2012年10月10日

死に値すべきもの The worth dying for

ODB570指揮官、ロブ・ケアンズ少佐は、通信兵のリー曹長に、CH46ヘリのパイロットとPJたちを集めるように指示し、自分は、再びリノ空港の管制塔の司令部へ向かった。

地面を踏み固めただけの簡易滑走路を横切る。滑走路の端で、今日の日課を終えたと思われる若い海兵隊員が、グローブを丸めたものでキャッチボールをして遊んでいるのが見えた。

ここは紛れもなく戦場なのだが、今日の戦争は局地戦であり、戦闘が行われていないところでは、全くの平和である。あの海兵隊隊員も、ここからわずか220キロ離れたタリン・コットの街で戦闘が行われ、修羅場と化しているなど、全く想像できないだろう。

ケアンズは、再び暑苦しい司令部へ入った。最初に報告してしてから数時間が経過し、日も傾いたせいか、暑さも和らいでいる感じで、司令部はさほど暑く感じなかった。

ケアンズは、マティ海兵少将が詰める司令室に入った。司令室は相変わらず暑かった。しかし、暑くしているのは、気候ではない。その中央に座るマティ少将であることは間違いなかった。

マティは、簡易椅子に座っていた。ケアンズの姿を認めると、明らかに「何だ?」という顔をし、次の瞬間、ケアンズが現れた目的を悟り、ケアンズが発言する前に、「ヘリコプターを飛ばすことは許さん」。と言った。

機先を制されたケアンズ少佐であったが、マティの反応は想定内であったので、発言した。
「本日、17:30より、ODB570のCH46の飛行訓練を行います」。
「却下する」。マティは間髪いれずに言った。

ケアンズは、ひと呼吸おいて、「将軍がなんと言おうと、訓練を行います」。無表情で答えた。
マティの目に怒りの火が灯った。ケアンズは続けた。
「ODB570は、作戦行動に関しては、マティ将軍の指揮下にありますが、日々の運営については、私の統制下にあります。飛行訓練は、私の裁量で実施します」。

「貴様、何を言っているのか分かっているのか」。
マティは椅子から立ちがあり、ケアンズに顔を近づけた。しかし、ケアンズは目を閉じて、マティの顔を見ないようにして、さらに続けた。

「私は、許可を得に来たわけではありません。これは空軍から海兵隊へのご連絡です」。
このケアンズ少佐の発言に、マティ将軍は、すべてを悟った。

ここに、特殊作戦軍の欠点が現れている。
特殊作戦軍とは、作戦の内容や条件に応じて、各軍を縦断して部隊を集めることができ、それぞれの部隊の長所を有機的に運用できることが特徴である。

しかし、指揮命令権とその範囲という点においては曖昧なところがあり、この場合、リノ基地の統制権は、マティ海兵少将にあるものの、ODB570の指揮権は、ケアンズ空軍少佐にあるという「ねじれ」現象が起こっている。

この場合の秩序とは、単に階級の上下でしかない。もちろん、軍隊の慣例で、所属や国籍が違った場合、上級者が下級者への命令権があると解釈されているが、それはあくまで特殊な状況で認められていることである。

リノ基地が攻撃などを受け、危機的な状況であるならば、マティの指揮権も大幅に解釈されるが、現在のように危機的な状況でない場合、それぞれの指揮権が生きており、それが優先される。最初に組織論を持ち出したマティ少将には、ケアンズ少佐の行動を止めることができない。

「よかろう。勝手に訓練でも何でもやるがいい。しかし、海兵隊のコブラは、その訓練には参加しない。ご連絡に感謝する」。
マティ少将の声は、怒りに震えていた。その発言の裏には、救助ヘリの護衛に、海兵隊のコブラを使わせないという意味が込められていた。

ケアンズは司令室を出て、早足でODBの指揮所へ向かった。背後から、マティの罵声が聞こえた。指揮所に戻ると、配下のヘリパイロットやPJが集まっていた。

「諸君、これから救助訓練を行う。非常に実戦に近い訓練だ。気を引き締めてくれ」。
ケアンズは、訓示した。


次回更新は、10月17日ですが、1週お休みして「ハートロック2012のご報告」です。お楽しみに。
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Posted by 友清仁  at 07:01 │Comments(0)Story(物語)

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