スポンサーサイト


上記の広告は1ヶ月以上記事の更新がないブログに表示されます。
新しい記事を書くことで、こちらの広告の表示を消すことができます。  

Posted by ミリタリーブログ  at 

2013年10月30日

キャンプ・アルファ Camp α 8

屋上に降り立ったアルファチームは、素早く、階下の3階へ下りる準備を進めた。同時にスナイパー2名が当座の脅威となる敵兵、・・今回は訓練であるため、棒の先に赤い風船が取り付けられている・・、を手際よく排除していった。

スナイパーが、すべての敵を排除し終わると、ソルベスキー軍曹の肩を叩いて知らせた。暗闇の中では、ハンドサインや音声では、間違えることがある。感覚と視覚に訴えるのが一番である。それをソルベスキーは、ライトを3回点滅させて、門の前で待機するベータチームのダンハム大尉に伝える。

地上のダンハム大尉は、ライトの点滅を認めると、同じように、門のそばで爆薬を仕掛け終わっている兵士の肩を叩く。今回は、爆薬を仕掛けたことにして、門付近の2名の兵士は、勢いよく門を開けた。

門が開かれると、ダンハム大尉が何も命令せずとも、ベータチームは一斉に敷地内へなだれ込む。最後の兵士が敷地内へ入ったのを確認すると、ダンハムは、屋上に向かってライトを6回点滅させた。

屋上のアルファの侵入チームは、その点滅を見て、こちらも一斉に3階へ侵入する。ソルベスキー軍曹は、不測の事態に備えるため、スナイパーとともに屋上に残った。

「ムーヴ、ムーヴ、ムーヴ!」 侵入部隊のリーダーである、トロイ・ロバート軍曹は、メンバーを叱咤した。
「ルームAクリア!」、「ルームBクリア!」、「ルームCクリア!」、突入部隊のメンバーたちは、あらかじめ、番号を付けてある部屋をどんどんクリアリングしてゆく。

突入チームの無線のPTTは、入れっぱなしになっている。そうすることで、チーム全員が、クリアリングの状況を知り、自分のするべきことを考えられるようになっている。トロイもその無線を聞きながら、クリアリングメンバーのあとについてゆく。

やがて、トロイは、1階に到着し、「ルームKクリア!」という報告を聞き、すぐに、「コンパウンド、オールクリア!(建物制圧)」と、叫んだ。

その音声を聞いたダンハム大尉は、「GO!」と叫び、ベータチームを母屋のあるエリアに突入させる。チームは、二手に別れ、これも、敷地内にランダムに置かれた風船を射撃し、クリアリングを行った。こちらもすぐに、「フィールド、クリア!」と、部隊長から報告が入る。

「エヴァギュエイション(撤退)!」。ダンハム大尉は、メンバーに告げる。アルファ、ベータチームの総員が、屋敷の東側の畑のエリアに集合する。そして、メンバー全員が集まったことを確認すると、ダンハムは、上空に向けてライトを点滅させ、上空で待機するヘリを呼び寄せた。ブラックホーク2機が飛来し、襲撃メンバーを回収すると、瞬く間に上昇した。ダンハムが時計を見ると、突入から撤退まで、わずか15分であった。


キャンプ・アルファに帰ると、突入作戦の検証を行いたいと、基地責任者スチュワート・カポスがダンハムに言った。訓練はすべて、各兵士のライブカメラと上空のブラックホークのカメラに録画されている。その録画を見て検証するのだ。しかし、その検証に呼ばれたのは、ダンハム大尉だけであった。

ダンハムは、カポスの部屋に入った。すでに深夜だったが、カポスは、いつものYシャツにスラックス姿で待っていた。すでに部屋のライトが消され、訓練の映像が流れた。水が流れるが如き、完璧な作戦であった。ダンハム大尉は、CIAと行う、作戦の検証作業が何の意味を持つのか、そればかりを考えていた。

