2012年07月11日
誤爆 Friendly bombing 3
「カルザイ!」。
ODA574のジェイスン大尉は叫んだ。確かカルザイも、このホテルのどこかにいたはずである。万が一、この爆撃でカルザイが死ぬようなことがあれば、アメリカのアフガン統治政策が破綻してしまう。
「カルザイ!」。ジェイスンが再び叫んだ。
すると、ホテルの中庭の方から、「大尉、私はここだ」。カルザイの声がした。がれきを掻き分け中庭に出ると、カルザイが右肩を押さえ、立っていた。右肩は真っ赤に染まっていた。どうやら、中庭で休息中に爆発があり、飛散したガラスの破片で負傷したらしい。
「私のケガは大したことはない。それよりも、この爆発はタリバンのスパイが侵入し、爆弾を仕掛けて爆破させたのかもしれない」。
カルザイの意見ももっともであった。RPG‐7や迫撃砲が1発命中しただけでは、このような破壊力はない。スパイがいるとすれば、カルザイを暗殺しようとして、まだこの辺に潜伏しているはずである。
とにかくカルザイを連れてホテルの外に出た。スナイパーがいる可能性があるので、すぐにほかの建物に入り、カルザイには、絶対にこの建物から出ないように指示した。
やがてODA574のメンバーが続々と集まってきた。
「ホテルの火災を消せ」、「負傷者を一箇所に集めろ」、「自警団は戦闘配置につけ」。ジェイスン大尉は矢継ぎ早に命令した。ODAのメンバーは、アフガン徴用兵を指揮してそれぞれの作業を進めた。
その中で、ジェイスン大尉は次の対策を考えていた。「この爆発は、タリバンの野砲による攻撃なのか、スパイによる爆破なのか・・・」。それによって対応策が変わる。
「大尉、これは味方のB-52による誤爆です」。CCTのアレックスは、ジェイスンに進言し、自分が見た一部始終を説明した。
そのことを聞いて、ジェイスンは、「ならば、B-52に誤爆であることをすぐに伝えるんだ」。と言ったが、CCTのアレックスは深刻な表情を崩さずに、
「大尉、上空のB-52はもちろん、カブールの司令部にダイレクトに通信できる無線機は、ホテルにあったヴァイパーだけです。そのヴァイパーも、空爆で破壊されました」。
ジェイスンは、アレックスの言っていることが理解できなかった。アレックスは、各隊員が持っている無線機(PRC-148)では、個人の通信は出来るものの、上級司令部へのアクセスが難しいとのことを説明した。
これは、アフガン戦初期に、捕虜になったタリバン兵が米軍のPRC-117無線機を所持しており、タリバン軍が限定的ながらアメリカ軍の無線を傍受していたことが判明したため、司令部は、暫定処置として通信網を複雑にしたためである。
上級司令部への通信手段が破壊されたODA574は、アフガンの真ん中で、孤立した状態になってしまっているのだ。
「無線が・・、通信が復旧する見込みはあるのか?」。ジェイスンが尋ねると、
「それはわかりません。しかし確実に言えることは、このあと、もう1時間もすれば、2次爆撃が始まることです」。
空軍から来たアレックスによると、1回目の爆撃でJ-DAMを1発しか投下していないことから、この1発は、いわば「試し撃ち」であり、このデータをもとに、残りすべてに諸元を入力し、今度は全弾を投下する、飽和爆撃を行うというのだ。
「B-52の旋回能力を考えると、長くて1時間、早ければ45分程度で再びタリン・コット上空に達するでしょう。投下する爆弾もクラスター爆弾ならば、その制圧面積を考えると、タリン・コット全域が爆撃範囲になり・・・・」
ジェイスンは、アレックスの表情を凝視している。アレックスは続けた。
「防空施設のないこの街は・・・、消滅します」。
次回更新は7月18日 「誤爆」です。お楽しみに。
ご意見・ご感想をお待ちしております。
