2012年04月11日

タリン・コットの戦い 12 Battle of Tarin Kowt

炎上する警察署を見て、パシュトゥーン人で構成されるタリン・コット防衛軍は、総崩れとなった。1人が前線から逃げると、2人逃げた。2人逃げると、1部隊が崩れた。恐怖が伝播すると、もはや止めようがない。

「もはや持ちこたえられません。大尉、退却しましょう」。もう一人のCIA工作員、ゼペスが言った。

作戦指揮官のジェンスン大尉も、ゼペスと全く同じ考えなのだが、タリン・コットから撤退すれば、おそらく、この地のパシュトゥーン人たちに過酷な制裁が加えられるだろう。また、戦力がなくなったODA574が元の村に撤退したとしても、タリバン攻撃軍が追撃してくれば、簡単に全滅させられてしまうだろう。

しかし、崩れゆく前線を見てジェイスン大尉も決断せざるを得なかった。ODAのメンバーを招集した。

まず、応援に向かっているクリス少佐には、タリン・コットに着陸するのではなく、2キロほど離れた地点に着陸して待機してもらう。その地点に、ゼペスを護衛につけてカルザイを向かわせ、戦場を脱出する。残りのODA574のメンバーは、タリン・コットに残り、できるだけ時間を稼ぐことにした。

「アメリカ人よ。私のことを忘れてもらっては困るぞ」。
緊迫するなかで、カザフ空挺連隊のアシモフ大佐が言った。アシモフが発言するまでジェイスンはその存在を忘れていた。
「大佐も、カルザイと共にカブールへ脱出してください」。ジェイスンは短く答えた。

「見損なってもらっては困る。戦場で同志を見棄てて逃げたとあっては、故郷の笑いものだ。私も残って戦うぞ」。

ラービフ率いるタリバン軍の銃声が近くなってきた。確実に敵は接近してきている。もはやタリン・コット防衛軍は消滅したといっていい。

「カルザイさん、こちらへ」。
ゼペスが車へ促した。カルザイの顔は、自分も残って戦いたいという意思を表していたが、その一方で、自分の立場も理解しているようで、黙って車に乗り込んだ。すぐにゼペスは車を発進させ、2人は闇の中に消えた。

ジェイスンとペティソリー両大尉は、カルザイを見送ると、ODAのメンバーに振り返り、
「建物に拠って敵を狙撃しろ。各人は弾が無くなり次第、離脱して北を目指せ」。最後の命令は簡単なものだった。各人は、タリン・コットの各地に散った。

「空爆がなければ、アメリカ軍は弱い。アフガンにはアフガンの戦い方があるのだ」。
ラービフは車上の人となり、隣の運転手に言った。夜明けまでには決着がつくだろう。もはや勝利を確信している。

そう、タリバン司令官、ラービフは勝利を確信していた。しかしそれは勝利軍の驕りでもあった。タリン・コットに進撃するタリバン軍は、全くの無防備であった。闇夜の中を進撃軍は、車のヘッドライトを煌煌と灯けて走っていた。


次回更新は、4月18日「タリン・コットの戦い」です。お楽しみ。
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Posted by 友清仁  at 07:01 │Comments(0)Story(物語)

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