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Posted by ミリタリーブログ  at 

2011年03月17日

タクール・ハーの戦い Takur Ghar 16

お詫び
私のつまらぬ感傷のため、本ブログを楽しみにしていただいた方々の期待を裏切るかたちとなり、本当に申し訳なく思います




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「アメリカ軍は、エサに食いついたぞ。岩場のやつらは放っておけ。やつらを助けに来る援軍を叩き潰すのだ」。アルカイダ司令官ハザラト・アリは言った。

山頂付近に展開した大小のタコツボ陣地から、エスカーノ大尉の部隊およびSealsの情報が、無線や伝令でアリのもとへ頻々と集まってきた。「弾丸のストックなど気にするな。どんどん使え」。

アリも兵士たちも生還など考えていない。一人でも多くのアメリカ兵を殺すことに、残りの生きる時間を費やすつもりである。

岩場に隠れているセルフ大尉からは、正面のタコツボ陣地から各タコツボへ伝令が走っているのが見えた。「クソッ」。セルフは拳を地面にぶつけた。自分たちのために、味方が危険に晒されているのである。

セルフは、再び無線で、「私の正面にあるタコツボに敵司令部があるようです。そこから各陣地に命令が飛び、敵は組織的な戦闘をしています。司令部を叩かない限り、状況は変わりません。山頂を空爆してください」。

ガルディーズ司令部のハーゲンベック将軍は、正面のスクリーンを凝視していた。空爆するべきか迷っているようである。F-15に搭載されているMK84-500ポンド爆弾の破壊影響範囲は400mであった。セルフたちから敵タコツボまでわずか50メートルである。誤爆の危険性は十分にある。かといってセルフ大尉たちを退避させることもできなかった。負傷者が多すぎるのである。

「爆破範囲を考えれば、誤爆の可能性がありますが、誘導装置を使った場合の半数必中界は3mです。セルフ大尉たちが岩場に隠れていれば、誤爆しても損害はありません」。
司令部の航空参謀が言った。ハーゲンベックは、航空参謀をしばらく見つめると、無線のハンドマイクのスイッチを入れ、「セルフ大尉、貴官の進言を容れて、山頂を空爆する。だが誤爆の危険性は十分にある。岩場から絶対に動くな」。

数分後、タクール・ハー山頂に2機のF-15が飛来した。パイロットは、山頂のCCT、ヴァンス軍曹からの座標を爆弾の誘導装置に入力するとすぐに爆弾を放った。

2発の500ポンド爆弾が山頂付近に着弾し、大爆発を起こした。岩場のセルフたちは、爆発で鼓膜を破られないように耳を覆い、うずくまっていた。爆発の直後、大量の土砂や雪がセルフたちに振りかかかったが、岩のおかげで爆風と熱に晒されずに済んだ。

降りかかる土砂が落ち着くと、すぐにセルフ大尉は、敵のタコツボを見た。タコツボ陣地の右側の地面が大きくえぐれ、地表が現れていた。しかし爆弾は、タコツボからわずかにずれていたようで、陣地にさほどダメージを与えていないようであったが、アルカイダ戦闘員のほとんどが鼓膜を破られたようで、ヨタヨタと歩いている姿が見えた。「爆弾は、陣地に命中せず。しかし敵戦闘員に影響大」。セルフは司令部に報告した。

突然の空爆に驚いたアルカイダは、秘蔵のソ連製対空砲を空に向けて撃ち始めた。しかし、旧式の対空砲で音速の爆撃機を捉えられるわけもなく、闇雲に空に向けて撃っているだけであった。

タコツボの最深部にいたアリは、かろうじて鼓膜を破られずにすんだ。周囲が静まると、対空砲の激しい咆哮が聞こえた。

「対空砲をやめさせろ」。アルカイダ司令官ハザラト・アリはすぐにタコツボから飛び出して怒鳴ったが、空爆で鼓膜を破られている部下には聞こえなかった。アリの作戦では、対空砲はあくまでチヌークなどのヘリをたたき落とすためのものであり、防空に使うつもりはなかった。

しかし、アリがどんなに怒鳴っても、耳の聞こえない彼らは、ぽかんとアリの顔を見るばかりで、誰一人として対空砲へ伝令に走らなかった。アリは、自ら伝令に走らねばならなかった。

対空砲の発射音を聞いたセルフ大尉は、すぐに空に向けて対空砲が火を噴いていることを確認し、「将軍、敵は対空砲を撃っています。位置が分かりますか?」。と無線で言った。ハーゲンベック将軍は、「はっきりと分かった。もう1度、爆撃する。そこを動くな」。

「ヘルファイアミサイルのレーダーを熱感知に切り替えて発射せよ」。司令部の航空参謀は、無人偵察機プレデターのオペレータに命令した。

次回更新は、3月23日 「タクール・ハーの戦い 17」です。


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Posted by 友清仁  at 06:47Comments(2)Story(物語)