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Posted by ミリタリーブログ  at 

2012年06月27日

誤爆 Friendly bombing

B-52パイロット、ティモシー・クロスビー中佐は、操縦桿をぐっと斜め前へ傾けた。B-52の巨体が大きく傾き、下降し始めた。

SOS発信源を中心に、半径10キロ程度の大きな円を描きながら、ゆっくりと旋回する。動作が緩慢になるのは、大型機ゆえ仕方がない。数分が経過して、高度が8000mまでに達したとき、再びSOS信号を受信した。

「どうやら、下では相当、切羽詰っているな」。クロスビーはつぶやいた。しかし、この2度目のSOSは、応援を要請する悲鳴ではなく、たんに、ODA574メンバーがSOS信号の練習をしていたに過ぎない。

「急がねばならん」。クロスビーは、副操縦士のハリス大尉に言った。「急降下を開始する。総員、体勢を整えよ」。クロスビーは、機内の部下に命令した。

クロスビーは、操縦桿をさらに傾けた。今までは、大きなゼンマイがゆっくりと回るように旋回し、地表が遥か遠くの頭上斜め20度位に見えていたものが、操縦桿をさらに傾けたことで、あたかもドリルが穿孔するように、地表もコックピットの前面に現れた。

「高度7000・・・・6500・・・・6000・・・」。ハリスが高度計を読み上げる。相当なペースで降下している。降下というよりは、錐揉み飛行、見方によっては墜落だろう。長年、クロスビーの伴侶を務めてきたハリスも顔が引きつった。

「高度5000」。ハリスは高度を読み上げたが、クロスビーは、降下をやめない。3000までいくつもりか・・。数十分が過ぎた。「高度3500」。ハリスが叫ぶと、「よし」。とクロスビーは叫び、ようやく操縦桿を戻した。その時、再びSOS信号が入った。

B-52の機内の誰もが、3000メートル下で友軍が攻撃を受けていると思っている。機体が水平になると、すぐに、「キャプテンからタコへ。J-DAMの諸元を入力せよ」。クロスビーは命令した。すぐに「諸元入力完了」。と返事が返ってきた。

一方、地上のODA574である。
チーム首脳のフォックス少佐、ジェイスン、ペティソリー大尉以外のメンバーは、司令部のホテルを出て、それぞれの作業を行なっていた。

CCTのアレックスは、タリン・コット自警団に行軍ドリルを指揮していたのだが、その時、耳を覆いたくなるようなジェット音が頭上から聞こえた。ドリル指揮の声が、自警団に聞こえないほどである。「うるさいな!」。アレックスが空を見上げると、B-52のシルエットが雲の隙間から小さく見えた。

いつもは、海兵隊のF-18が上空を警戒し、時々、それが急降下してきて、(多分、暇を持て余したパイロットが急降下の訓練でもやっているのだろう)、轟音を響かせることがあった。今度もそれかと思ったが、機体はB-52であった。いずれにせよ、しばらくすればどこかへ飛び去るだろう。アレックスはドリルを続けた。


その時、B-52の機内である。「タコからキャプテンへ。J-DAMの諸元入力完了。いつでもリリース(投下)できます」。この部下からの報告に、「これから高度3000まで降下する。絶対に外すなよ」。クロスビーは言った。

やがてその時が来た。
「高度3000。J-DAM、リリース」。タクティカルコーディネータは静かに言った。


次回更新は、7月4日「誤爆」です。お楽しみに。
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Posted by 友清仁  at 07:02Comments(3)Story(物語)