映像が終了すると、暗闇の中から声が聞こえた。「素晴らしい作戦だが、少し時間がかかりすぎる」。その言葉にCIAのカポスも同意見という顔をした。

次回更新は、11月6日「キャンプ・アルファ」です。
ご意見・ご感想をお待ちしております。
------------------------------------------------------------------------------------------
同人誌も発行しております。こちらもどうぞ。同人誌書店COMIC ZIN通販ページと 虎の穴通販ページに飛びます。(購入には会員登録が必要です。)



私の訳書(共訳・監修)です。よろしかったらお読みください。
画像クリックでamazonへ飛びます。







  

Posted by 友清仁  at 07:00Comments(3)Story(物語)

2013年10月23日

キャンプ・アルファ Camp α 7

作戦会議の翌日には、チームの編成が決まった。アルファチームの隊長は、ベテランのソルベスキー軍曹であり、トロイ・ロバーツ軍曹も同じチームになった。ベータチームは、ダンハム大尉が率いる。編成が決まった2日後には、キルハウスが完成したとのことで、チーム全員がヘリでキルハウスまで移動した。

キルハウスの見学は、夜間に行われた。理由は簡単で、コンテナ城塞から出るには、ヘリコプターで上空から出るしか手段がなく、昼間は、秘密基地の隠匿性を確保するため、ヘリの離着陸が禁止されているのだ。もっとも、突入作戦も夜間に行うのだから、シールズからすれば、こちらのほうが、都合が良かった。

初回は、フル装備ではあるが、突入訓練など行わずに、チーム全員が建物を回り、建物の状況を確認した。
「でかい建物だ。アルカイダの本拠地でも攻撃するつもりか?」 ソルベスキー軍曹が、いつものようにぶっきらぼうに言った。

その言葉に、その場にいた数名が、今回の任務は、もしやビンラディン襲撃か?と、一瞬、考えた。しかし、作戦について憶測してはいけないという、特殊部隊の不文律を守り、誰ひとりとして、その後の会話を続けなかった。

トロイ・ロバート軍曹は、侵入する母屋の内部にいた。いくつか部屋が作られてはいるが、内部の構造がわからないため、アフガニスタンの一般的な家屋の作りだという。つまり、実際とは異なるわけで、あくまでも参考程度にしかならない。

トロイは、ナイトビジョンを通して、建物を廻った。ドアを開けるたび、階段を下りるたび、自分がどのように動くべきかシミュレートし、頭の中に刻み込んだ。しかし、参考程度にしかならないのだ。ストレスが溜まった。
やがて、集合の無線が入り、各人はヘリに集合し、帰還した。

突入訓練は、翌日の夜から始まった。訓練は、キャンプ・アルファからヘリで飛び立つところから始められたため、突然、訓練の号令がかかり、各人、急いで装備をつけて、ヘリに乗り込む有様だった。

ヘリが離陸してから、2時間ほど経過した。昨夜は、キルハウスまで、わずか30分だった。機内の誰もがおかしいと思い始めたころ、ダンハム大尉は、「目的地までの飛行時間まで、実戦と同じなのだそうだ」、とメンバーに告げた。

それから数分後、ブラックホークのパイロットが、「降下スタンバイ」と告げた。機内の各人は、すぐにファストロープの安全具を確認した。機内に照明はないが、メンバーは、手の感覚で安全装置が正常であることを確認できる。後部のメンバーから前部のメンバーへ、チェックが済んだことを、肩をたたいて知らせてゆく。

「オール・クリーン!!」 ソルベスキー軍曹が、最終確認のサインを見た直後、パイロットに向かって叫んだ。そして、さらに数メートル降下し、機体が水平になると、「GO!GO!」とパイロットが叫んだ。その声と同時に、ヘリからロープが投げ放たれ、メンバーが次々とロープを伝い、闇に消えていった。

トロイの順番が来た。下を見ると、漆黒の闇で、着地地点が屋上なのか地面なのか、何メートルあるのかすら分からない。しかし、ファストロープの訓練は、今まで数え切れないほどやってきた。いまさら恐怖など感じない。無意識に体が動き、ロープを伝ってするすると降りた。

トロイが降りて数秒後、チームリーダーのソルベスキーも降りてきた。全員が降下すると、ブラックホークは、すぐに上昇し、闇に消えた。アルファチーム10名が屋上に降りるまで、わずか30秒であった。

