2012年06月06日

掃討戦 extermination 3

タリバンの頭目、ラービフの猛攻を凌いだタリン・コットは、その戦闘が嘘であったかのように平穏を取り戻していた。いや、アメリカ軍の実力をはっきりと見た辺りのアフガン人の信頼を勝ち取り、カンダハル攻略軍に志願する若者が集まり、街は大いに賑わっていた。

フォックス少佐、ジェイスン、ペティソリー両大尉は、先の戦闘で司令部にしていた警察署が破壊されてしまったので、付近のホテルを接収し、新たな司令部を立ち上げた。新司令部で、3人の軍人にCIAのゼペスが加わり、カンダハル攻略作戦を練っていた。

このところ、付近の住民からタリバンに関する情報が頻頻と入ってくるようになった。理由の一つには、首都カブール、そしてマザリシャリフが陥落し、アフガン北部が完全に北部同盟(実質はアメリカ軍だが・・)の支配下に置かれ、タリバン政権が崩壊したことが、アフガン国民に浸透してきたためである。

それらの情報を集約すると、タリバン軍のラービフは、カンダハルに通じる幹線道路付近の丘に潜伏しているようである。ジェイスン大尉は、付近に偵察に行ったが、丘はたくみにカモフラージュされており、ラービフの潜む丘を特定することができなかった。

攻撃目標を特定できなければ、地上軍を使って攻撃することができない。司令部の4名はいろいろ協議した結果、敵が潜んでいそうな丘を、それこそ「シラミ潰し」に空爆し、そのシラミをいぶり出すことにした。


新司令部の隣の部屋では、CCTのダン、ウェス、アレックス、そして新しく派遣されてきたジムが新型GPS、「ヴァイパー」の操作を懸命に覚えていた。

「つまり・・・、この画面で自分の座標を打ち込んで・・・そして、敵の座標を打ち込むのか・・」
「違う。その前に、信号を発信する相手を選択しないと、次の画面に進めないぞ」。
歴戦の戦士4人が、マニュアルを片手に苦戦している。その後ろでソ連空挺大佐のアシモフは、あごひげをいじりながら、新型GPSを興味津々に見ている。

やがて4名は、GPSの機能の1つ、SOS信号の発信の操作に移った。
「空爆の座標を送るのに比べて、SOS信号の発信は簡単だな。こっちの座標を打ち込んで、SOSを押せばいい」。「175、348、085、199、と座標を打ち込んで、SOSだ。よし、みんな1回ずつやってみよう」。ウェスは言った。4名のCCTは、同じ作業をそれぞれ1回ずつ行なった。

それから5分もしないうちに、隣りの司令部の緊急無線が鳴り響いた。
「カブール司令部からタリン・コットへ。SOS信号を受信した。至急、現況を報告せよ」。

驚いたペティソリー大尉が無線に出て、
「こちらタリン・コット。当方に異常なし。SOSは間違いではないか?」
「たしかにタリン・コットからのSOSだ」。

この会話の間にも、隣の部屋から男たちの笑い声が聞こえた。もしやと思ったペティソリーは、隣りの部屋に行き、「お前ら、いま、SOS信号を発信しなかったか?」と4人に問いた。

4名はキョトンした顔をして、「たしかに今、SOS信号のテストをしていました・・・・しかしなぜ大尉がご存知なのですか?」。どうやら4名は、GPSをテストモードに切り替えずに操作していたらしい。

「タリン・コットからカブール司令部へ。SOSはこちらのミスだ。当方は異常なし」。ペティソリーは無線を返した。
「おいおい頼むぜ。こっちはあの日以来、ピリピリしているんだ。悪質な悪戯はやめてくれ」。司令部からの返電であった。ODA574は、再び通常の任務に戻った。


その頃、クロスビー中佐の操るB-52は、アフガン-パキスタン国境近く、高度1万メートルを飛行していた。
「タコ(タクティカル・コーディネータの略)からキャプテン(機長)へ。SOS信号を受信。座標は、175、348、085、199・・・・・。信号を照会。間違いなくアメリカ軍のものです」。

次回更新は、6月13日「掃討戦」です。お楽しみに。
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Posted by 友清仁  at 07:01 │Comments(0)Story(物語)

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