2012年07月04日
誤爆 Friendly bombing 2
「J-DAM、リリース」。B-52のタクティカルコーディネータは、冷静に報告した。タコ(タクティカル・コーディネータの略)は、目の前のコンソールを見ている。
B-52は、巨大な爆撃機であるが、窓と呼べるものはコックピットにしかなく、パイロット以外は、機内から外を見ることができない。ちょうど潜水艦が浮上航行していても、外気に触れることができるのは、艦長をはじめとする艦内首脳士官だけなのと同じである。
従って、昔の爆撃機のように、爆弾が落ちてゆく様子を見ることもなく、また爆弾が投下される瞬間に機体に走る振動も感じることもない。
コンソールの画面には、目標地点の白い×印とJ-DAMを表すオレンジ色の×印が映っている。オレンジの×が左右に微妙に揺れながら、白い×へ近づいている。J-DAMの自律誘導システムが正確に作動しているのが分かる。
数秒後、白とオレンジのバツがぴったりと重なると、赤い×になり、激しく点滅し、やがて消えた。目標地点に着弾したのだ。あたかもテレビゲームである。「J-DAM、目標に命中」。タコは、機長のクロスビー中佐に短く報告した。
「機長からタコへ。次いで2次爆撃を行う。これより旋回を開始し、1時間後に再びタリン・コット上空に戻る。残り全弾の諸元入力を30分以内に終えろ」。クロスビーは無線を切った。
B-52から3000メートル下のタリン・コットでは、CCTのアレックスが自警団に行軍ドリルを行なっていた。しかし、B-52の爆音が激しいため、全員、しばらくその場に座り、休憩していた。
やがて爆音が遠のき、街に静寂が戻った。再びドリルを行うべくアレックスが立ち上がった。自警団の兵士にも、訓練再開を指示した。しかし、その一瞬後、爆音が遠のくのと反比例するように、今度は、キューっという、空気を切り裂く音が聞こえた。
その音が、J-DAMの自律誘導システムの尾翼が空気を裂く音だと、CCTのアレックスにすぐに分かった。すぐに音の方向に振り返ると、上空に黒い点がものすごい勢いで落ちてくるのが見えた。
B-52から放たれたJ-DAMは、最新無線機「ヴァイパー」とODA574の司令部のあるホテルへ一直線に落下し、その屋根を突き破り、室内で大爆発を起こした。
「Bombing!!(空爆)」。アレックスは叫び、すぐにその場に伏せたが、自警団には、意味がわからない。彼らは、その場にぼーっと突っ立っているほかなかった。
どーん、という音が響いた瞬間、ホテルの窓という窓から火炎が吹き出し、ホテル全体が火の柱と化した。あたかも火山が噴火するかのように、爆風でコンクリートや窓ガラスの破片が飛び散り、特に付近にいた自警団の兵士たちに降り注ぎ、まさに地獄絵図の様相を呈した。
同じ頃、ジェイスン大尉は、司令部で作戦会議を終え、街へ飲み物を買いに、ホテルのゲートを出たところであった。後頭部を思い切り殴りつけられるような爆音が響いたかと思うと、体が宙を浮き、5メートルほど吹き飛ばされた。
何が起きたのか訳も分からずホテルを見ると、ホテルは火柱と化していた。「タリバンの奇襲か?」 そう直感した。次いで、ホテルにとどまっていた、フォックス少佐、ペティソリー大尉を救うべく、燃え盛る建物へ入り、両名の名を叫んだ。
ペティソリーはすぐに見つかった。右足を骨折しているようだったが、ジェイスンの肩を借りてホテルを脱出した。次いでフォックス少佐を探した。しばらく捜索すると、落下したホテルの巨大なコンクリートの梁の下に、フォックスがうずくまっているのが見えた。
「少佐、脱出しましょう」。ジェイスンが呼びかけたがフォックスは答えない・・・。ジェイスンががれきを押しのけ、フォックスを引きずり出すと、彼は胸と口から大量の血を出し、すでに絶命していた。
「なんてこった・・」。ジェイスンは呟いた。その時、脳裏をかすめるものがあった。
「カルザイ・・」、ジェイスンは、再び言った。
次回更新は、7月11日「誤爆」です。お楽しみに。
ご意見・ご感想をお待ちしております。
