2010年06月23日

ターニングポイント Turning point

「残り4分、3分、30秒、15秒・・・」空軍の戦闘管制 (CCT)士官は、冷静にカウントダウンを始めた。1発のGBU-32 JDAM(直接攻撃弾)が、上空で待機していた海兵隊のホーネットから投下され、城塞の建物の1つに命中し、大爆発が起こった。続けて、6発が投下され、タリバン兵が集中している城塞の南東部は、火の海となった。

突然の爆発に、今までドスタム軍を圧倒していたタリバン兵は、すぐに戦意を喪失し、狭い城内を逃げ始めた。ある者は、西門に向かって走り、またある者は、東門に殺到した。通路で転んだ者は、後から来る者に容赦なく踏み潰され、圧死した。ある者は、「裏切り者が出た」と叫び、さっきまで共に戦っていた同胞に向けて発砲し、まさに阿鼻叫喚の有様となった。

この混乱の中で、かろうじて城外に脱出できた者も、ほとんどがドスタム軍に捕殺された。まさに空爆は、この戦闘のターニングポイントとなった。

タリバン兵の混乱を脇に、クリス曹長の部隊は、暗視ゴーグル越しに城内を捜索した。誤爆・誤射を避けるため、クリスたちは、ディストレスマーカライトを肩につけている。この点滅を欧米の軍関係者が見れば、友軍だと分かるはずである。

空爆が開始されてから30分ほど経過し、クリスは、デイブたちを見つけられないことにあせりを感じ始めていたとき、イギリスSASの隊員が「曹長。あそこに」。と指を刺した。クリスが指の先を見ると、城壁に付随する塔の中ほどから、クリス達がつけているディストレスマーカライトと同じ点滅が見えた。「急げ」。クリスたちは、塔に向けて走った。

塔の階段を駆け上がり、鉄のドアを思い切り開けた。中には、負傷しているデイブとドイツ人テレビクルーがいた。「待たせたな。すぐに家に帰るぞ」。クリスがそう言うと、デイブは、激痛に耐えながら、ニヤリとした。ついでテレビクルー達を見た。次の瞬間、クリスの目が鋭く光った。なんと、テレビクルーは、クリスたちを撮影していたのである。

クリスは、ホルスターからベレッタ92Fを抜くと、カメラマンに向け、「撮影を続けるのなら、あんたらを今すぐここで殺す。カメラをよこせ」。クリスの低い声は、決して脅しではないことは明らかだった。クリスは、テレビカメラをクルーからひったくると、塔の小窓から投げ捨てた。クリスは、負傷したデイブを背負うと、「十分に安全だ。絶対に走るな」。とテレビクルーに言った。

クリスたちは、暗闇の城壁をゆっくりと進んだ。途中、混乱したタリバン兵と遭遇することもあったが、彼らは、クリスたちを見ると、すぐに投降した。26日早朝、無事に城外へ脱出し、救出作戦は成功した。


次回更新は、6月30日 「掃討か?虐殺か?」です。お楽しみに。
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写真は、イメージです。
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Posted by 友清仁  at 07:01 │Comments(0)Story(物語)

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