令した。

この部隊は、2機のチヌークに分乗して、タクール・ハー山頂へ向かっていた。それぞれレーザー01、02とコードネームが与えられ、01には、レンジャー10名、戦術航空管制官(TACP)および空軍戦闘管制官が、02には、レンジャー10名が載っていた。

「味方が蜂の巣にされている。1秒でも早く現場に行け!」。司令部からそう言われて、取るものもとりあえず、ヘリに乗り、現地に向かっていた。もちろん山頂のニール軍曹がどんな状態であるか、Sealsが山頂の南北に分かれて降下し、南側の部隊が攻撃を受けているなどの基本的な情報さえない状態だった。

レンジャーが飛び立った直後、山頂の北側に降りたレーザー03のSealsは、銃声を聞き、さらに重厚なタコツボ陣地が構築されていることを知り、作戦の中止を司令部に要請した。司令部のレーザー04の状況を考慮し、即座に要請を受け入れ、安全な地点まで下山するように命令した。

この時点で、司令部の考えとしては、山頂確保作戦を中止し、レンジャーを派遣して、山頂のSealsを収容することを第1とし、ついでニール軍曹の遺体回収を含めた城塞占領作戦を練り直すつもりでいた。

しかし運命のいたずらなのか、司令部がレーザー03のSealsに退却命令を出した直後、山頂のSealsはもとより、救出に向かっている第75レンジャーたちにも無線が通じなくなってしまった。(これは、戦後の調査においても謎のままである)

午前5時45分。レンジャー達は、山頂付近の上空に到着した。しかし山頂には、攻撃を受けているはずのニール軍曹がいなかった。直ちに司令部に確認を取ろうとしたが、無線が通じなかった。

レーザー01のレンジャーは、作戦的に盲目状態になった。「とにかく、ニールを探せ」。レンジャー部隊のセルフ大尉は叫び、山頂の地面からわずか10メートルの高さまで高度を下げた。
地獄の門がゆっくりと開こうとしていた。

地上のアルカイダのタコツボが巧みにカモフラージュされているため、重厚な対空陣地の真上をフラフラと低空飛行していることにすら気がつかなかった。地獄が始まるのに、さほど時間はかからなかった。

ここからは、レーザー03と同じである。ヒューンという空気を裂くような音がした。機内の誰もがRGPが放たれたことをすぐに理解した。次の瞬間、機体に激しい衝撃が走った。
「機体右側にRGP被弾。油圧、電気系統不能。ローター回転低下!!」。

次回更新は、12月15日 「タクール・ハーの戦い5」の予定です。
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Posted by 友清仁  at 07:01Comments(0)Story(物語)