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Posted by ミリタリーブログ  at 

2013年07月17日

CIA長官 レオン・パネッタ  Leon Panetta 5

謎の衛星携帯電話の持ち主が、アボタバードの屋敷に出入りしていたタレクであることが分かると、CIA工作員に加え、NSC(National security council・・・国家安全保障局)のスタッフも、タレクの尾行を行った。

タレクは、絶えず移動していた。その行動範囲は、主にアフガニスタンとパキスタンの中小都市を結んでおり、その都市にある、宝石商や不動産などの会社に出入りしていた。おそらくその会社が、アルカイダの拠点であり、資金調達の手段なのだろう。

タレクのあとを追って、それらの拠点が分かるたび、CIAは、工作員を1人づつつけ、電話などを盗聴した。その数は、驚くべきことに200箇所にもなった。

あまりの多さに、工作員が足りなくなり、CIAの内勤スタッフでさえも、パシュートゥ語などが不十分にもかかわらず、現地に派遣された。

これには、CIAおよびNSCの各部署からクレームが出たが、カポスは、以下のように反論した。
「物事には、80パーセントの完成度で良いものもあれば、100パーセントでなければならないものもある。99パーセントでもダメだ。ビンラディンの追跡は、まさに100パーセントの精度が求められるものだ」。

小さな拠点をいくつも作り、少しずつ資金を集めていたのだろう。また、かつてのタリバン勢力に属していた者は、比較的裕福層が多い。宝石や不動産の会社ならば、出入りしていても不自然ではないし、おそらく、そこで資金をアルカイダやビンラディンに「寄付」していたにちがいない。

タレクを追跡していると、もう1つ特徴があることがわかった。奴が建物から出てくると、おそらく資金を回収したのだろう、その金で、保存の効く缶詰などの食料品や衣類を、大量に買い込むのである。

なるほど、現金を、金融機関を使って送金すれば、すぐに足がついてしまう。また、大量の現金を持ち歩くのも危険だ。そこで生活物資を購入して、アボタバードに送っているのだろう。

またその輸送も、アフガン-パキスタンには、Fedexのような運輸会社があるわけではない。いくつもの業者が中継して輸送する。1個口で送った荷物も、中継点で分割されることがあり、こちらも追跡が難しくなる。

「どうりで、今まで足がつかなかったわけだ」。
ラングレーのCIA本部で、パネッタとカポスは、顔を見合わせて、敵の緻密な行動に感心した。

「さて、これからどうする?」。パネッタは、カポスに尋ねた。
「1つは、タレクが送った荷物です。多分、アボタバードの屋敷に送っていないでしょう。屋敷の近くの倉庫か何かに保管して、必要最低限の量だけ、屋敷に運び込んでいるはずです。それらを押さえて兵糧攻めにする」。
「もう1つは、奴らの集金ネットワークの全容を突き止め、アフガン・パキスタン政府に圧力をかけて、そのネットワークを潰す・・・・」。

「大掛かりなものになるな・・」。パネッタはつぶやいた。
「南米の麻薬王を捕まえるのとは訳が違います。中国のことわざに、「至らざるは、無きが如し」というのがあるそうです。「完璧でないものは、存在しないのと同じだ」、という意味です。ここで、手を緩めては、今までの苦労が泡と消えます」。カポスは答えた。

「わかった。大統領と国務長官に相談する」。パネッタは、そう言うと、執務室から出て行った。


次回更新は、7月24日「シールズ・チーム6」です。
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Posted by 友清仁  at 07:00Comments(2)Story(物語)