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ODA574のジェイスン大尉は叫んだ。確かカルザイも、このホテルのどこかにいたはずである。万が一、この爆撃でカルザイが死ぬようなことがあれば、アメリカのアフガン統治政策が破綻してしまう。
「カルザイ!」。ジェイスンが再び叫んだ。
すると、ホテルの中庭の方から、「大尉、私はここだ」。カルザイの声がした。がれきを掻き分け中庭に出ると、カルザイが右肩を押さえ、立っていた。右肩は真っ赤に染まっていた。どうやら、中庭で休息中に爆発があり、飛散したガラスの破片で負傷したらしい。
「私のケガは大したことはない。それよりも、この爆発はタリバンのスパイが侵入し、爆弾を仕掛けて爆破させたのかもしれない」。
カルザイの意見ももっともであった。RPG‐7や迫撃砲が1発命中しただけでは、このような破壊力はない。スパイがいるとすれば、カルザイを暗殺しようとして、まだこの辺に潜伏しているはずである。
とにかくカルザイを連れてホテルの外に出た。スナイパーがいる可能性があるので、すぐにほかの建物に入り、カルザイには、絶対にこの建物から出ないように指示した。
やがてODA574のメンバーが続々と集まってきた。
「ホテルの火災を消せ」、「負傷者を一箇所に集めろ」、「自警団は戦闘配置につけ」。ジェイスン大尉は矢継ぎ早に命令した。ODAのメンバーは、アフガン徴用兵を指揮してそれぞれの作業を進めた。
その中で、ジェイスン大尉は次の対策を考えていた。「この爆発は、タリバンの野砲による攻撃なのか、スパイによる爆破なのか・・・」。それによって対応策が変わる。
「大尉、これは味方のB-52による誤爆です」。CCTのアレックスは、ジェイスンに進言し、自分が見た一部始終を説明した。
そのことを聞いて、ジェイスンは、「ならば、B-52に誤爆であることをすぐに伝えるんだ」。と言ったが、CCTのアレックスは深刻な表情を崩さずに、
「大尉、上空のB-52はもちろん、カブールの司令部にダイレクトに通信できる無線機は、ホテルにあったヴァイパーだけです。そのヴァイパーも、空爆で破壊されました」。
ジェイスンは、アレックスの言っていることが理解できなかった。アレックスは、各隊員が持っている無線機(PRC-148)では、個人の通信は出来るものの、上級司令部へのアクセスが難しいとのことを説明した。
これは、アフガン戦初期に、捕虜になったタリバン兵が米軍のPRC-117無線機を所持しており、タリバン軍が限定的ながらアメリカ軍の無線を傍受していたことが判明したため、司令部は、暫定処置として通信網を複雑にしたためである。
上級司令部への通信手段が破壊されたODA574は、アフガンの真ん中で、孤立した状態になってしまっているのだ。
「無線が・・、通信が復旧する見込みはあるのか?」。ジェイスンが尋ねると、
「それはわかりません。しかし確実に言えることは、このあと、もう1時間もすれば、2次爆撃が始まることです」。
空軍から来たアレックスによると、1回目の爆撃でJ-DAMを1発しか投下していないことから、この1発は、いわば「試し撃ち」であり、このデータをもとに、残りすべてに諸元を入力し、今度は全弾を投下する、飽和爆撃を行うというのだ。
「B-52の旋回能力を考えると、長くて1時間、早ければ45分程度で再びタリン・コット上空に達するでしょう。投下する爆弾もクラスター爆弾ならば、その制圧面積を考えると、タリン・コット全域が爆撃範囲になり・・・・」
ジェイスンは、アレックスの表情を凝視している。アレックスは続けた。
「防空施設のないこの街は・・・、消滅します」。
次回更新は7月18日 「誤爆」です。お楽しみに。
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作戦終了 Over the Operation
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