2012年11月07日

死に値すべきもの The worth dying for 4

一方のタリン・コットである。B52の空爆は収まったものの、空爆の混乱をついた山賊・馬賊の攻撃を受けていた。カザフ空挺連隊の予備役大佐のアシモフは、ドラグノフのスコープをのぞき、街の西側のはげ山を舐めるように見ていた。

陽がアフガンの山に隠れ始めた。あたりが薄暗くなり、頬にあたる風が冷たくなってきた。山賊・馬賊の連中は、攻撃を仕掛けてきてはいるが、積極的な攻撃ではない。アシモフは焦りを感じ始めていた。

馬を走らせ、街に近づくと見せて、こちらの射程ギリギリで、サッと引き上げる。機関銃も撃ってくるが、散発的であった。アシモフは、近づく敵の一瞬の間合いを感じて、愛用のドラグノフで狙撃するが、なかなか命中しない。希に命中すると、馬賊たちは、さらに後退し、AK47を射撃する。

「奴らは、夜になるのを待っている」。アシモフはつぶやいた。夜討ち朝駆けは、奴らの常套手段である。夜になれば、スコープが使えず、アシモフの狙撃も効果がなくなる。しかも、馬賊の奴らは、まさに馬に乗っているため、移動する際にまったく音を出さない。

夜陰にまぎれ街に接近し、突如、攻撃を開始する。さほど訓練を受けていないタリン・コット防衛軍の兵士など、ひとたまりもないだろう。再び総崩れになる。日が暮れる前に決着をつけたい。アシモフは、馬賊の姑息な戦術に腹が立った。


ODA570のCH46は、カンダハルに最も接近した。右方向へ数十キロも行けば、カンダハル上空に到達するだろう。このあたりから、山や谷が多くなってきた。

リノ基地の砂漠地帯で高度100メートルであったので、渓谷地帯に入って、山の尾根の上を飛ぶと、実際の高度は、30メートルほどだろう。アフガンの山は、木がまばらに生えるはげ山である。CH46が尾根付近を通過すると、砂塵が舞い上がった。

陽が山裾に隠れ、あたりが薄暗くなってきた。バイザーのスモーク越しでは、地形がよく見えなくなってきた。グレック大尉とシュワイン少尉は、バイザーを上げた。

やがて、遠くから、パン、パン、パンと、安っぽいクラッカーが鳴る音が聞こえた。
「さっそく、パーティのお出迎えが来たようだ」。パイロットのグレック大尉は、つぶやいた。

薄暮の渓谷を、2機のCH46が突っ切ってゆく。2機は、尾根を一つ越えた。すると、今度は、左右両側に山肌が続く、あたかも通路のような地形に変わった。

「右舷、タリバン車両、ファイア」。右舷のガンナー、マルティネス軍曹が叫ぶと、M240Bが火を噴いた。猛烈な射撃音と共に、機内には、空薬莢が飛び散る金属音が響く。ほぼ同時にタリバンの車両からも射撃が始まった。

CH46とタリバン車両とは、ほぼ水平で、距離も50メートルそこそこしか離れていないだろう。カン、カン、カン、とCH46の外壁をタリバンの銃弾が叩いた。CH46は、防弾が施されている。小銃弾程度なら十分に防ぐことができる。

ヘリがタリバンを振り切って、戦闘は一瞬で終わった。タリバンはなおも射撃しているが、距離がどんどん開き、やがて銃声も聞こえなくなった。ガンナーのマルティネス軍曹は、「クソ、はずした」。と軽く言ったが、内心、タリバン兵の移動目標を正確に捉える命中精度の良さに驚いていた。

左右に山が続く。これから、この山の尾根の数カ所から水平射撃をされるかもしれないことを考えると、マルティネス軍曹をはじめとする、格納エリアにいるPJたちには、まさに死の回廊を進んでいるように思えた。


次回更新は、11月14日「死に値すべきもの」です。お楽しみに。
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Posted by 友清仁  at 07:03 │Comments(0)Story(物語)

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