2011年12月14日
タリバン部隊 Taliban squad 3
ウルズガン地帯のタリバン司令官、ルシュディーは、目の前の光景に憮然としていた。突撃の先陣を務める車両が次々と狙撃され炎上し、後続の部隊の頭目も同様に狙撃され、小部隊がどんどん戦場を放棄してゆくのだ。このままでは、攻撃をするのは、ルシュディーの直属の部隊、500名だけになってしまう。
「バカどもを突撃させろ」。ルシュディーは、周りの側近に怒鳴った。すぐにAK-74 RPKを持った兵士が、前方のタリバン兵に向け、威圧射撃をした。後方からの銃声が、タリバン兵にはルシュディーの怒号に聞こえたのか、すぐに退却をやめ、機能を失った車両に隠れ射撃を開始した。
タリバン兵が射撃を開始したといっても、頭目という現場指揮官が不在のため、多くの兵士が銃だけを出して射撃する、「めくら撃ち」をしているだけで、誰一人として積極的に前進する者はなかった。
一方のODA574と徴用アフガン兵は、積極的に応戦した。タリバン兵が隠れている車両は、装甲車などではなく、一般のピックアップトラックであり、SR25の7.62mm弾は容易に貫通し、背後のタリバン兵をたおした。
タリバンが持っている唯一の装甲車といえば、旧ソ連製の輸送車くらいであった。しかしこの装甲も、最新の50口径アンチマテリアルライフルの前には板塀と同じで、タリバン兵は次々と串刺しにされた。
タリバン軍は、勢いがあれば相当な貫通力を持つが、いったんその勢いがなくなってしまうと、所詮、雑軍であり、散発的な攻撃しかできなかった。
これ以上の攻撃は、単なる戦力の損耗であり、果ては、自身の支配力の低下になることを恐れたルシュディーは、退却の信号弾を撃たせた。退却の信号を聞いたタリバン軍は、九死に一生を得たとばかりにぞろぞろと退却を始めた。
ルシュディーも歴戦の司令官である。彼は、一計を案じ、退却と見せかけて、追撃してくる敵を陣地からおびき出し、一挙に包囲・殲滅しようと考えたていた。しかし、ODA574の正確な狙撃と味方の背後からの威圧射撃に士気喪失したタリバン軍にそのような部隊行動が取れるはずもなく、退却も無秩序な退却であり、背後を撃たれるタリバン兵が続出した。
背後を狙撃される恐怖というものは計り知れない。恐怖が恐怖を生み、兵士達は我先にと逃げ出した。もはやルシュディーの命令はおろか威圧射撃も効かなかった。ルシュディーも大量のタリバン兵の濁流に飲み込まれたようになり、退却せざるをえなかった。
「追撃するぞ」。ペティソリーが急造陣地から飛び出そうとすると、後ろから肩をつかんで制止する者がいた。ソ連空挺大佐のアシモフである。
「やめておけ。敵の数が多すぎる。奴らは退却すると見せかけて、陣地から出てきたところを包囲・殲滅する作戦を取ることがある。ソ連軍は、それで何度も全滅させられた」。
アシモフの言うとおり、100名足らずの兵とわずかな車両では、目の前を雲霞のように退却して行くタリバン軍の前には、たいした打撃力にはなりえず、むしろ、それに巻き込まれる恐れがあった。
しかし、ここでタリバン軍に大損害を与えなれば、2回目、3回目の総攻撃を受けることは確実で、そのときには、今回のような戦法は通じなくなっているだろう。どうするべきか、ODA574の面々に沈黙が流れた。そのとき、はるか上空から、キーンという金属音が聞こえた。
空爆を要請した、海兵隊のF18が到着したのである。CCTのアレックス軍曹は、すぐにタリバン軍の座標を上空のパイロットに通信した。(以前は、空爆を要請する際には、敵と味方の座標の両方を通信していたのだが、クライ・シャンギ監獄での誤爆事件をきっかけに、敵の座標のみを伝えるようになった)
「敵座標を確認。これより爆撃体勢に入る」。6機の戦闘機が機体を横に滑らせて、順番に高度を下げてゆく。戦闘のパイロットが、クラスター爆弾のリリーススイッチに手をかけた瞬間、山岳地帯の山道を退却しているタリバン部隊が視界に入った。
山岳地帯といっても、ウルズガン地帯の山にはほとんど木がなく、パイロットには、退却するタリバン軍が、砂山を行進する蟻の隊列のように見えた。
パイロットは、リリーススイッチを押した。クラスター爆弾が勢いよく飛び立ち、やがて先端が割れて、子爆弾が飛び出し、タリバン軍の頭上に降り注いだ。あとは業火と砂煙が当たり一面に広がり、少し遅れて、どどーんという爆発音がした。
これが各機2回、合計12回繰り返され、蟻の行進は消滅した。ウルズガン総司令官のルシュディーも、その蟻の一匹であった。
