2012年12月05日

死に値すべきもの The worth dying for 8

ロニーと、アシモフ、アレックスの3名は、右翼・左翼のポジションについた。その間、馬賊たちも盛んに射撃してくるのだが、こちらの狙撃を恐れて、なかなか近づいてこない。
「始めろ」。アシモフは、そばのアレックスに、無線でロニーに伝えるように指示した。

囮のロニーは、深呼吸しながら、ドラグノフに初弾を装填した。そして、命中は期待できないものの、敵のマズルファイアに向けて、1発撃った。
どおんっと、7.62ミリ弾の射撃音とマズルファイアが起きる。辺りは一瞬だけ明るくなった。ロニーは、すぐにその場にうずくまり、敵の銃火に備えた。

予想通り、ロニーの周りの壁や窓に、敵の銃弾が集中して、表現のしようもないほどの大騒ぎになった。

馬賊たちというか、アフガン人は、狙って撃つということをあまりしない。大抵、敵のいそうな方向へフルオートで撃つ。アフガン人の戦闘というのは、そのフルオートの勢いと勢いのぶつかり合いであり、先に勢いに負けたほうが、戦闘の敗者となる。

そんなアフガン人でも、ごく希に狙って撃ってくる奴がいる。そうゆう奴は、恐ろしい程の精度で撃ってくる、超一級のスナイパーであり、ロニーは、かつて、ヘルメットを棒の先に引っ掛けて、囮としてフラフラと漂わせていると、そのヘルメットに幾筋も銃弾が命中したことがあった。

アシモフには、500メートル先で、ドラグノフのマズルファイアが見えた。すぐにロニーのSR25を構える。アレックスもナイトビジョンのスイッチを入れ、同様に構える。一瞬後、馬賊のAK47の咆哮が始まった。

AK47のフルオートで1マガジン30発を撃ち尽くすのに、わずか3秒である。AKは、3秒間は、けたたましく鳴き咆哮するが、すぐに沈黙する。しかし、アシモフは、その間に敵の位置を把握し、トリガーを絞る。

SR25には、サプレッサーが取り付けられているため、パシッ、パシッという、空き缶を踏み潰したような音だけがする。アレックスは、ナイトビジョン付きスコープを通して、アシモフの撃った方向を見ている。スコープの中には、馬賊が数人いるのがはっきりとわかる。

そのうちの一人が、もんどり打って斃れる。アシモフは、続けて撃つ、再び、もう一人が斃れる。「命中、命中」。とスコープの中の馬賊が斃れるたびに、アレックスはつぶやく。アシモフは、ひとしきり撃ち終えると、「報告しなくてもいい。お前もどんどん撃て」。いつの間にかアレックスは、アシモフのスポッターの役割をしていた。

アシモフの言うとおりである。こちらはナイトビジョンで敵の位置がわかるのだ。ロニーの囮射撃に構わず狙撃できる。アレックスは、サッと戦場を見渡した。およそ、50人ほどの馬賊が、次のロニーの囮射撃が起こるのを、息を殺して待っているのが見える。

その内の一人を撃つ。そいつはその場にドサッと斃れる。そばにいたもう一人は、仲間がやられたことに気がついていない。そして、もう一人を撃つ。そいつも膝をついて、地面に顔面を打ち付けるように斃れる。アレックスは、軽く息を吐いて、スコープ越しに次の獲物を探した。

再び、ロニーの囮射撃のマズルファイが光る。愚かな馬賊どもは、その光に向かって、一斉射撃をする。それを目印に、アシモフが撃つ。一人、また一人と、馬賊どもは倒れてゆく。一面が暗闇であるせいか、奴らは、仲間が次々とやられていることに気がついていない。

そんなことが、2度、3度と繰り返された。こちらの狙撃も命中しない時もあり、敵兵の数が、効率的に減っているわけではないが、敵は狙撃を恐れて、突入してこない。五分の戦いをしているといっていい。

アレックスは、次の獲物を探した。敵も狙撃を恐れて、窪地や岩陰に隠れるようになって、思うように敵を見つけられなくなっていた。しかし、敵はこちらの位置に気がついていないうえに、こちらは、敵が丸見えである。焦ることはない。

しばらく敵を探していると、岩の影から、見慣れたひし形が見えた。間違いなくRPG7の弾頭である。
「マズイ、こいつを倒さねば・・・」。しかし、スコープから見えるのは、弾頭だけで、肝心の射手の体は見えない。アレックスは焦った。

次の瞬間、ロニーの囮射撃音が起こる。それとほぼ同時である。スコープ内のひし形を中心に、画像が真っ白になる。アレックスは、スコープから目を外すと、RPG7の弾頭が独特の黄色い発射炎を吐き出しながら、ロニーのいる方向へ進んでゆくのが見えた。

アレックスは、無線のPTTのスイッチを思いっきり押して叫んだ。「ロニー、逃げろ!」


次回更新は、12月12日「死に値すべきもの」です。お楽しみに。
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Posted by 友清仁  at 07:00 │Comments(0)Story(物語)

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