ナイトビジョンのスイッチを入れると、ライムグリーンの中に、メンバーの姿が映った。眼下を見下ろすと、ベータチームが門に向けて走っているのが見えた。ついに突入訓練が開始された。

次回更新は、10月30日「キャンプアルファ」です。
ご意見・ご感想をお待ちしております。
------------------------------------------------------------------------------------------
同人誌も発行しております。こちらもどうぞ。同人誌書店COMIC ZIN通販ページと 虎の穴通販ページに飛びます。(購入には会員登録が必要です。)



私の訳書(共訳・監修)です。よろしかったらお読みください。
画像クリックでamazonへ飛びます。







  


Posted by 友清仁  at 07:00Comments(0)Story(物語)

2013年10月16日

キャンプ・アルファ Camp α 6

模型を覆っていた布を、几帳面に畳みながら、ダンハム大尉は、「これが今回の作戦を行う場所らしい。しかし詳細は分からん。おそらく人質救出だろう」。
その場にいたシールズ全員が同じことを考えた。

「だが・・、今回はタダの人質救出任務じゃねぇな」。
ソルベスキー軍曹が、二の句を告げるように言った。これもその場にいた全員が思ったことである。理由は、その建物の構造である。一目見ただけで、無知なテロリストが、とっさに逃げ込んだ建物ではなく、周到に作りこまれた要塞であることが、シールズたちには分かった。

ダンハム大尉は、パチンと指を鳴らして、「では、こいつをどう攻める?」、急遽、作戦会議が開かれた。
「敵は、何名くらいなのですか?」、「母屋の構造は?」、「襲撃の時間は?」、と立て続けに質問が出た。しかし、それら全てに、「正確なことは全く分かん」。としか、ダンハムは答えることができなかった。

さまざまな意見や質問が出尽くしたあとで、今回派遣されたチームの中で最年長で、ベテランのソルベスキー軍曹が作戦案をまとめた。
「敵の数は、建物や敷地の広さから考えて、30から50名くらいだろう。襲撃時刻は、当然、深夜だ」。

ソルベスキー軍曹の立てた作戦を要約すると、以下のようになる。
1.襲撃部隊は、アルファとベータの2つに分け、アルファが10名、ベータが11名、残り15名を予備兵力とする。アルファにはスナイパー2名を含む。
2.アルファが、母屋の屋上にファストロープで降りる。アルファのスナイパーが、屋上から、建物周辺の敵を狙撃し、周囲の安全を確保する。
3.ベータは、建物の周囲に降下し、15名を見張りに周囲に配置する。残りの兵力は、入口の門に集合する。
4.屋上のアルファとタイミングを図って、ベータは門を爆破する。門の爆破と同時に、アルファの突入部隊8名が、3階に侵入する。
5.爆破音に驚いた敵は、門に集中するため、屋上のスナイパーが逐次排除する。爆破と同時にアルファは、一気に回廊を抜け、三角形の頂点のトラップまで進む。その間、アルファが建物をクリアリングしているので、建物からの攻撃は少ない。
6.アルファ襲撃部隊が1階のクリアリングを終えたのを見計らい、ベータが母屋の敷地へ突入し、残敵を掃討する。同士打ちを避けるため、アルファは、建物から出ない。
7.人質を救出したのち、襲撃チームは、東側の畑に集合し、ヘリで撤退する。

さすが、古参兵士であった。作戦に一分のムダもなかった。その場にいた誰もが納得した。
だが、ソルベスキーと仲の良いトロイ軍曹は、「屋上に見張り台や対空陣地があった場合はどうする?」と意地悪く聞いてみた。
「その時は、そいつをぶっ潰してから、作戦を始めるだけだ」。ソルベスキーは、答えた。

それからしばらく、細かい意見や質問が出たが、ダンハム大尉は、会議を締めくくった。
「オーケー。近日中に、キルハウスが出来るそうだ。まずは、ソルベスキー軍曹のアイディアを試してみよう」。
この言葉に、その場の全員がどよめいた。皆、やっとこの監獄から抜け出せると思ったのである。


