2011年02月23日

タクール・ハーの戦い Takur Ghar 13

ホーネットのパイロットから返事があって数秒後、再び耳を覆いたくなるような爆音が鳴り響いた。今度は、爆音だけでなく、ホーネットに搭載されている20mm機関砲の発射音も混じっていた。岩場のレンジャーたちは、機関砲が地面を貫く振動を腹に感じた。

まるでミシンの針がものすごい速さで布地を縫ってゆくように、ホーネットの機関砲は、アルカイダのタコツボに向けて雪と土を巻き上げてすすんだ。その様子をレンジャーたちは全員、岩場の影から見た。

機関砲の雪煙の先にいたアルカイダ兵は、あっという間に肉片となった。腰くらいの高さの木々も根こそぎ吹っ飛んだ。タコツボ内の燃料か弾薬に命中したのか、タコツボから大きな火柱が上がった。すると中から火だるまになったアルカイダが何人も飛び出してきた。体の火を雪で消そうと雪面を転がったが、火は消えず、やがて兵士は動かなくなった。まさに阿鼻叫喚の地獄であった。「すごい・・」。セルフ大尉はつぶやいた。

そんな機銃掃射が5~6回繰り返されると、頭上のパイロットから、「銃弾を使い果たした。これより帰還する。しかし貴隊が攻撃を受けていることを司令部に報告し、すぐに爆撃機を派遣するように要請する」。と無線があった。ホーネットからの連絡は、パキスタン沖の空母カールビンソンを経由してガルディーズの司令部に伝わった。

司令官のハーゲンベック少将は連絡を受けると、レンジャーを救うためにレーザー02という部隊を編成し、夜が完全に明けたことから、付近に無人偵察機プレデターを飛ばすように命令した。

30分後、プレデターがタクール・ガール山山頂付近に到着し、戦場の映像を司令部に送ってきた。チヌークはものの見事に破壊され、その近くの岩場にアルカイダの攻撃を受けているレンジャーたちが張り付いている様子が分かった。

地上のセルフ大尉も、プレデターに気がつき、ヴァンス軍曹に司令部と通信するように命令した。すぐに無線は通じ、今後は、プレデターを中継して司令部と通信ができるようになった。

「セルフ大尉、現状を報告せよ」。ハーゲンベック少将は言った。無線を受け取ったセルフ大尉は、頭上のプレデターを見上げて、「ご覧のとおり散々です。レーザー01で無事なのは、岩場の6名とチヌークの残骸にいるカニンハム軍曹だけです。負傷者多数。しかし負傷の程度までは把握していません。Sealsのニール軍曹は戦死した模様です」。プレデターのカメラが、岩場にズームされたため、司令部のスクリーンにセルフ大尉の顔が大きく映った。

「大尉、困難な状況の中、冷静に部隊を指揮したことを感謝する。現在、優先するべきは、貴官らと負傷者の救出だ。目下、救出部隊をそちらへ向かわせている」。とハーゲンベック少将は言った。

「援軍は危険です。必ず敵のRPGの餌食になる。援軍より空爆で敵を殲滅することが必要です」。とセルフは、スピーカーが割れんばかりに怒鳴った。

しかしハーゲンベックは、「それはできない。敵の位置が近すぎる。誤爆の可能性がある。現在、敵の攻撃は小康状態だ。貴官は、速やかに負傷者をヘリで収容できる位置まで運べ。これは命令だ」。セルフは上空のプレデターをにらんだ。

タクール・ガール山頂に、セルフ大尉とハーゲンベック少将の通信を聞いていた者がもう一人いた。タコツボのアルカイダ司令官ハザラト・アリである。

通常、アメリカ軍の部隊間の通信は暗号化され、傍受されることはないのだが、この通信は暗号化されていなかった。またアルカイダは、ソ連アフガン侵攻時にCIAから提供された旧式の無線機を持っており、暗号化されていない無線は、簡単に傍受することができた。さらに司令官アリは、英語が理解できた。

「アメリカ軍は、エサに食いついた。援軍が来るぞ」。「分解して持ってきた対空砲を早く組み立てろ」。アリは、命令した。

次回更新は、3月2日「タクール・ハーの戦い」です。お楽しみに。
ご意見、ご質問をお待ちしております。
お休みいただきまして、ありがとうございました。何とか無事に納品できました。
タクール・ハーの戦い Takur Ghar 13
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Posted by 友清仁  at 07:03 │Comments(0)Story(物語)

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