次回更新は、12月28日「タリン・コットの戦い」です。お楽しみに。Vショー参加のため、1週お休みします。ご意見・ご質問をお待ちしております。
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「バカどもを突撃させろ」。ルシュディーは、周りの側近に怒鳴った。すぐにAK-74 RPKを持った兵士が、前方のタリバン兵に向け、威圧射撃をした。後方からの銃声が、タリバン兵にはルシュディーの怒号に聞こえたのか、すぐに退却をやめ、機能を失った車両に隠れ射撃を開始した。
タリバン兵が射撃を開始したといっても、頭目という現場指揮官が不在のため、多くの兵士が銃だけを出して射撃する、「めくら撃ち」をしているだけで、誰一人として積極的に前進する者はなかった。
一方のODA574と徴用アフガン兵は、積極的に応戦した。タリバン兵が隠れている車両は、装甲車などではなく、一般のピックアップトラックであり、SR25の7.62mm弾は容易に貫通し、背後のタリバン兵をたおした。
タリバンが持っている唯一の装甲車といえば、旧ソ連製の輸送車くらいであった。しかしこの装甲も、最新の50口径アンチマテリアルライフルの前には板塀と同じで、タリバン兵は次々と串刺しにされた。
タリバン軍は、勢いがあれば相当な貫通力を持つが、いったんその勢いがなくなってしまうと、所詮、雑軍であり、散発的な攻撃しかできなかった。
これ以上の攻撃は、単なる戦力の損耗であり、果ては、自身の支配力の低下になることを恐れたルシュディーは、退却の信号弾を撃たせた。退却の信号を聞いたタリバン軍は、九死に一生を得たとばかりにぞろぞろと退却を始めた。
ルシュディーも歴戦の司令官である。彼は、一計を案じ、退却と見せかけて、追撃してくる敵を陣地からおびき出し、一挙に包囲・殲滅しようと考えたていた。しかし、ODA574の正確な狙撃と味方の背後からの威圧射撃に士気喪失したタリバン軍にそのような部隊行動が取れるはずもなく、退却も無秩序な退却であり、背後を撃たれるタリバン兵が続出した。
背後を狙撃される恐怖というものは計り知れない。恐怖が恐怖を生み、兵士達は我先にと逃げ出した。もはやルシュディーの命令はおろか威圧射撃も効かなかった。ルシュディーも大量のタリバン兵の濁流に飲み込まれたようになり、退却せざるをえなかった。
「追撃するぞ」。ペティソリーが急造陣地から飛び出そうとすると、後ろから肩をつかんで制止する者がいた。ソ連空挺大佐のアシモフである。
「やめておけ。敵の数が多すぎる。奴らは退却すると見せかけて、陣地から出てきたところを包囲・殲滅する作戦を取ることがある。ソ連軍は、それで何度も全滅させられた」。
アシモフの言うとおり、100名足らずの兵とわずかな車両では、目の前を雲霞のように退却して行くタリバン軍の前には、たいした打撃力にはなりえず、むしろ、それに巻き込まれる恐れがあった。
しかし、ここでタリバン軍に大損害を与えなれば、2回目、3回目の総攻撃を受けることは確実で、そのときには、今回のような戦法は通じなくなっているだろう。どうするべきか、ODA574の面々に沈黙が流れた。そのとき、はるか上空から、キーンという金属音が聞こえた。
空爆を要請した、海兵隊のF18が到着したのである。CCTのアレックス軍曹は、すぐにタリバン軍の座標を上空のパイロットに通信した。(以前は、空爆を要請する際には、敵と味方の座標の両方を通信していたのだが、クライ・シャンギ監獄での誤爆事件をきっかけに、敵の座標のみを伝えるようになった)
「敵座標を確認。これより爆撃体勢に入る」。6機の戦闘機が機体を横に滑らせて、順番に高度を下げてゆく。戦闘のパイロットが、クラスター爆弾のリリーススイッチに手をかけた瞬間、山岳地帯の山道を退却しているタリバン部隊が視界に入った。
山岳地帯といっても、ウルズガン地帯の山にはほとんど木がなく、パイロットには、退却するタリバン軍が、砂山を行進する蟻の隊列のように見えた。
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いつも楽しく拝見させていただいてます。
最近初期アフガンODAに惚れ込んでいまして、そちらのブログのおかげでモチベーション上がりまくりです!
次回のブログアップも楽しみにしています。
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次回の「ハートロック」までの、イメージプレイ?なれば、幸いです。