次回更新は、10月23日「キャンプアルファ」です。
ご意見・ご感想をお待ちしております。
------------------------------------------------------------------------------------------
同人誌も発行しております。こちらもどうぞ。同人誌書店COMIC ZIN通販ページと 虎の穴通販ページに飛びます。(購入には会員登録が必要です。)




私の訳書(共訳・監修)です。よろしかったらお読みください。
画像クリックでamazonへ飛びます。







  


Posted by 友清仁  at 07:00Comments(1)Story(物語)

2013年10月09日

キャンプ・アルファ Camp α 5

アフガニスタン某所 キャンプ・アルファ上空
シールズ・チーム6のメンバー、トロイ・ロバート軍曹とその同僚たちは、闇夜を飛行するチヌークの中にいた。トロイの目の前には、コンテナの中から選んだ装備が入ったリュックサックがある。各人のいずれのリュックも、はちきれんばかりに膨れ上がっていた。

いつもと違う・・。トロイは感じていた。なぜなら、通常のシールズの交代ならば、バグラムに着くと、前任のチームメイトが出迎え、派手なパーティをやるのだが、今回は、出向かえどころか、AC130を降りたらすぐにチヌークへ乗るように言われた。そして今、その機内である。

やがて、チヌークの高度が下がり、機体全体に衝撃が走った。「荷物を持って降りろ。急げ!」。
まるで、戦地に初めて来た新兵のように、パイロットに怒鳴られた。降りた先でも出迎えはなく、倉庫のようなところへ通されると、あすの朝まで待機するように命令された。各人は、荷物から寝袋を取り出して、横になった。

翌朝、再び新兵のように怒鳴られ起こされ、倉庫の外に出た。見ると、周りを巨大なコンテナで囲まれた「城塞」の中にいることがわかった。倉庫の周りには、大小いくつかの建物があり、スタッフが働いているのが見えた。

「エラいところに連れてこられた・・」。
トロイの所属するチームのリーダー、ドナルド・ダンハム大尉はつぶやいた。指揮官であるダンハム大尉にも、詳細は説明されていないらしい。全部で40名のシールズ、チーム6のメンバーが、城塞の広場のようなところに集まった。

やがて、その城塞に似合わない男、スラックスにYシャツ姿のスチュワート・カポスが現れ、
「みなさん、昨夜はお疲れ様でした。この基地の責任者のスチュワート・カポスです」。
カポスは誰に対しても丁寧な言葉遣いのようである。

「皆さんには、近いうちに重要な任務を行ってもらいます。それまで、ここで英気を養ってください」。
カポスは、それだけ言うと、くるりと後ろを向いて、自分の執務室のバラックへ消えた。
「英気を養え?おもしれぇ冗談だ。こんな監獄みてぇなところで、気が滅入るだけだぜ」。
トロイの同僚のソルベスキー軍曹が言った。

それから数日間、トロイたちは何もすることがなく、城塞内のヘリポートで体操をしたり、行軍ドリルをしたりと、まるで新兵訓練のような日々が続いた。変わったことといえば、地べたに寝袋で寝ていたことから、一人ずつ簡易ベッドが与えられ、衛星テレビが取り付けられたことくらいである。

数日後、リーダーのダンハム大尉が、覆いのついたキャスター付きの机をカラカラと倉庫に運び入れ、皆のベッドの中央で止まった。机の覆いの真ん中あたりが出っ張っている。
「今日はだれかのバースデーだったかな?」 ソルベスキーが冗談を言った。

ダンハム大尉は、ソルベスキーに向かって指差してニヤリと笑うと、「サプラーズ!!」と言って覆いをとった。覆いの下からは、三角形の形をした、建物の模型が現れた。その場にいた一同の目が鋭く光った。


次回更新は、10月16日です。「キャンプ・アルファ」
ご意見・ご感想をお待ちしております。
------------------------------------------------------------------------------------------
同人誌も発行しております。こちらもどうぞ。同人誌書店COMIC ZIN通販ページと 虎の穴通販ページに飛びます。(購入には会員登録が必要です。)



私の訳書(共訳・監修)です。よろしかったらお読みください。
画像クリックでamazonへ飛びます。







  


Posted by 友清仁  at 07:00Comments(2)Story(物語)