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Posted by ミリタリーブログ  at 

2011年11月02日

テキサス3 Texas3

「こちら、テキサス3。これより着陸態勢に入る」。パイロットが無線で言った。ぐんっと機体が傾き、逆Gが体にかかるのが機内のメンバーには分かった。「地上まで5メートル、4・3・・・・」と、副操縦士が、ヘリの高度計、そして胴体下部に取り付けられた対地レーダーからの画像を見ながら高度を告げた。このまま何事もなく着陸が成功すると、誰もが思った。

次の瞬間、「テール基部付近に異物あり、接触します」。と叫んだ。パイロットもすぐに操縦桿を引いたが間に合わず、がーん、という音とともにブラックホークの機体に衝撃が走った。
どうやら着陸地点に対地レーダーで捉えることができなかった大岩があり、それがヘリのテールの根元付近に激突したらしい。

「ローター出力低下、燃料系、機能不能。燃料弁閉鎖」。トラブルにもかかわらず、パイロット達は冷静にヘリを制御した。振動が収まると、「とりあえず、爆破することだけは免れた。今のうちに荷物を降ろしてくれ」。と、テキサス3のメンバーに言った。

ダン、ウェス、アレックス、ケンの4名は、すばやく大量の荷物を降ろした。作業中、テキサス4のものと思える戦術ライトが、地上に向け、すーっと移動しているのが見えた。

「あんたら、これからどうする。一緒に来るか?」、ダンがパイロットに言うと、「女(ブラックホーク)を置いていけるかよ。幸い損傷しているのは燃料系だけだ。修理して基地に戻る」。

実際に、ダンたちが荷物の隠匿作業をしている間に、パイロット達は応急処置をして、かろうじて飛行ができるまでになった。やがて、パイロットは、「幸先は悪かったが、作戦の成功を祈る。グットラック」。そう叫ぶと、ヘリは上昇し、漆黒の闇の中に消えていった。

荷物の隠匿作業が終わると、テキサス4のメンバー、ダン、ウェス、アレックス、ケンの4名は、味方に合流すべく、自分らの位置を知るため、GPSのスイッチを入れた。スクリーンには、味方の位置と付近の地形がフルカラーで表示された。

しかし、その画面を見て、4名の顔が硬直した。なんと、最も近いと味方(テキサス4と思われる)まで、ゆうに10キロ以上も離れている上に、途中には、ヘルマンド川という大河が流れていた。

「もたもたしていると夜が明ける。急ごう。砂漠の中を流れる川だ。浅い川かも知らん」。ウェスが言った。

4名は、闇の中を走った。しかし、重装備であることと、地面にはごつごつした岩が無数にあり、暗視ゴーグルをつけた状態で足元を見ながら走らなければならないため、スピードは遅かった。

やがて4名は、ヘルマンド川の川淵にたどり着いたが、そこは、4名を失望させるに十分な光景であった。

ヘルマンド川は、ウェスが予想したような砂漠を流れる細い川などではなく、むしろ砂漠に唯一流れる大河で、アフガンの山々の雪解け水が激しく流れていた。特殊部隊といえども、重装備で泳いで渡れる川ではなかった。

ちなみに、第1次世界大戦時、イギリス軍とアユブ・カーン軍閥との戦いがヘルマンド川の付近で行われ、川を渡って退却しようとしたイギリス軍が、十分な渡河装備を持っていなかったため全滅させられている。

その場の誰もが、次の行動について沈黙していた。しかしその沈黙も長くは続かなかった。背後から無数のエンジン音と、ヘッドライトの光が、ウェスたちの背後に迫ってきていたのだ。どうやら着陸時の衝撃音を察知して、タリバンの偵察部隊が動き出したらしい。

次回更新は、11月9日 「スナイパー」です。お楽しみ。
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Posted by 友清仁  at 07:02Comments(0)Story(物語)