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Posted by ミリタリーブログ  at 

2011年12月07日

タリバン部隊 Taliban squad 2

「奴らは、攻撃に行ったのではない。ここから逃げたのだ」。カザフ空挺少佐のアシモフは平然と言った。ペティソリー大尉は、そんなことが信じられなかったが、すぐにそれが事実であることが分かった。車両に搭載している無線に何度呼びかけても、応答がないのだ。

ジェイスン大尉は、すぐにCCTのアレックス軍曹に空爆を要請した。インド洋の空母カールビンソンから、すぐに海兵隊のF18数機が出撃したが、到着するまで1時間ほどかかるという。

村に残っているのは、100名ほどの兵士であった。否、残っているのではなく、逃げ遅れたといったほうがいい。どの兵士の顔も、恐怖におののいていた。

「1時間持ちこたえれば、爆撃機が来て決着する。それまで持ちこたえるんだ」。ジェイスンは、兵士達に怒鳴ったが、兵士達の動揺を抑えることができなかった。

ODA574の全メンバーは、戦死を覚悟していたが、こんなにも早く、危機が訪れるとは思わなかった。取り敢えず、村の周囲に急造した防衛陣地に兵士を配置し、敵が突撃してくるのを待った。

迫撃砲の威圧射撃が終わると、四方からタリバン部隊が一斉に攻めて来た。タリバン軍は、車両と馬の混成部隊が先陣で、その後に小銃を持った歩兵が続いている。

「アメリカ人よ。まずは、足の早い車両を狙え。その次に、馬に乗っている頭目を撃て」。アシモフは、ドラグノフに初弾を装てんしながら、ジェイスンたちに言った。

ジェイスンは、車両は分かるが、頭目というのが分からなかった。頭目とは何なのかと聞くと、アシモフは、説明するのが面倒くさいと思ったのか、「とにかく、車両を全滅させたら教える」。と言うのみだった。

ロニー、マイク、ブレントの3軍曹が、村で一番背の高い家の屋根に上り、バレットM82A1 (対物ライフル)を構えた。1人に1丁、合計3丁である。サポートにアフガン兵が2人ずつ付いた。

ロニーがスコープを覗くと、タリバン軍が見えた。車両のエンジン部分をレティクルに合わせると、すぐにトリガーを引いた。どおんっという音とともに、周囲に砂塵が舞い上がった。次の瞬間、スコープの中の車両が、エンジンを撃ちぬかれて炎上するのが見えた。

「次っ」。ロニーが叫ぶと、サポートのアフガン兵2人は、バイポッドを掴んでバレットを持ち上げ、バレルをわずかに左にずらした。

ロニーがスコープを覗くと、また別の車両が見えた。トリガーを引くと、すぐに遠くの車両が炎上した。「次っ」。ロニーが叫ぶ。2人がバレットの向きをずらす。ロニーがトリガーを引く。車両が炎上する。「次っ」。・・・
同様なことが、マイク、ブレント軍曹のバレットでも行われた。

3軍曹のバレットには、ナイトフォース社の最新スコープだけでなく、レーザーポインタも装備されていた。したがって、スコープに目標を捉えるだけで百発百中であった。

タリバン軍の車両があらかた破壊されると、今度は、馬に乗っている頭目を撃つ番になった。ジェイスン、ペティソリーらは、SR25に初弾を装てんすると、アシモフの指示を待った。「アメリカ人よ。派手なターバンを巻いている奴を撃て」。アシモフは簡潔に言った。

ジェイスンがスコープを覗くと、確かに派手なターバンを巻いている奴が、ある一定の割合でいることが分かった。言われるままに狙撃し、弾丸が頭目に命中すると、周りの兵が頭目の死体に群がるのだが、頭目の死を確認すると、なぜか後方へ引き返してゆく。同じことが、ペティソリーやキャスパーの狙撃でも起こった。

後のアシモフの説明によると、タリバン軍は、欧米のような近代的な軍隊ではなく、単なる部族の集まりであり、頭目と戦闘員は雇用関係にある。その頭目は、さらに上の頭目、この場合はウルズガン地帯の総司令官ルシュディーと雇用契約になっている。

つまり、頭目が生きている限り、給料が支払われ、兵士は戦闘を続けるのだが、頭目が死んでしまうと、給料の支払い元が無くなり、賃金を受け取ることができない。その瞬間から、兵士達は戦場にいる意味がなくなってしまう。ゆえに、頭目の死を確認すると、さっさと戦場から去って行くのだ。

もちろん、さらに上の頭目であるルシュディーと雇用契約を結ぶことも考えられるが、それを予想・期待して戦闘を続けることは無い。彼らが戦うのは、あくまでも契約が成立してからである。欧米の軍隊であれば、少尉が戦死しても、軍曹が指揮を執るが、タリバン軍はそのようになっていない。

頭目が狙撃されるたび、タリバン小部隊は、潮が引くようにどんどん退却して行く・・・


次回更新は、12月14日「タリバン部隊3」です。お楽しみに。
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Posted by 友清仁  at 07:00Comments(2)Story(物語)