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Posted by ミリタリーブログ  at 

2011年04月13日

タクール・ハーの戦い Takur Ghar 20

タクール・ハーの山頂を観察している着弾観測員から、頻々と山頂の様子が司令部に報告されている。同時にアルカイダに包囲されている山頂のセルフ大尉たちからも、報告が上がってきた。
「山頂を囲むようにアルカイダが展開しています。その数200名以上。レーザー02の弾薬は残りわずか。至急、応援を」。セルフ大尉らの無線は、悲痛を極めた。

セルフ大尉を悲痛にさせているのは、死への恐怖ではない。戦死はアフガニスタンに派遣されたときから覚悟している。だが、部下が苦しんで死んでゆくのを、指揮官として冷静で見ていることなどできなかった。山頂には、医療品も、そして緊急医療の技術を持つPJもいなかった。セルフができることといえば、司令部へ救出を要請することだけであった。

ガルディーズのハーゲンベック将軍は、司令部のスクリーンを凝視していた。どのように救出するべきか・・・。この戦場に投入できるヘリコプターは、チヌーク、MH-53ペイブロウ、そしてMH-60ペイブホーク、それぞれ1機だけである。

「至急、援軍を!」。セルフ大尉から再び無線が入った。その声は冷静さを失っていた。すでにアルカイダ残党は、山頂へ向け、射撃を開始したようである。
「ヘリのパイロットをここに呼べ。今から、山頂のレンジャーを始め、ヘリのパイロットすべての部隊を、私が直接、部隊指揮を執る」。セルフ大尉の悲痛な叫びは、ハーゲンベック将軍の何かを呼び起こしたようだった。

すぐにMH-53ペイブロウのパイロットのレイトン・アンダーソン少佐、そしてMH-60ペイブホークのパイロットのエドワード・レンゲル少佐が司令部にきた。

「貴官らに、非常に危険な任務をやってもらいたい。この作戦の指揮官として、戦死の可能性がある任務を貴官らに出すことが心苦しいが、貴官ら以外に頼める者がいない。とにかく山頂へ向け飛んでくれ。作戦は、山頂に着いてから説明する」。

ハーゲンベックが訓示すると、アンダーソン少佐は、「司令、我々SOAR(第160特殊作戦航空連隊)も、すでに2機やられています。アルカイダのやつらの好きにはさせません」。

2機のヘリは、すぐにタクール・ハー山頂に向けて飛び立った。機内には大量の煙幕弾が積まれていた。これは、ハーゲンベック将軍の指示である。
空爆については、あれほど誤爆を恐れていたハーゲンベックだが、ガンシップによる機銃掃射には積極的だった。「上空のガンシップに連絡。山頂を制圧射撃せよ。救援ヘリが到着するまで、アルカイダを1ミリも近づけるな」。AC-130ガンシップは、その命令どおり山頂を制圧射撃し、アルカイダの動きを封じ込めた。

2機の救援ヘリのパイロットから、山頂へ到着した旨の無線が届いた。
「いいか。チヌークの位置を良く覚えておけ。煙幕が広がったら、何も見えなくなるぞ。そして私の合図とともにチヌークの真上に降りろ」。ハーゲンベックは、アンダーソン少佐に言った。

「煙幕弾投下」。ペイブロウの副操縦士が叫んだ。ペイブロウから無数の煙幕弾が山頂に放出され、着地すると、勢いよく煙を吐き出した。それに合わせて、セルフ大尉たちも、手持ちの煙幕や信号弾を一斉に投げた。すぐに山頂は、白、赤、黄色の煙に包まれた。

司令部の山頂を映すスクリーンも、あっという間に煙幕で何も見えなくなった。参謀達が不安そうにスクリーンを見ている中で、ハーゲンベック将軍だけが、確信に満ちた目でスクリーンを凝視していた。やがて、「今だ。ペイブロウ突入」。
アンダーソン少佐は、操縦桿を思いっきり倒し、まったく視界の効かない煙幕の中に突入した。濃霧の中を飛行した経験は何度もあるが、それは水平飛行に近い状態であり、不正地面に向かっての着陸ではなかった。ペイブロウは、煙幕弾の煙の中を急降下した。

次回更新は、4月20日「タクール・ハーの戦い」です。※もう少し続きます・・
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Posted by 友清仁  at 07:03Comments(2)Story(物語)