2011年11月16日

スナイパー Sniper 2

異常を察知したカンダハル近郊のタリバン拠点では、原因を突き止めようと、偵察部隊を繰り出した。

すでに首都カブールが陥落していることを知っているタリバンは、アメリカ・北部同盟軍が、いずれ南部のカンダハルにも侵攻してくることを十分に承知しており、わずかなことでも過敏に反応するようになっていた。AK47やRPGを持った兵士が、トラックの荷台に乗って、拠点からどんどん出てゆく。

「こんな深夜に行動しているタリバン部隊はない。アメリカ軍が侵入したに違いない」。偵察部隊隊長キファーフが叫んだ。見張りの兵によると、ヘルマンド川の近くで、大きな衝突音がしたらしい。となれば、アメリカ兵はヘルマンド川のあたりをうろうろしているに違いない。「ヘルマンド川の近くに行け」。助手席のキファーフは、運転手に言った。

キファーフが率いる偵察隊は、やがて川淵まで来た。闇の向こうで、滔滔と流れるヘルマンド川の音がする。このとき、車両は10両、戦力は80人程度だった。キファーフは部隊を2つに分け、一方を下流に向かって進むように命じ、もう一方を自分が統率し、上流を捜索することにした。

互いに視界に入る程度に車両を散開して上流に進んだ。部隊を広範囲に展開させなかったのは、無線などの連絡手段がないことと、進入したアメリカ軍が大兵力(大隊規模)だった場合、個別に撃破されることを避けるためである。

タリバン偵察部隊が、暗闇の中を歩くほどの速さで進んでいる。車のヘッドライトだけでなく、荷台のサーチライトも左右に振って捜索した。敵が大部隊なら、こちらの兵力を把握して、即座に攻撃を仕掛けてくる。小部隊なら、どこかに隠れているはずだ。果てしない暗闇が、歴戦の猛者であるキファーフに武者震いをさせた。

どれくらい時間が経っただろうか・・・。前方には、アメリカ兵どころか狐一匹現れない。配下の兵士の緊張も極限に達していた。衝撃音を聞いたというのは、見張り兵の間違いか・・・・。

キファーフがそう思った瞬間である、背後でサーチライトを振っていた兵士が、うめき声とともに斃れた。その死体がキファーフにかぶさった直後、今度は運転手が血渋をあげてハンドルに前のめりになった。「狙撃されている」。キファーフは背中に冷たいものが走った。

キファーフの不幸は、アシモフの撃った弾丸が運転手に命中してしまったことである。運転手の体が前のめりになり、その体重がそのままアクセルに伝わった。車は急加速を始めた。「車を止めなければ・・」、キファーフは思ったが、サーチライトの死体が邪魔で身動きが取れなかった。かろうじてハンドルに手が届きまっすぐ走らせることができた。

驚いたのは、併走していた残りの部隊である。隊長車が急加速を始めため、すわ、敵を見つけたのかと、加速して近づいてきた。「近寄るな、離れろ」。キファーフは怒鳴った。荷台の兵士も怒鳴った。しかし、その声はエンジン音にかき消された。そうしている間にも兵士が狙撃され、荷台から落ちた。

キファーフは、何とか背中の死体を車外に放り出すと、ついで、運転手の死体も外に押しのけた。サイドブレーキを引いて車を止めた。仲間の2台も近くに止まった。「狙撃されている。離れろ」。と叫んだ瞬間、仲間の2台の数人が続けて斃れた。「これじゃ的だ。ライトを消せ」。

一方、対岸のペティソリー達である。アシモフが数発撃った後、対岸のヘッドライトが集まったかと思うと、いっせいに消えた。さすがのアシモフも光がないと狙撃できないのか、銃を下ろしたのだが、すぐにロニーはスコープを赤外線に切り替えてやった。装備されているナイトフォース社のスコープは、暗視・赤外線の切り替えが簡単にできる。

「おお、すばらしい」。アシモフは再び、銃を構えて言い、続けて撃った。ペティソリー、ロニーも赤外線に切り替え、アシモフに続いて狙撃を開始した。スコープの中には、右往左往しているタリバン兵がよく見えた。

「車を撃つな。炎上すれば仲間が来る。あの車を分捕ろう」。アシモフが楽しそうに言うところを見ると、根っからの軍人で、戦場が何よりも好きらしい。

やがて、車両の近くに動くものがなくなると、「ペティソリーからテキサス3へ。脅威はなくなった。車両を確保し、安全な場所へ退避せよ」。ペティソリーは、無線を切った。


次回更新は、11月23日「友好的な村」です。お楽しみに。
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Posted by 友清仁  at 07:03 │Comments(0)Story(物語)

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