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Posted by ミリタリーブログ  at 

2013年11月27日

ネプチューン・スピアー Neptune spear 2

襲撃作戦の説明は、ウィリアム・マグレイブ特殊作戦軍司令が行った。
「ステルス性能を高めたヘリコプター4機により、特殊部隊をパキスタン国内に侵入させ、襲撃させます」。

この一言だけで、ハイデン副大統領は、
「他国に軍事ユニットを侵入させるということは、パキスタン政府に了解を取り付けなければならないな。面倒くさいことになるぞ」。
「もっと簡単な方法はないのか?例えば、パキスタン軍に襲撃を依頼して、アメリカは、訓練や評価だけのオブザーバー的な役割をするといったような・・・」。

「パキスタン政府に連絡はできません。パキスタンは、アルカイダ元幹部を匿い、かなりの残党が軍隊内にいます。連絡すると、襲撃作戦がビンラディンにバレます」。
パネッタが制した。ハイデンは、気に入らないといった表情で、ソファの背もたれに身を預けた。

「建物を空爆するというオプションは取れないのですか? 精密誘導弾の精度はかなりのものだと聞いていますが・・・」。
クリントン国務長官が尋ねた。

「確かに、トマホークやJ-DAMなどの精密誘導弾の精度は高く、確実に屋敷を破壊できるでしょう。しかし、戦術的問題があります」。
マグレイブ特殊作戦司令が答えた。

「まず、インド洋のイージス艦からトマホークミサイルによる攻撃ですが、射程が足りません。山などの障害物も多く、それらを避けて飛翔するとミサイル本体の燃料が尽きますし、何よりもパキスタン軍の防空レーダーに探知され、迎撃される可能性があります」。

「B-1爆撃機による爆弾投下ならば、射程の問題はクリアできますが、爆撃機自体がパキスタンのレーダーに引っ掛かります。高度1万メートル超ならば、迎撃機が飛んでくるまでの時間を稼げますが、命中精度が格段に落ちます」。
マグレイブは、軍人らしく、軍事知識だけで説明した。

「迎撃機をかわすなら、例えば、訓練飛行として領空を飛行して、屋敷の上空を通過中に投下するとかの手段はどうですか?」 
クリントンは重ねて尋ねた。

「それはダメだ」。ゲイツ国防長官が即答した。
「そんなことをすれば、「アメリカは、訓練と称して領域に侵入し、騙し討ちをする」と、リビアや北朝鮮が非難するだろう。後後の軍事行動が難しくなる」。
「それに・・、空爆では、奴が死んだかどうか確認できない」。
パネッタが付け加えた。クリントンの意見は、3対1で却下された。

「我々の目的は、ビンラディンを殺し、9・11で犠牲になった人々の仇を討つことである。他国人の力を借りたり、空爆などの間接的な手段を使ったりしては、その意義が薄れる。アメリカ人が、アメリカ人の手で、直接、奴を殺さねばならんのです」。

「それを達成するためには、軍事的、政治的障害がどんなに大きなものであっても乗り越えなければならんのです。地上部隊による襲撃作戦こそ、ふさわしいのです」。パネッタは主張した。

一同に沈黙の時間が流れた。やがて、オバマ大統領は、
「OK。パネッタ長官とマグレイブ司令のグランドオプション(地上作戦)を採用する。いつまでに準備が完了する?」
「アフガンの某所に訓練施設があり、日々訓練を行っております。命令が出れば、明日にでも遂行可能です」。
パネッタが答えた。

この答に、ハイデン副大統領が舌打ちした。
「CIAは根回しというものを知らんな。いつも独断専行だ。しかし、実行前には大統領と私に連絡しろ。パキスタン政府には黙っていても良いが、ロシアには事前に通告せねばならん」。

「イワンどもは、自分たちが失敗したアフガン侵攻をアメリカも失敗すればいいと思っているからな。あとから、どんな言いがかりをつけられるか分からん」。

この一言をもって、襲撃作戦の会議が終了し、解散した。


次回更新は、12月4日「ネプチューン・スピアー」です。
ご意見・ご感想をお待ちしております。



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Posted by 友清仁  at 07:00Comments(0)Story(物語)

