2013年10月02日

キャンプ・アルファ Camp α 4

再びアボタバードである。裕福な乞食?であるチャーリーが忽然と消えたことは、街でもミステリーのように騒がれた。当然のことながら、この手の噂は、その地の統治者の耳にも入る。

この地の統治者・・・、正確に言うと国家権力保持者は、ナセル・アブドルザラク・アブドルバクィである。ナセルは、かつてアルカイダの幹部であったことはすでに述べた。それがどうゆう手段かは分からないが、現在は、アボタバードを含む一帯の警察署長のような役職についている。

それゆえ、ビンラディンをアボタバードに匿い、あの屋敷に関するわずかな噂でさえ握りつぶした。あくまで警察署長であるナセルの権限で、ビンラディンを保護しているのである。おそらく、州知事やパキスタン大統領などは、自国にビンラディンが潜伏しているなど、夢にも思っていないだろう。

しかし、ナセルは、アルカイダの幹部でありながら、アルカイダに忠誠心もなければ、ビンラディンに対しても、何の感情もなかった。対ソ連戦で頭角を現したことから、いつの間にかアルカイダに組み入れられて幹部となり、タリバン滅亡後はイラクへ行き、イラク義勇兵の部隊長(少佐)になった。フセイン政権が倒れると、パキスタンに移り、現在の地位を得た。

今までの人生や生活は、すべて自分で切り開いたのであり、考えてみれば、ナセルは、ビンラディンから何の恩も受けていないし、匿う義理もない。

パキスタンで警察署長になったとき、これで自分は、安穏とした余生を送ることができると安心したくらいである。そこへ、かつての君主?であるビンラディンが舞い込んできた。成り行き上、アボタバードに匿った。

当時のビンラディンは、アフガンを追われた流亡貴族とはいえ、まだ余力があるようで、アボタバードで屋敷を世話してやっただけで、ナセルは、多額の財宝を受け取った。ビンラディンは、トラボラの洞窟に、まだ相当な財宝を持っているようであった。

以来、ビンラディンとその一家に便宜を図るたび、「心付け」を受け取っていた。メルセデスの新車を買った金も、乞食のチャーリーに施した金も、すべて、ビンラディンから出た金であった。しかし、最近は、その心付けも少なくなってきた。

そのビンラディンをかくまっているアボタバードで、奇妙な噂が立った。滑稽話をして小銭を稼いでいた乞食が、実は大金持ちで、街の宝飾店で一番高いダイヤの指輪を買った途端、行方知れずになったという。

普通の人が聞けば、単なるミステリーに過ぎないが、アボタバードの事情を知るナセルには、ピンときた。
「その乞食は、アメリカのスパイだ。そして、ビンラディンがあの屋敷にいることをつきとめた・・・」。
すぐに、部下に命じて乞食を捜索させたが、手がかりすら掴めなかった。すでに国外に脱出してしまっているだろう。

この事実を、ビンラディンに伝えるべきだろうか?いや、止めておこう。これ以上、奴に深入りするのは危険だ・・・。

次回更新は、10月9日「キャンプ・アルファ」です。
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Posted by 友清仁  at 07:00 │Comments(0)Story(物語)

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