2010年12月22日

タクール・ハーの戦い6 Takur Ghar 6

ロケット弾が命中したエンジンは、それでも懸命に機能を果たそうと、激しく回転していたが、しだいに回転が落ちていった。右側のガンナー、スビタクに続いて、左側のガンナーのデイヴにも、アルカイダの射撃が集中し、デイヴは、腿を撃ち抜かれた。さらに銃弾は、彼の持っていたサバイバルナイフにも命中し、ナイフは砕け散って、デイヴの体に食い込んだ。激しい痛みに耐えながらも、デイヴは、ミニガンを右へ左へと撃ち続けた。

チヌークの正操縦士のチャックは、ひざに銃弾を受けた。さらに頭部に命中し即死した。チャックは、操縦席にもんどりうち、コックピット正面にチャックの鮮血が飛んだが、副操縦士のグレッグは、まったく動じることなく、すぐに操縦機能を自分に移し、チヌークを懸命に操縦した。
グレッグは、先に来たレーザー03もこんな攻撃を受けたのだろうと思った。

「とにかく、この場を離脱しなければ・・」。グレッグは、エンジンの出力を最大にし、操縦桿を思いっきり引いた。しかし2基のエンジンのうち、1基がすでに機能を停止しているヘリは、どんどん高度を下げていった。「不時着する!総員、ショック対応姿勢をとれ!」。グレックは、背後のレンジャー達に怒鳴った。

グレッグが怒鳴った一瞬後、ヘリに衝撃が走った。機体が地面に接触すると、雪で機体が斜面を滑ったが、すぐに機種の着陸装置が作動し、機体は止まった。グレッグは、自分の14年間のパイロット人生の中で、最悪の状態で最高の着陸ができたと思ったが、背後のレンジャー達には、墜落したとしか思えないほどの衝撃が走った。

機体が止まると、すぐにRPGが飛来し、チヌークの右側のドアを吹っ飛ばした。ロケット弾は、炸裂はしなかったものの、機内の酸素タンクを破裂させ、漏れ出た高濃度の酸素に引火し、機内で火災が発生した。

「重傷者をヘリ中央に運べ!」。レンジャー隊長のセルフ大尉は叫んだ。メディックのドグは、重傷者を中央に引きずり、手当てを始めた。

アルカイダは、ここぞとばかりにAK47を撃ち込んできた。弾は、チヌークの外殻を貫通し、内部の断熱材や防音材は、紙ふぶきのようにあたりに舞った。

「すぐに反撃し、主導権を握らねば・・」。
セルフ大尉は思った。アメリカ軍の歩兵指揮教則では、部隊全体が敵に捕捉された場合は、全力で敵主力に向かい、それを撃滅することになっている。

セルフ大尉は、チヌークの中から敵情を見ると、2時方向の塹壕に敵の大部分がいて、激しく銃撃を加えていることが分かった。また、ヘリから15メートルほど離れたところに、10名ほどが隠れることができる岩場も見つけた。
「あの岩場を足がかりに、反撃を開始する。俺が援護射撃する間に、動ける奴は全力で走れ」。セルフ大尉は、怒鳴った。


次回更新は、12月29 日 「タクール・ハーの戦い7」です。お楽しみに。
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Posted by 友清仁  at 07:03 │Comments(0)Story(物語)

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