2012年04月18日

タリン・コットの戦い 13 Battle of Tarin Kowt

「空爆がなければ、ソ連軍もアメリカ兵も弱い」。
タリバン司令官、ラービフは再び言った。兵器の質と量に劣るタリバン軍の取る戦法は、hit and ran(強襲撤退)、夜討ち朝駆けといった、白兵戦の奇襲しかない。

その対抗手段として、ソ連軍やアメリカ軍が考え出したのが、ムジャヒディンやタリバンがいそうなところに、集中的に爆弾を投下して、草木一本生えないくらいの更地にしてしまう、空爆であった。

ラービフも、アフガン北東部のパンシジール渓谷の戦いで、ソ連軍の空爆を何度も受けた。しかし、彼は生き残り、そして、ソ連軍の空爆には、ある法則があることに気がついた。
「ソ連軍は戦闘が始まる前に空爆し、そして爆撃機が爆弾を投下してしまうと、その日は再び空爆にやってこない」。

この理由は簡単で、ソ連軍の航空機運用に問題があったためである。当時、ソ連軍が使っていた爆撃機というのは、地上攻撃機のSu-25、大型爆撃機のTu-22などであった。

Su-25は、爆弾の搭載量が250kg爆弾×8と、爆撃機としては少なく、広範囲な爆撃を行う場合、かなりの数を戦闘に投入しなければならなかった。当時、バグラム空軍基地には、120機ほどのSu-25が配備されていたが、大規模な空爆を行うならば、約半数の60機以上を投入しなければならなかった。

60機の一斉運用となると、昔のプロペラ機ならいざ知らず、ジェット機ともなると、事前のメンテナンスなどが大変である。一日に何度もできることではなかった。

Tu-22も、大型爆撃機であるがゆえに運用が大変であった。まず、大きな機体が目立ち、ムジャヒィディンの格好の目標となるため、バグラムには常駐させることができなかった。爆弾を満載した(9t)の大きな機体は、RPG1発で大爆発を起こし、機体だけでなく周辺施設も破壊されてしまう。

そのため、Tu-22は、ソ連国内の基地から飛び立ち、パンシジール渓谷に爆弾を落とし、再びソ連領内に帰る。こちらも1日に何度もできることではなかった。

それゆえタリバン指令ラービフは、タリン・コット攻撃の際も、あちこちに陣地を作り、アメリカ軍の空爆を避けたあと、攻城戦を開始したのだ。

「もう空爆はない。白兵戦となれば、数の多い我々が有利だ」。ラービフは、自信に満ちた声で、兵士たちに言った。兵士たちもその言葉を信じて突撃した。

ラービフを英雄にしたのは、ソ連軍との死闘を生き抜いたことである。そしてその経験を活かし、タリン・コットを攻撃し、その作戦が成功しつつある。彼の名声は、さらに光り輝くものになるだろう・・・

しかし、ラービフの不幸は、先に戦死したウルズガンのルシュディー同様、アメリカ軍を知らなかったことである。20年前のソ連軍と現在のアメリカ軍は、装備の質や戦術などで、隔世の隔たりがあるといってよい。

20年前のソ連軍の戦略戦術は、ある目標に向かって作戦が立てられ、その障害となるものを排除してゆく(戦力の投入など)、ある種の排他的なものだったのに対し、今日のアメリカ軍は、必要なところに必要な戦力を投入するという、オンデマンド的なものに変わっている。

そのため、空母の艦載機の運用も高度に合理化・電子化され、1日に何回でも空爆ができるようになっている。ちなみにアフガン戦初期の2001年から2003年までの通算空爆数は、36,564回で21,737発の爆弾を投下した。

第1陣の空爆の失敗を受けた空母カールビンソンでは、その失敗の原因を考慮して、直ちに兵装を変換して、第2陣を発艦させた。第2陣のF-18の翼の下には、熱感知ホーミングが装備された対地ミサイルが搭載され、あと数分でタリン・コット上空に到着する予定であった。


次回更新は、4月25日「タリン・コットの戦い」(もうちょっと続きます)
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Posted by 友清仁  at 07:01 │Comments(0)Story(物語)

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