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Posted by ミリタリーブログ  at 

2012年03月28日

タリン・コットの戦い 10 Battle of Tarin Kowt

タリン・コットの戦火を西側に見ながら、ラービフの放った別働隊が、山岳地帯の険しい道を進んでいる。手にはAK47をはじめRPG-7などの重火器も携行しているものの、その足取りは素早かった。

「アメリカ人よ。そろそろ奴らも動き出すぞ」。
カザフ空挺大佐のアシモフは、ペティソリー大尉に顔を近づけて言った。
「見ろ。奴らは、めくら撃ちばかりで一向に攻めて来ない。何か仕掛けが出来上がるのを待っているんだ」。
アシモフ大佐は、相変わらず銃火の激しい南側の戦線を見ながら続けた。

「仕掛け?」。ペティソリーが聞き返すと、
「そうだ。奴らのあの『めくら撃ち』は、その兆しだ」。アシモフは答えた。ペティソリーは、過去の戦いで、タリバン軍の戦闘方法というか、奴らの『めくら撃ち』はなんども見てきた。すぐに敵の戦線を見たが、アシモフの言う『めくら撃ち』の違いが分からなかった。
ともかく、「どんな仕掛けが考えられますか?」と、再び聞いた。

「おそらく、今ごろ、奴らの別働隊が街の西側か北側に廻って、奇襲の準備を整えているだろう。こっちもそれに備えねばならん。30名ほど俺に貸せ」。
なるほど、アシモフの言うとおりである。ここで背後から攻撃を受けたら、防衛軍は大混乱を起こし崩壊してしまう。

しかし、アシモフの求める30名の兵力はすぐに出せる兵力ではなかった。奇襲を受けた防衛軍は、退散してしまった兵士や負傷者などが多く、おそらく現在のところ、100名そこそこで、ほぼ全員が南側で戦っている。そこから30名も引き抜かれたら、主戦場が崩壊してしまう。

「30名は無理です」。ペティソリーが答えると、
「ならば、お前があのバケモノ銃をもってついてこい。お前の狙撃技術は最高だ」。
アシモフは、戦線にあるバレットM82A1 (対物ライフル)を指差して言った。アシモフ大佐とペティソリー大尉は、闇夜の街の北側に向けて移動した。


一方、ハミッド・カルザイである。彼は何をしていたのか?もちろん彼は戦闘員ではないため、戦闘には参加していない。防衛軍の司令部である警察署の2階にいた。CIAのキャスバーが、カルザイの護衛のために、同じく2階の会議室にいた。

会議室は、小さなランプがほのかに灯いていた。ランプの灯の向こうで、カルザイが額をさすりながら、瞑目しているのがキャスパーには見えた。
「何を考えている?」。
キャスパーは、カルザイに尋ねた。しかしカルザイの姿勢はそのままであった。

街の南側では、銃声が止むことはない。ひょっとすると、タリン・コットの街は敵の手に堕ちるかもしれない・・・。キャスパーは、ぼんやり思った。そうなった時のため、すぐに撤退できるように秘密書類の処分を今のうちにしておこうと、会議室を出た。


「お頭、街の北側に着きました。いつでも攻撃できます」。街の北側に回った別働隊の隊長から無線が入った。
「分かった。まず、でかい奴を1発撃て。敵が驚いたところを一気に攻める」。ラービフは指示を出した。
「お頭がRPGを撃てとのことだ。どこでもいいからぶっ放せ」。すぐにRPG射手が砲を構えるとトリガーを引いた。凄まじい轟音と共に、再び黄色い火炎が光った。

「やられた!」。
ペティソリー大尉は、アシモフの言うとおりになったことを直感した。そして次の瞬間、RPGの弾頭が火炎を吹きながら頭上を飛行していくのを見たが、ペティソリー大尉は、弾頭が自分を狙ったものではないことに一瞬だけ安堵し、その行先を追った。

しかし、その行き先が、ペティソリーの顔を蒼白とさせた。RPGの弾頭は頭上を通過すると、そのままぶれることなく防衛軍の司令部が置かれている警察署の、ぼんやりとランプが灯る2階部分に命中したのだ。警察署は大爆発を起こした。


次回更新は、4月4日「タリン・コットの戦い」です。お楽しみに。
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Posted by 友清仁  at 07:01Comments(2)Story(物語)