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Posted by ミリタリーブログ  at 

2012年11月21日

死に値すべきもの The worth dying for 6

グレック大尉の声に、格納区画にひかえていたPJたちは、すぐにコックピットに駆け寄り、副パイロットのシュワイン少尉の体をシートからはずし、格納区へ移した。

PJがシュワインの体を調べると、喉元と首の後ろに弾痕が赤く残っていた。敵の弾丸は、喉から入り脳幹を貫いたのだろう。即死だったに違いない。PJは、無線で、手の施しようもないことをグレックに伝えると、グレックは「クソっ」。と叫んだ。

CH46は、最高スピードでタリン・コットに向けて進む。陽が完全にアフガンの山に隠れ、あたりが真っ暗になった。グレックはナイトビジョンを装着して、操縦を続けた。

日が沈むと、タリバン供は、目標が視認できなくなったのか、射撃を止めた。ガンナーのマルティネス軍曹も、弾丸の節約と、曳光弾を撃つと敵に位置を悟られるため、射撃を止めた。闇の中、ヘリのエンジン音だけが響く。

シュワインがやられてから、陽が沈み射撃が収まるまで、わずか1分ほどであった。あと1分あれば、シュワインは、死なずに済んだものを・・・。グレックは、戦場には、絶えず死と生が隣り合わせであることを実感した。

シュワイン少尉を殺したタリバン軍のピックアップトラックのヘッドライトが近づいてくる。マルティネス軍曹は、それを通過する瞬間、「Fucking、アルカイダ」と叫び、M240のフルオートをヘッドライトに放った。命中し、敵を倒したかどうかは分からない。しかし、仲間を殺した奴らに一矢も報いないわけにはいかなかった。

グレック大尉は、GPSのスイッチを入れ、タリン・コットまでの距離を確認した。あと数分で、タリン・コット上空である。


陽がアフガンの山々の下に隠れ、あたり一面が闇に包まれたのは、タリン・コットも同様である。ドラグノフのスコープを覗いていたアシモフ大佐も、スコープの中が暗闇になると、銃を下ろした。そこへ、ODA574のロニーがやってきた。

「お前の銃を貸せ」。アシモフはロニーからSR25をとり、スコープを覗いたが、ドラグノフと同様に真っ暗だった。アシモフがロニーの顔をいぶかしそうに見ると、ロニーは、「バッテリー切れだ」。と答えた。最新機器もバッテリーがなければ、何の役にも立たない。

止む終えず、アシモフとロニーの2人は、敵が潜んでいると思われる方向を見た。闇夜の中で不気味な沈黙だけが流れた。

その沈黙の中、アシモフだけが何かを感じたようだった。「奴らが来た」。そう言った瞬間である。前方の闇の中から、突如、AK47が咆哮し、アシモフたちの周囲に小銃弾が、ビシッビシっと跳ね始めた。

アシモフとロニーは、マズルファイアに向かって応射するが、敵の火は、1つや2つではなく、パッと見ただけでも20はあった。こちらから撃って、撃ちきれるものではない。マズルファイアに向けて撃ち、その火が収まったと思っても、再び別の火が起こる。

むしろ、敵は、応射するこちらのマズルファイアが2筋しかなく、過小兵力であることを知り、勢いを増してくる。気がつくと、さっきまでそばにいた、タリン・コット防衛軍のアフガン人は、逃げ散ってしまっていた。「これはマズイ・・」。ロニーは、直感した。

ODA574は、再び、危機に直面した。


次回更新は、11月28日「死に値すべきもの」です。お楽しみに。
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Posted by 友清仁  at 07:01Comments(4)Story(物語)