2012年05月16日

掃討戦 extermination

時間を少し戻す。
タリン・コット攻撃軍のタリバン司令官のラービフは、懸命に暗闇を駆けていた。おそらくあのミサイルは、車両のエンジンの熱源を追跡しているのだろう。ともかく、空爆の現場から1mでも遠くに逃げなければ、あの業火に焼かれてしまう・・。

月明かりさえない新月の夜である。逃げる途中、何度も岩につまずき、崖から落ちた。顔は傷だらけになり、体中をあちこち打ちつけて痛かった。

ラービフが部下を棄てて、一目散に逃げる理由はもう1つある。タリバン軍は近代的な軍隊ではなく、部族の集まりである。従って部族の長が死んでしまうと、その軍隊には攻撃意思がなくなり、雲散霧消してしまうのだ。タリバン軍を存続させるには、どんなことがあっても、ラービフは生き残らねばならない。

1時間ほど山中を走り抜け、ようやく当初の攻撃指揮所としていた、小高い丘の洞穴まで到着した。従う兵士は、わずか2名ほどであった。タリン・コットの方角を見ると、空爆を受け炎上している車列の炎が、あたかも赤い壁のように見えた。

タリバン軍はほぼ全滅したかのように思えたが、丘の洞穴にラービフが生きていることが知れると、生き残った兵士が次第に集まってきた。その数は50名ほどに減っていたが、ラービフは、再戦の意思を捨てようとは思わなかった。


一方、ODA574のいるタリン・コットである。カブールの秘密基地から大量の物資と補充人員がやってきた。追加人員には、メディックのデニス・ピケット2等軍曹と空軍TTC、ジム・プライス3等軍曹、そして特殊作戦軍のフォックス・マーティン少佐がやってきた。

ODA574の先任将校は、クリス少佐である。クリスもタリン・コットに応援に来たからには、カブールには戻らず、そのままカンダハル攻略の指揮を取るつもりでいた。もちろん、指揮だけではなく銃を取って戦うつもりである。

しかしマルホールドランド大佐が帰還するように執拗に無電を打ってきて、それも、のらりくらりとかわしていたのだが、ついに、「帰還しなければ、抗命罪で軍法会議にかける」という、マ大佐の脅しに、クリスはやむなくカブールに帰還した。その代わりにフォックス少佐が派遣されてきたのだ。

フォックス少佐は、はじめは第101空挺師団に所属し、その後グリーンベレーに進んだ歴戦の猛者である。今回は、古巣の101空挺部隊の先遣隊のオブザーバとしてアフガンに来たのだが、人手不足の中央作戦軍に急遽編入され、ODA574の指揮を取ることとなった。

空軍CCTのジム・プライス軍曹は、ODAの仲間への挨拶もそこそこに、援助物資として届いた最新式のGPSのセッティングに忙しかった。

このGPSは、「ヴァイパー」と呼ばれ、当時のアメリカ軍では最新鋭のもので、ODA574のCCT、ダン、ウェス、アレックス、そして新しく派遣されてきたジムですら、初めて見るものだった。

4人はマニュアルを片手に操作を試み、とりあえず初期設定を終え、座標入力まではできるようになったが、細かい操作まではわからないままだった。
「まぁ、なんとかなるだろう」。4人はそう言って、物資の荷解きなどの別の作業に取り掛かった。

この時、すでに戦場の悪魔がODA574にそっと忍び寄り、邪悪な笛の音を奏でていたのかもしれない。


次回更新は、5月23日「掃討戦」と言いたいところですが、多分「ハートロック」関連の記事になると思います。
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Posted by 友清仁  at 07:00 │Comments(0)Story(物語)

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