2012年11月28日
死に値すべきもの The worth dying for 7
敵のマズルファイアは、次第に増え、そして近づいてくる。銃声が近くなったことは、「前線」から離れ、救助ヘリを待っているジェイスン大尉にもはっきりとわかった。
「銃声が大きい。馬賊どもは、どうなっている?」。ジェイスンは、無線で訊ねた。
「夜になって、敵が動き出しました。それに驚いたアフガン人は逃げました。現在、アシモフ大佐と2人で応戦中。至急、応援を」。しかし、ロニーは落ち着いて返した。
ジェイスンは、「またか」、と思いつつ、CCTのアレックスを応援に向かわせた。アレックスは、M203付きのM4カービンとSR25を持って、銃声の方へ走っていった。
やがてアレックスは、ロニーとアシモフの守る民家にたどり着いた。2人は、わずかな月明かりを頼りに、馬賊の動きを測っていた。敵は、威圧射撃のつもりなのか、盛んに撃ってくる。そのマズルファイア目がけて、アシモフはドラグノフを撃つ。
マズルファイアの主に命中して死んだのか、次から火が見なくなることもあるが、再び咆哮をはじめる場合もある。しかも、ただ咆哮するのではなく、ODA574の3人の周りに銃弾が集まり、あちこちに跳弾が跳ねた。
アシモフのドラグノフには、サプレッサーが付いていない。ゆえに射撃音もマズルファイアも派手に出る。馬賊どもは、それ目がけて撃ってくるのだ。「1発撃てば10倍返しだ。いつかこっちが当たっちまう」。ロニーは、アシモフに狙撃をやめるように、ドラグノフのバレルに手を当てて言った。
しかし、この戦局をどうやって挽回するべきか。そのとき、2人は、アレックスが後ろにいることに、ようやく気がついた。「おい、貴様の銃は見えるのか?」。アシモフはすぐにアレックスに聞いた。ナイトビジョン機能のことあることは、すぐにわかったので、アレックスはうなずいた。
「アメリカ人よ。オレに策がある。同意するか?」。アシモフは2人に訊ねた。
「内容を聞かなければ、同意できるか!」。ロニーが返すと、アシモフは自分のアイディアを語り始めた。
1.敵は、こちらに応戦する戦力があると思っている。しかもそれは闇夜で狙撃してきて厄介なやつだと思っている。もちろん排除したい。
2.こちらにある銃は、サプレッサーがないドラグノフとサプレッサー付きSR25が2丁、内1つは、ナイトビジョンが使える。
3.敵は、こちらのマズルファイアを目印に撃ってくる。なので、ドラグノフを発砲して囮とし、敵がそれに気を取られているあいだに、SR25の2名が敵を狙撃する。
ロニーは、なかなかいいアイディアだと思ったが、問題は誰が囮になるか、である。普通に考えれば、ドラグノフの持ち主のアシモフが囮になって、ロニーとアレックスが狙撃するのが順当だろう。
しかし、ロニーは狙撃にあまり自信がなかった。もちろん、グリーンベレーであるから、普通の兵士よりはるかに技術があるのだが、アシモフのように、マズルファイアだけを目印に撃つことができなかった。何度も練習し、アシモフの指導を受けたが、思うように当てることができなかった。
アシモフもそれを知っている。これは訓練ではない。狙撃の精度が低くては、囮になる身からすれば、たまったものではない。
「わかった。俺が囮になろう」。ロニーは、アシモフのドラグノフを掴むと立ち上がり、自分のSR25をアシモフに渡した。
3名は、二手に別れ、囮のロニーは右翼に、狙撃のアシモフとアレックスは左翼の民家の屋上に陣取ることにした。別れ際、アシモフはロニーに、「ジェラーユ ヴァーム ウダーチ !!」と声をかけた。
意味は、ロシア語で「健闘を祈る」という程度のことであったが、ロシア語に不慣れなロニーには、意味が分からなかった。
「あのオヤジは、何を言ってやがる・・・」。いつもは、アシモフが何を言っても無視するか、気にもならないのだが、この時は不思議と気になった。ロニー軍曹は、タリン・コットの街の闇に消えた。アシモフの言葉の意味を考えながら・・・。