2013年11月20日

ネプチューン・スピアー Neptune spear

ワシントンDC ホワイトハウス
3月某日、面談から会議、式典への出席、ともかく今日も忙しかった。また明日も似たようなスケジュールが続くだろう。おそらく、世界一忙しい人物とは、アメリカ合衆国大統領であろう。

その日、最後の会議を終え、オバマ大統領は、腕時計を見た。すでに夜11時を過ぎていた。大統領執務室へ戻る途中、「次が本日最後の予定の、レオン・パネッタCIA長官とウィリアム・マグレイブ特殊作戦軍司令との面談です」、と秘書官が告げた。

オバマ大統領が執務室に入ると、すでに両人がソファに座り、待っていた。
「グット・アフタヌーン。要件を聞こう」。オバマは、執務机に向かいながら言った。政府首脳間では、挨拶や社交辞令はない。報告と協議、そして決定だけである。

「ビンラディンの件ですが・・」。いつもどおり、CIA長官レオン・パネッタが単刀直入に始めた。
「ついに奴の居場所を突き止めました。その最終作戦について・・」。

しかし、オバマ大統領は、パネッタの発言をさえぎり、
「待て。その話は、この3名でするべきではない。ハイデン副大統領、クリントン国務長官、ゲイツ国防長官も呼ぼう」。すぐに秘書官に命じて、3名を招集した。

3名ともにホワイトハウス周辺にいたため、30分ほどで全員が揃った。5名は、大統領を上座に据えて、ソファに座った。

仕切りなおして、再びパネッタが始めた。
「ついにビンラディンの居場所を突き止めました。今夜は、奴の襲撃作戦についてのご報告です」。
一同に緊張が走った。

「国際テロリスト、オサマ・ビンラディンは、パキスタン北部の田舎町、アボタバードに要塞のような屋敷を作り、潜伏しています。CIAと特殊作戦軍は、襲撃作戦を計画し、準備を整えています」。

「ちょっと待ってください。そのパキスタンの田舎にビンラディンがいるという根拠は何ですか?」 
クリントン国務長官が質問した。その場の誰もが持つ疑問である。

そんなことは議題の中心ではない、と言いたげな表情を見せたが、オバマ大統領もクリントンと同様な顔をしているため、今までの調査の経緯を簡単に説明した。しかし、クリントンは納得した表情を見せずに、
「そうではなくて、その屋敷にビンラディンがいる客観的な証拠、つまり、写真とか映像などがないのですか?」

「奴を直接捉えた映像や写真はありません。奴は用心深く、屋敷内の庭にすら出てきません。しかし、側近と思われる人物が屋敷を出入りしていることや、屋敷の厳重すぎる警戒などを考えると、奴が潜伏しているとか考えられません」。 一座に妙な空気が流れた。

「状況証拠から考えると、つまり、帰納法的に、そこに奴がいるはずだということか・・・」。
ゲイツ国防長官が発言した。パネッタは頷いた。オバマ大統領は、沈黙を守っている。

「具体的に、可能性として何パーセントなんですか?」 今度は、ハイデン副大統領が尋ねた。
「可能性は90パーセント」。パネッタは即答した。
「残り10パーセントは?」 ハイデンが問い返す。
「奴が犬の散歩とか、ファーストフードを食べに外出したとか・・です」。

「パネッタさん、私は真面目に聞いている。CIAは襲撃作戦と簡単に言うが、場所は、アメリカ国内でもなければアフガニスタンでもない。作戦の遂行以前に、外交問題になるんだ。いままで、CIAの先走った行動で、政府がどれだけ苦労したか分かっているのか?」 
ハイデンは、怒気を含んでいった。

パネッタは、こっそりオバマ大統領に了承を得て、さっさと作戦を遂行しようと思っていたため、政府首脳全員を納得させるだけの論拠を持っていなかった。とんだ横槍が入ったと思った。
もう一度仕切りなおしか・・・。そう思ったとき、2日前に、アフガンのカポスから届いた指輪のことを思い出した。

パネッタは、指輪をポケットから取り出すと、
「この指輪は、アボタバードの宝石店で入手したものです。しかし、ただの指輪ではない。サウジの王室に近いものしか持つことを許されない非常に貴重なものです」。
「しかも、この指輪は、あの屋敷から出てきた女性が売りに来たというのです。こんな貴重なものが、あんな田舎で手に入るわけがない」。パネッタは、テーブルの中央に指輪を置いた。

