2012年08月08日

誤爆 Friendly bombing 7

4発のAGM-69 SRAMがタリン・コットに向けて飛翔している。B-52のタコ(タクティカル・コーディネータ)が操作するコンソールには、ミサイルを表すオレンジ色の×がタリン・コットの白い×へ向けて進んでいるのが表示されている。

当初、オレンジの×は、4発分すべてが重なっていたが、時間が経つにつれ、4発は、扇子の骨の上を進むがごとく扇型に間隔を広げた。画面を拡大・スクロールすると、タリン・コットを表す四角が現れ、その四角を横断するように、真一文字に着弾予想地点を示す白い×が並んでいる。

AGM-69 SRAMはクラスター爆弾ではないが、その爆破範囲を考えれば、クラスターでなくとも街全体が爆破範囲に入る。「命中まで20秒」。タコは、報告した。


街の臨時司令部にいるODA574のジェイスン大尉は、誤爆とラービフの攻撃により、大混乱を起こしているタリン・コット防衛軍をまとめることに忙しかった。部隊長に無線を入れるが応えない。戦死したのか、逃げてしまったのか?どこに何人いるのかすら把握できない。

やがて、B-52の爆音とAK47の銃声に混じって、もう1つの耳障りな音が聞こえ始めた。
「来たか・・」。最悪な事態にもかかわらず、ジェイスンは、むしろホッとした。混乱を収めようと中途半端に指示を出すのをやめた。

倒れ始めたドミノを直すのに、今まで並べたドミノの労力を惜しんで、ごちゃごちゃやるからかえって被害が大きくなるのである。いっそ全部倒してしまって、はじめから並べれば楽だろう。土と粘土の建物ばかりのタリン・コットの街や、すぐに逃げ失せるアフガン人のことなど知ったことか。

しかし、ODA574のメンバーだけは別である。
「ジェイスンからODA各員へ。まもなく空爆が始まる。各員、退避せよ。空爆終了後、点呼をとる。それまで死ぬなよ」。そう無線に告げると、ジェイスンは、骨折したペティソリー大尉とカルザイを伴い、無人の民家の地下倉庫へ入った。


司令部が一時的に「停止」したことで、タリン・コット防衛軍は組織的な行動が取れなくなった。(もともと崩壊していたが・・)兵士の中には、果敢に射撃する者もいたが、ほとんどの兵士が逃げ失せた。市民も誤爆を避けてすでに街から脱出していた。タリン・コットはゴーストタウンのようになった。

タリバン司令官ラービフは、車両の助手席で笑い出した。アメリカ軍とは、なんと間抜けなのか。おそらくあの誤爆は、山中に隠れているタリバンを爆撃するためのものだったのだろう。しかし、あろうことか敵ではなく、味方の頭上に爆弾を落とすとは。

その後の混乱を収拾できず、あっけなく街を放棄してしまうあたり、アメリカ軍の作戦能力も大したことはない。「勝った、勝った、勝った」。ラービフは、鼻で大きく息をしながら心のなかで叫んだ。もはやラービフ達に向かって発砲してくる奴もいない。

ラービフは車両を止めさせ、あとに続く兵士たちに叫んだ。
「アメリカ兵も敵もいない。タリン・コットは我々のものだ。略奪を許す」。そう言われた兵士たちは、一斉に車から飛び降り、無人の民家に押し入った。

こんな田舎の街に金目のものなどはない。兵士たちは、清潔な水と新鮮な食料をどんどん車に運び込んだ。ラービフは略奪に参加しない。

兵士たちは略奪したものをどんどんトラックに積み込んでいる。やがてトラックの荷台がいっぱいになり、ラービフはその光景を見て、「そんなに積み込んだら、お前らは一体どこに乗るんだ?」。そんなことを思いつつ、兵士たちの無邪気さに心を和ませていた。

ラービフは、久しぶりののんびりした気分で、ふと空を見上げた。雲一つない青空であったが、一瞬、キラっと光るものを見つけた。ハッと息を呑む。「爆弾だ。逃げろ!」兵士たちに怒鳴るが、略奪に夢中の兵士たちは気がつかない。

ラービフは走った。直後、背後から爆発音が響き、爆風がラービフを襲った。体が宙に浮いたかと思うと、民家の壁に思い切り叩きつけられた。立ち上がり、なおも走り出そうとしたが、すぐに体中が燃え上がり、息ができなくなった。タリバン司令官ラービフは、その場に斃れた。


次回更新は、8月15日のつもりですが、お盆で忙しくなった場合は1週お休みをいただきます。
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Posted by 友清仁  at 07:00 │Comments(0)Story(物語)

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