スポンサーサイト


上記の広告は1ヶ月以上記事の更新がないブログに表示されます。
新しい記事を書くことで、こちらの広告の表示を消すことができます。  

Posted by ミリタリーブログ  at 

2012年02月22日

タリン・コットの戦い 6 Battle of Tarin Kowt

新月の夜が来た。あたりは、足元さえ見えないほどの漆黒の闇である。遠くの眼下には、タリン・コットの街の灯が見える。攻撃など受けるはずもないという、平和な灯であった。

「始めろ」。小高い丘の上から、タリバン司令官のラービフは静かに言った。
ラービフの攻撃開始命令からきっかり1分後、タリン・コットをぐるりと囲む、攻撃軍のシェルターから、一斉に迫撃弾が街に撃ち込まれた。迫撃弾の軌跡がきれいな弧を描いて、タリン・コットの街に吸い込まれて、やがて激しい轟音と火柱が上がった。

突然の砲撃は、安心しきっていたタリン・コットの市民をパニックに陥れた。炎を見て泣き叫ぶ婦人、火を消そうと走り回る男たち、そして我先に逃げようとする車で、街のメインストリートは混乱を極めた。

ODA574のメンバーも、突然の砲撃に隙を突かれた感があったが、さすがに特殊部隊である。ペティソリー大尉は、すぐに冷静さを取り戻し、ODAの司令部である警察署に走り、常駐している自警団50名に指示を出した。

「自警団を招集しろ」。「自警団は、5名ずつに別れ、消火活動の指揮を取れ」。「敵は、街の灯りを狙って撃ってくる。発電所の電源を落とせ」。自警団のアフガン人は、各地へ散った。

やがて、ODA574のメンバーも警察署の司令部に集まってきた。相変わらず迫撃弾が撃ち込まれている。「敵は、街の南側に多数の迫撃砲陣地を作って砲撃してきている」。CIAのキャスパーが言うと、ジェイスン大尉は、「上空のF-18に空爆を要請しろ」。CCTのウェスに命じた。

「タリン・コットから、F-18飛行隊へ。街の南側で火遊びしているクソガキ共に、お灸をすえてやれ」。ウェスは発信した。海兵隊のF-18数機が、タリン・コットを占領してからずっと、夜間であっても、上空を警戒にあたっている。数分で空爆が実行されるだろう。

タリバン司令官ラービフは、砲撃で起こった火災をじっと見ている。「そろそろだな」。足元で旧ソ連軍の対空車両、ZSU-23-4 「シルカ」から取り外した対空レーダーを操作している兵士に言った。



ちなみに、このZSU-23-4 「シルカ」は、世界初の対空レーダー付の対空戦車である。高度2.5 kmまでの航空機を攻撃でき、低高度を飛行する航空機にとって大きな脅威となった。

しかし対空レーダーが1基のみで、捜索用と追跡用が分離されておらず、1基のレーダーで両方の役目を兼任させねばならないため、特定目標との交戦中に別の目標を探知するのはほぼ不可能であった。ゆえに、ムジャヒディンたちは、レーダーだけ取り出して、簡易対空レーダーとして使っていることが多い。



対空レーダーのモニターに斑点が映った。「奴らが来ました」。兵士は報告した。「迫撃砲、撃ち方止め。シェルターに隠れろ」。ラービフは無線に怒鳴った。

直ちに戦闘員は、迫撃を止め、岩場を利用した促成のシェルターに身を隠した。あたりは今までの轟音が嘘のように静まり返った。しばらくすると、代わりに、空気を切り裂くようなF-18のジェット音がタリン・コットの山々に鳴り響いた。

低空域に入ったF-18のパイロットは、眼下の状況を見て不審に思った。タリン・コットの火災は見えるが、迫撃砲の火炎が全く見えないのである。「F-18からタリン・コットへ。敵の迫撃陣地が見えない。正確な座標を報告せよ。再度、上昇する」。F-18飛行隊は、轟音を残して5000mまで上昇した。

「奴らが消えました」。レーダーの兵士がラービフに報告した。「よし、迫撃砲、撃ち方始め」。ラービフは再び指示を出した。


次回更新は、2月29日「タリン・コットの戦い」です。お楽しみに。
ご意見・ご感想をお待ちしております。


んで、タリン・コット周辺の動画です。どんな地形かよくわかります。タリバンが隠れるところがたくさんありそうです。



------------------------------------------------------------------------------------------
同人誌も発行しております。こちらもどうぞ。同人誌書店COMIC ZIN通販ページと 虎の穴通販ページに飛びます。(購入には会員登録が必要です。)



私の訳書(共訳・監修)です。よろしかったらお読みください。
画像クリックでamazonへ飛びます。







  


Posted by 友清仁  at 07:02Comments(0)Story(物語)