2011年01月05日

タクール・ハーの戦い8 Takur Ghar 8

一方、チヌークのパイロットたちである。
正操縦士のチャックは、すでに銃弾を受けて戦死したが、副操縦士のグレック大尉およびナビゲータのドン軍曹は、かろうじて生き残っていた。

コックピット付近にいたドンは、ヘリの風防ガラスに次々と弾丸が命中するのを見た。ドンは、26年間の軍人生活の中で初めて、自分に銃弾が向かってくる経験をした。ドンは、シートベルトをはずし、ヘリクルーの護身用のMP5をつかむと、格納区画へ移動した。

ヘリが不時着すると、アルカイダが前方の塹壕をぴょんぴょん移動しているのがチヌーク副操縦士のグレック大尉には見えた。すぐにそばのM4をつかむと、風防ガラス越しに撃った。コックピットからの銃撃に驚いたアルカイダは、すぐにタコツボにもぐりこみ、あとは銃だけ出してあてずっぽうに撃ち始めた。

・・・何てこった、最悪のシナリオだ・・・。グレックは半ばやけくそになってM4を撃つと、シートベルトをはずし、格納区画へ移ろうとした。

やがてアルカイダは、コックピットの敵がグレック一人ということが分かると、集中的に射撃を加えてきた。コックピットの防弾ガラスに銃弾がビシビシといくつも当たり、やがてガラスが砕け、内部の機器に命中した。機器のなかには、煙を上げるものもあった。

すでに死んでしまったと思った正操縦士のチャックは、虫の息であったが生きていた。彼は最期を悟ったのか、「俺にかまわず、早く逃げろ・・・」とわずかに言うと息絶えた。

それを見たグレックは、同僚の遺体がこのまま、銃撃の中で、切り刻まれるのを見捨てるわけにはいかず、コックピットのドアの上にある黄色い緊急脱出レバーを思いっきり引いた。ぐわんっと音がしてチャックの右側のドアが外れ、チャックは座席ごと雪中に放り出された。

チャックが転げ落ちるのを見て、グレックも同じように脱出するのがよいと思い、自分も緊急脱出レバーを引こうと手を伸ばしたとき、何かものすごい力が左腕に加わるのを感じた。左手に激痛が走ったが、すぐにレバーを引こうと手を伸ばした。しかしレバーの感触がなかった。

おかしいと思い、左手を見ると左腕が根元からなくなっていた。見ると、足元に自分の左腕が転がっていた。残った右腕で拾い上げると、腕から煙が上がり、鮮血が勢いよく出ていた。おそらく重機関銃の銃弾が当たり、グレックの腕を引きちぎったのだろう。

グレックは、もはや脱出レバーが引けないことが分かると、体をねじって、コックピットから抜け出した。残った右手でM4のグリップをつかむと、操縦桿の上にバレルを乗せ、フルオートでアルカイダに向けて銃弾を放った。全弾を撃ち終えると、ヘリ後部へ移動し、そこに格納されている止血帯で残った腕を縛った。

グレックがあたりを見ると、ヘリの格納区画ではPJのカニングハム軍曹とその助手のクロイ軍曹が懸命に負傷者の手当てをしていた。

さらに1発のRPGがコックピットに命中した。機体全体に衝撃が走り、グレックもバランスを崩した。倒れまいと、手を出そうとしたが、すでに彼の左腕はなく、そのまま床に倒れた。

グレックが倒れたのが、視界に入ったのか、カニングハムは、グレックに気がついた。カニングハムは、すぐにグレックの元へ行き、手当てを始めると、「オレは、もういい。チャックは、まだ生きている。やつは外にいる、早く助けてやってくれ。」とグレックは言った。「しゃべらなくていい。家族のことを考えろ」。カニングハムはそう言うと、手当てを続けた。

銃声が途切れることなく続いている。

「みんな戦っている。俺も戦う。だがオレは腕をなくしちまった。俺にできることは、これだけだ」。グレックは、カニングハムの手を振り払うと、ゆっくりと立ち上がり、チヌークに搭載されている無線機PRC-122のハンドマイクをつかんだ。

「こちらレーザー01。本機は墜落した。現在、敵の激しい銃撃を受けている。死者、重傷者多数。至急、援軍を送れ」。「現在、2時および9時方向より攻撃を受けている。航空支援を・・・」。

激痛に耐えながら、グレックは2回繰り返した。そして無線のそばにあった灯標信号を2つ点火し、外に放り投げると、そのまま崩れ、息絶えた。

次回更新は、1月12日「タクール・ハーの戦い」です。お楽しみに。
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Posted by 友清仁  at 07:03 │Comments(0)Story(物語)

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