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Posted by ミリタリーブログ  at 

2012年08月01日

誤爆 Friendly bombing 6

B-52に搭載されているAGM-69 SRAM単射程対地ミサイルを、タリン・コットに向けて発射する時間が刻々と迫っている。

地上からの報告がない。B-52からも地上へ何度も戦果判定を求める無電を何度も打っているが、全く返事がない。

「キャプテンからタコ(タクティカル・コーディネータ)へ。対地レーダーを作動させ、地上の様子を知らせろ」。B-52機長、ティモシー・クロスビー中佐は、命令した。

タコが対地レーダーを作動させると、タリン・コットの街の中心部のJ-DAMを投下した地点を中心に大きな熱源を捉えているのが分かった。その中心に向かって、小さな光点が10個ほど、進んでいるのもわかった。

タコは, そのダイジェストをコックピットのクロスビーとハリスへ送った。2人のヘルメットのバイザーにその情報が映る。
「この小さい奴が敵に違いない。ヤツらを粉砕する。キャプテンからタコへ。AGM-69 SRAMの1番から4番諸元入力。すぐに放て」。


一方、地上のODA574のジェイスン大尉、そしてタリバン軍のラービフは、次第に大きくなるB-52のジェット音を聞いていた。

「お頭、爆撃機です。退避しますか?」。部下のこの問いに、「いや、このままあの炎上している建物まで突っ切る。お前らは左右に撃ちまくれ」。

ラービフには考えがあった。おそらくミサイルは感熱ホーミングだろう。エンジンの熱を追ってくるはずである。このまま街の入口に留まっていれば、間違いなくミサイルが命中してしまうが、あの炎上している建物に接近し、直前で切り返せばミサイルは建物に吸い込まれるに違いない。

誤爆、タリバン軍の突入、そして再び誤爆。タリン・コット防衛軍の混乱は極点に達するだろう。アメリカ軍はどうだか知らんが、タリン・コット軍は再び総崩れに決まっている。所詮、烏合の衆だ。
「クソガキども、突っ込むぞ!」。ラービフは部下に怒鳴った。


「まだ、繋がらないか?」。ジェイスン大尉は、CCT3人を急かした。B-52の爆音が次第に大きくなってきている。

こんな時に限って、付近に航空機が1機も居ない。海兵隊のF-18ですら、交代なのか空中給油しているのか連絡が取れない。もっとも上空にF-18がいれば、すぐにB-52へ誤爆であることを知らせるはずである。悪条件とは重なるものである。

B-52の爆音とともに、AK47の射撃音が鳴り響いた。タリバン軍の攻撃が開始されたらしい。
「防衛軍、配置に付け!」。ジェイスンは命令した。しかしすぐに、アフガン兵下士官が「大尉、敵はすでに街に侵入しています。左右に撃ちまくりながら、この司令部へ突進しています!」。

誤爆の混乱で、見張り兵も消火活動に参加してしまったのか、それとも逃げ失せてしまったのか・・。ジェイスン大尉は、司令部の木製テーブルを思いっきり拳で叩いた。


「撃て!撃て!雑兵の類を深追いするな、アメリカ兵を殺せ」。ラービフは兵士に激を飛ばす。
その突撃の勢いは凄まじく、ラービフが「烏合の衆」と嘲笑するタリン・コット軍は、組織的な射撃などできるはずもない。数人の兵士が応射するが、一瞬でラービフの兵士たちの弾丸でズタズタに引き裂かれる。

それを見た兵士が恐れをなして背中を見せて逃げる。その背中をタリバン兵のAK47の銃弾が容赦なく串刺しにする。

防衛軍は、タリバン軍の進路を塞ごうと通りに車両を並べて、バリゲードを作り待ち構えていた。
それを見たピックアップトラックの荷台のタリバン兵は、RPG-7をかまえ、バリゲードに向けてロケット弾を発射する。バリゲードが吹っ飛び、防衛軍が蜘蛛の子をちら下のように逃げる。

タリバンがその背中を撃つ。ラービフの一軍は、防衛線を次々と突破して、司令部へ近づいてゆく。もはや戦闘というより一方的な虐殺である。


「AGM-69 SRAM、1番から4番発射!」。上空3000メートルのB-52に座乗するタコは静かに言い、画面に映る1から4までの「ON」ボタンを押してゆく。一瞬後、AGM-69 SRAM対地ミサイルがタリン・コットの「敵」に向けて飛翔を開始した。


次回更新は、8月8日「誤爆」です。お楽しみに。
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Posted by 友清仁  at 07:00Comments(0)Story(物語)