置かれた指輪に、まっさきに手を伸ばしたのは、やはり、女性のクリントン国務長官であった。デザインは、彼女の趣味ではなかったが、そうとう価値があるものであることはわかった。

指輪がその場の各人に回され、オバマ大統領を除く全員が見た。
「つまり・・この指輪の持ち主が、サウジの王室と近い関係を持つビンラディンだという・・・、またしても、状況証拠ということか・・・」。
ハイデン副大統領が、嫌味を込めて言った。

指輪は、オバマ大統領の前に置かれている。オバマは、じっとその指輪を見ている。
上院議員時代、そして大統領になってから、サウジ王族と面談し、その指に収まっている指輪を何度も見ていた。そして、その指輪の裏には、特殊な文様があることも知っていた。大統領は、その指輪を手に取ると、リングの裏を見た。果たして、その文様があった。

「諸君、パネッタ長官の言うとおり、ビンラディンはアボタバードにいるだろう。作戦の詳細を聞こう」。


次回更新は、11月27日「ネプチューン・スピアー」です。
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Posted by 友清仁  at 07:00Comments(2)Story(物語)

2013年11月13日

キャンプ・アルファ Camp α 10

その日から、連日、襲撃訓練が行われた。訓練開始の時間は不定で、いつ始まるか分からない。シールズたちは、絶えず緊張して日々を過ごした。

「訓練開始。総員、配置に付け」。けたたましいサイレン音と共に、シールズたちに出撃命令が出る。シールズたちは、各自の装備をつけ、構内のヘリポートへ走る。すでにチヌークとブラックホークのローターは回転しており、いつでも飛び立てる状態であった。

総員がヘリに乗り込むと、点呼が行われ、すぐに飛び立った。前回と同じように2時間ほど飛行する。機内のトロイ・ロバーツ軍曹は、毎日繰り返される訓練で感覚が麻痺し、もしかしたら、今日は作戦決行の日で、敵地に向けて飛行しているのではないかとさえ思い始めた。そうやって感覚を鈍らせるのも、連日、訓練する目的でもある。

「降下スタンバイ!」。
ブラックホークのパイロットが叫ぶ。いつものように流れるように準備が進み、メンバーが降下をはじめる。トロイも屋上に降り立つ。ナイトビジョンでしか周囲を見たことがないせいか、昨晩も来たはずのキルハウスだが、同じ場所に来ている気がしない。

「突入!」。
ソルベスキー軍曹が、ベータチームのサインを確認して号令を出す。トロイたち、突入チームは、ロープを伝って三階に突入する。昨晩と同じ間取りだった。やはり訓練だった。

「ルームAクリア!・・・・・2秒」、「ルームBクリア・・・8秒」、「ルームCクリア・・・・17秒」。
先行してクリアリングをするメンバーの報告を聞きながら、トロイは、腕時計の秒針を見つめていた。最後の部屋がクリアリングするまで、時計から目を離すことはなかった。

「コンパウンド(建物)、オールクリア!・・・・59秒」。
トロイは、最後の部屋のクリアリングの報告を聞くと、すぐにダンハムとソルベスキーに報告した。
「だいぶ早くなったな」。ダンハム大尉から返信があった。
「訓練を重ねていますから・・・」、とトロイは答えたが、ストレスが溜まった。

どんなにクリアリングに早くなっても、所詮、実際の部屋の作りとは異なるわけで、もちろん、訓練ごとに、鍵のかかっている部屋や人質や敵の位置なども変えてはいるが、実戦でこのようにうまくいくとは限らない。どんなに訓練を重ね早くなったとしても、トロイは、砂を噛むような思いだった。

訓練を終え帰還すると、毎回、反省会が開かれる。どんなに些細なことでも意見され、メンバー全員で改善策を考える。突入チームリーダーのトロイも、反省点を求められるが、「とくに問題点は見つからない」、としか発言できなかった。

突入チームというものは、必要十分な人数で編成される。少なすぎると、クリアリングに時間がかかり、敵の反撃を受ける可能性があり、多すぎると、狭い通路で立往生してしまい、敵の攻撃を受けやすい。適切な人数とクリアリングの手順・・・。これを決めるものは、建物の構造だった。建物の構造を知りたい・・・。トロイの願いはその一点に絞られた。



