2012年08月22日

セクショナリズム Sectionalism

「こちら、ODB 570。貴官の所属および司令官を報告せよ・・・・・」。
ODA574指揮官、ジェイスン・ハニンガム大尉は、応答のあったPRC-148を鷲掴みにすると、
「こちらODA547。現在、味方の誤爆を受け、負傷者多数。至急、救護ヘリを派遣してくれ」。
しかしその直後、無線機は再び沈黙した。ODA574のSOSは届いたのか・・・・。

一方、3000メートル上空のB-52である。キャプテンのティモシー・クロスビー中佐は興奮していた。タクティカル・コーディネータから、命中の報告を受けると、「やったぞ」。クロスビーは、コックピットから立ち上がらんばかりに叫んだ。

しかし、クロスビーの興奮とは対照的に、副操縦士のハリス大尉は冷静に言った。
「キャプテン、地上軍に確認を取りましょう」。
空爆成功の興奮に酔っていたクロスビーにとって、ハリスの落ち着いた物言いは、冷水を浴びせられたようなもので、ハリスに対し、怒りを通り越して憎悪感すら持った。

「よかろう。第3次攻撃は、もっと精度を上げねばならんからな。地上軍でも、司令部でも、どこでも連絡を取り給え」。クロスビーは吐き捨てるように言うと、操縦をハリスに任せ、コックピットを出て、機体後部のレストエリアの簡易ベッドに横になった。
ハリス大尉は、クロスビーの姿が見えなくなると、無線の操作を始めた。

ODA574のSOSを受信したODB570とは、いかなる部隊なのか。
いわゆるODAとは、Operation Detachment Alpha(作戦分遣隊アルファ)の略で、ODBとは当然、Operation Detachment Beta(作戦分遣隊ベータ)の略である。

アフガン戦争初期では、Alpha部隊が主にグリーンベレーで構成され、主に戦闘行為を行うのに対し、Beta部隊は、各軍からエキスパートが派遣され、Alpha部隊の援護をするようになっていた。この援護とは、物資の補給・輸送、負傷者の回収・搬送などである。

つまりODA574は、まさに必要とする部隊と通信を取ることができたのだが、これで一件落着とはいかなかった。アフガンで行われている作戦は秘密作戦である。しかも、表向きは北部同盟とタリバン政権との戦いであり、アメリカ軍は影で活動することが基本方針となっていた。

現地で活動するODAには、広範囲な自由度を与えられているように見えるが、本当のところは、かなり制約されていた。

戦場のどこにCNNなどのテレビ局がいるか分からない。アメリカ軍は、アメリカ軍とタリバン軍と戦っている画が、世間に流布されることを極端に恐れていた。

当時のアメリカ首脳が危惧していたのは、キリスト教VSイスラム教の図式なることであり、できるだけアメリカ軍の行動を「隠蔽」しようとしていた。極言すれば、何か行動を取るためには、必ず上級司令部の許可が必要だった。

ODA574を含む、在アフガニスタン米軍の悪夢が始まった。


次回更新は、8月29日「セクショナリズム」です。ご意見・ご感想をお待ちしております。
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Posted by 友清仁  at 07:01 │Comments(0)Story(物語)

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