2012年03月21日

タリン・コットの戦い 9 Battle of Tarin Kowt

マイク・ブレンド軍曹の戦死は、すぐにカブールの秘密基地に報告された。報告を受けたクリス少佐、マルホールランド大佐は愕然とした。

「そんなにすごい威力なのか・・」。文官的軍人のマルホールランド大佐には、部下の戦死よりもRPG-7の威力の方が衝撃的だったらしい。

もちろん軍人であるから、敵国の武器の名称やどんな兵器なのかは知っていたが、それは、たしか国防省の調達課長だったときに、AT-4の契約更改の際に見せられた資料映像の印象でしかなく、AT-4に比べてひどく原始的で効果的とは言えない武器であった。

この反応に、クリス少佐は半ば呆れながらも、
「RPG-7対戦車ロケット砲は、初速が極めて速く、300mくらいの距離でも装甲車の装甲は簡単に貫通します。高熱と破片が周囲に飛び散りますので、人的被害は甚大です」。

「彼我の戦力は拮抗していますが、敵は地の利を得ています。時間が経ては敵が優勢になります。戦闘ヘリコプターと増員を要請します」。タリン・コットの司令部からジェイソン大尉が要請した。

この要請にすぐにでも応えたいところであるが、現在の秘密基地には、アパッチなどの戦闘ヘリコプターは1機もなく、援軍といっても数名の特殊部隊隊員がいるに過ぎなかった。

「大佐、私が応援に向かいます」。
クリス少佐が言った。もともとクリス少佐は自分が戦場へ行き、直接部隊指揮をとりたかったのであるが、マルホールランド大佐が強く反対し、しかたなく副官として基地に残ったのだ。クリスからすれば、この援軍要請は戦場へ出る千載一遇のチャンスだった。

「ダメだ。少佐はここで全体的な指揮をとるんだ。わたしは、中央司令部に報告し指示を受けてくる」。
すぐにテントをでて、カブールの司令部へ向かった。文官的軍人マルホールドランドにとっては、戦闘であっても事務に過ぎなかった。

マルホールドランド大佐は、中央司令部に到着するとすぐにフランクス大将の前に通された。そこでマ大佐は、タリン・コットの現状と、ODA574は、カルザイを連れてタリン・コットから撤退し、事後を考えたほうが良い旨のことを言った。

しかし、マルホールドランド大佐の言上が半分も終わらないうちに、フランクス大将は、
「タリン・コットを全力で死守せよ。装備や人員が足りないのであれば、イギリス軍にも応援を要請する」。とだけ言った。マ大佐は、秘密基地へ引き返した。

撤退の進言が容れられなかったマルホールドランド大佐であるが、しかし、上官から方針を示されれば、それを達成するための行動は素早かった。

すぐにブラックホーク2機を手配し、クリス少佐にタリン・コットへ向かうように指示し、総司令部には、クリス少佐に代わる副官を要請した。この要請はすぐに通り、総司令部から参謀大尉2名が来た。


「アレは死んだな」。
RPG‐7の直撃を受けて炎上する家屋を見て、タリバン司令官ラービフは、屋根で狙撃していたマイク・ブレント軍曹が死んだことを確信した。

タリン・コットの南側では依然として激しい銃撃戦が続いている。
「敵は、街に南側に戦力を集中させて北側はガラ空きに違いない。30名ばかり北側に回して侵入させろ。北側で大騒ぎすれば、南の敵も総崩れだ」。ラービフは、部下に指示を出した。敵の隙を突く。まさにゲリラ戦術であった。


次回更新は、3月28日「タリン・コットの戦い」です。お楽しみに
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Posted by 友清仁  at 07:00 │Comments(1)Story(物語)

この記事へのコメント
毎回楽しみに読ませて頂いております。
既にご存じかもしれませんが、2002年だと、こんな面白い本もあります。
ttp://www.amazon.co.jp/18-Hours-True-Story-Hero/dp/1844543935
(頭のhは追加して下さい)
著者は女性なので、細かい記述や名称でおかしな点もありますが、モガディシオ帰りのレンジャー軍曹が、「あの時よりも酷かった」という谷間の18時間の話です。
…私はまだ途中までしか読んでませんが。
Posted by ミャルコ at 2012年04月04日 23:06
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