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B-52は、巨大な爆撃機であるが、窓と呼べるものはコックピットにしかなく、パイロット以外は、機内から外を見ることができない。ちょうど潜水艦が浮上航行していても、外気に触れることができるのは、艦長をはじめとする艦内首脳士官だけなのと同じである。
従って、昔の爆撃機のように、爆弾が落ちてゆく様子を見ることもなく、また爆弾が投下される瞬間に機体に走る振動も感じることもない。
コンソールの画面には、目標地点の白い×印とJ-DAMを表すオレンジ色の×印が映っている。オレンジの×が左右に微妙に揺れながら、白い×へ近づいている。J-DAMの自律誘導システムが正確に作動しているのが分かる。
数秒後、白とオレンジのバツがぴったりと重なると、赤い×になり、激しく点滅し、やがて消えた。目標地点に着弾したのだ。あたかもテレビゲームである。「J-DAM、目標に命中」。タコは、機長のクロスビー中佐に短く報告した。
「機長からタコへ。次いで2次爆撃を行う。これより旋回を開始し、1時間後に再びタリン・コット上空に戻る。残り全弾の諸元入力を30分以内に終えろ」。クロスビーは無線を切った。
B-52から3000メートル下のタリン・コットでは、CCTのアレックスが自警団に行軍ドリルを行なっていた。しかし、B-52の爆音が激しいため、全員、しばらくその場に座り、休憩していた。
やがて爆音が遠のき、街に静寂が戻った。再びドリルを行うべくアレックスが立ち上がった。自警団の兵士にも、訓練再開を指示した。しかし、その一瞬後、爆音が遠のくのと反比例するように、今度は、キューっという、空気を切り裂く音が聞こえた。
その音が、J-DAMの自律誘導システムの尾翼が空気を裂く音だと、CCTのアレックスにすぐに分かった。すぐに音の方向に振り返ると、上空に黒い点がものすごい勢いで落ちてくるのが見えた。
B-52から放たれたJ-DAMは、最新無線機「ヴァイパー」とODA574の司令部のあるホテルへ一直線に落下し、その屋根を突き破り、室内で大爆発を起こした。
「Bombing!!(空爆)」。アレックスは叫び、すぐにその場に伏せたが、自警団には、意味がわからない。彼らは、その場にぼーっと突っ立っているほかなかった。
どーん、という音が響いた瞬間、ホテルの窓という窓から火炎が吹き出し、ホテル全体が火の柱と化した。あたかも火山が噴火するかのように、爆風でコンクリートや窓ガラスの破片が飛び散り、特に付近にいた自警団の兵士たちに降り注ぎ、まさに地獄絵図の様相を呈した。
同じ頃、ジェイスン大尉は、司令部で作戦会議を終え、街へ飲み物を買いに、ホテルのゲートを出たところであった。後頭部を思い切り殴りつけられるような爆音が響いたかと思うと、体が宙を浮き、5メートルほど吹き飛ばされた。
何が起きたのか訳も分からずホテルを見ると、ホテルは火柱と化していた。「タリバンの奇襲か?」 そう直感した。次いで、ホテルにとどまっていた、フォックス少佐、ペティソリー大尉を救うべく、燃え盛る建物へ入り、両名の名を叫んだ。
ペティソリーはすぐに見つかった。右足を骨折しているようだったが、ジェイスンの肩を借りてホテルを脱出した。次いでフォックス少佐を探した。しばらく捜索すると、落下したホテルの巨大なコンクリートの梁の下に、フォックスがうずくまっているのが見えた。
「少佐、脱出しましょう」。ジェイスンが呼びかけたがフォックスは答えない・・・。ジェイスンががれきを押しのけ、フォックスを引きずり出すと、彼は胸と口から大量の血を出し、すでに絶命していた。
「なんてこった・・」。ジェイスンは呟いた。その時、脳裏をかすめるものがあった。
「カルザイ・・」、ジェイスンは、再び言った。
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作戦終了 Over the Operation
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