ワシントンDC 大統領執務室
第44代アメリカ合衆国大統領、バラク・オバマは、早い朝食を終えると、すぐに執務室へ移動し、秘書官から本日の予定のブリーフィングを受けていた。

相変わらず、面会が多い。中には、何をやっているのか分からない団体の長との面談もある。はっきり言って、そのような人物に会う必要はないのだが、大統領というものは、そんな人物にも会ってやり、愛想笑いもしてやらなければならない仕事である。

1日のスケジュールの最後に、大統領秘書官は、CIA長官レオン・パネッタとアメリカ特殊作戦軍司令ウィリアム・マグレイブとの面談、と告げた。普段から犬猿の仲とも言われる、CIAと特殊作戦軍のトップが揃って面談を申し込むとは・・・・。オバマ大統領は、大きなものが動き出したことを感じた。


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Posted by 友清仁  at 07:39Comments(0)Story(物語)

2013年11月06日

キャンプ・アルファ 9 camp A

「紹介しましょう。こちらは、今回の作戦のオブザーバーのチャーリー・ベッカーさんです」。
カポスが部屋のライトをつけて、ダンハムに紹介した。映像の途中で入ってきたのか、それとも始めからそこにいたのかわからないが、その人物は、カポスがその名を告げるまで、ダンハムは全く気が付かなかった。ダンハムは訳がわからなかったが、とりあえずチャーリーに会釈した。しかし、チャーリーは、微動だにしなかった。

初めてチャーリーを見て、その姿に、ダンハムはギョッとした。両足が膝から下がなく、左手も指がほとんどない。その様子から、傷痍軍人であることはすぐにわかった。

「時間がかかりすぎる」。
この言葉に、ダンハムは少しイラついた。今回は、初めての突入訓練であり、目的は、各人の動きを確認するためのものであって、これから訓練を重ねればもっと短くなるはずである。今回は15分だったが、10分くらいまで縮められるだろう。

「時間がかかりすぎだ。どんなに長くとも、8分が限界だ」。チャーリーは言った。
8分だと?ダンハムは、イラつきから怒りに変わった。
「あなたが何者かは知りませんが、あの建物の規模を考えれば15分はかかり過ぎにしても、8分は無理だ。むしろ8分で攻略できる手段を教えて欲しい」。

「そこをなんとかするのが、あんたらの仕事だ」。
チャーリーは、カポスの顔を見て、
「そろそろ、任務について教えてやってもいいのでは?」
カポスもそのつもりだったようで、頷いた。

「ダンハム大尉、今回の任務は、ほかでもなくビンラディンの暗殺です。そして、あなた方シールズ チーム6がこの作戦の実働部隊として選ばれました。心してこの任務にあたって欲しい」。
カポスは一気に言った。その言葉に、ダンハム大尉の体に衝撃が走った。

まさかとは思ったが、アメリカはついにビンラディンの居場所を突き止めた。そして、その襲撃作戦にシールズが選ばれた・・・。
なんということだろう。ダンハムは少し動揺した。動揺しているダンハムを全く無視するように、チャーリーが、8分以内でなければならない理由を説明し始めた。

ひとつは、領域侵犯であること。もう一つは、屋敷の近くに警察署や軍施設があり、すぐに搜索の手が伸びること、であった。一般的に15分という作戦時間は、十分、合格点だが、不測の事態が起こった際に、15分では対応しきれず、おそらくパキスタン軍が動き出す可能性があった。

ダンハム大尉は、呆然と聞いている。チャーリーが続けた。
「その代わり、交戦規定は特別とする。まず、ビンラディン本人に対しては、背を向けて逃走しても、射殺しろ。むしろ、生け捕りは困る。・・・・たとえ降伏を願い出ても射殺しろ」。
「屋敷には、ビンラディンの家族が住んでいる。女子供でも、作戦を妨害する行動をとったらならば、射殺してもよい」。

一通り、説明が終わると、チャーリーは、「以上の条件を下に、再度、作戦を練り直して欲しい。だが、部下には、まだビンラディン襲撃作戦であることを教えるな」。と付け足した。

以上で、検討会が終わった。ダンハム大尉は、部下の待つ倉庫へ歩いて行った。体が興奮しているせいか、アフガンの夜の空気がよけい冷たく感じた。

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