次回更新は、12月5日「死に値すべきもの」です。お楽しみに。
ご意見・ご質問をお待ちしております。
------------------------------------------------------------------------------------------
同人誌も発行しております。こちらもどうぞ。同人誌書店COMIC ZIN通販ページと 虎の穴通販ページに飛びます。(購入には会員登録が必要です。)





私の訳書(共訳・監修)です。よろしかったらお読みください。
画像クリックでamazonへ飛びます。





「銃声が大きい。馬賊どもは、どうなっている?」。ジェイスンは、無線で訊ねた。
「夜になって、敵が動き出しました。それに驚いたアフガン人は逃げました。現在、アシモフ大佐と2人で応戦中。至急、応援を」。しかし、ロニーは落ち着いて返した。
ジェイスンは、「またか」、と思いつつ、CCTのアレックスを応援に向かわせた。アレックスは、M203付きのM4カービンとSR25を持って、銃声の方へ走っていった。
やがてアレックスは、ロニーとアシモフの守る民家にたどり着いた。2人は、わずかな月明かりを頼りに、馬賊の動きを測っていた。敵は、威圧射撃のつもりなのか、盛んに撃ってくる。そのマズルファイア目がけて、アシモフはドラグノフを撃つ。
マズルファイアの主に命中して死んだのか、次から火が見なくなることもあるが、再び咆哮をはじめる場合もある。しかも、ただ咆哮するのではなく、ODA574の3人の周りに銃弾が集まり、あちこちに跳弾が跳ねた。
アシモフのドラグノフには、サプレッサーが付いていない。ゆえに射撃音もマズルファイアも派手に出る。馬賊どもは、それ目がけて撃ってくるのだ。「1発撃てば10倍返しだ。いつかこっちが当たっちまう」。ロニーは、アシモフに狙撃をやめるように、ドラグノフのバレルに手を当てて言った。
しかし、この戦局をどうやって挽回するべきか。そのとき、2人は、アレックスが後ろにいることに、ようやく気がついた。「おい、貴様の銃は見えるのか?」。アシモフはすぐにアレックスに聞いた。ナイトビジョン機能のことあることは、すぐにわかったので、アレックスはうなずいた。
「アメリカ人よ。オレに策がある。同意するか?」。アシモフは2人に訊ねた。
「内容を聞かなければ、同意できるか!」。ロニーが返すと、アシモフは自分のアイディアを語り始めた。
1.敵は、こちらに応戦する戦力があると思っている。しかもそれは闇夜で狙撃してきて厄介なやつだと思っている。もちろん排除したい。
2.こちらにある銃は、サプレッサーがないドラグノフとサプレッサー付きSR25が2丁、内1つは、ナイトビジョンが使える。
3.敵は、こちらのマズルファイアを目印に撃ってくる。なので、ドラグノフを発砲して囮とし、敵がそれに気を取られているあいだに、SR25の2名が敵を狙撃する。
ロニーは、なかなかいいアイディアだと思ったが、問題は誰が囮になるか、である。普通に考えれば、ドラグノフの持ち主のアシモフが囮になって、ロニーとアレックスが狙撃するのが順当だろう。
しかし、ロニーは狙撃にあまり自信がなかった。もちろん、グリーンベレーであるから、普通の兵士よりはるかに技術があるのだが、アシモフのように、マズルファイアだけを目印に撃つことができなかった。何度も練習し、アシモフの指導を受けたが、思うように当てることができなかった。
アシモフもそれを知っている。これは訓練ではない。狙撃の精度が低くては、囮になる身からすれば、たまったものではない。
「わかった。俺が囮になろう」。ロニーは、アシモフのドラグノフを掴むと立ち上がり、自分のSR25をアシモフに渡した。
3名は、二手に別れ、囮のロニーは右翼に、狙撃のアシモフとアレックスは左翼の民家の屋上に陣取ることにした。別れ際、アシモフはロニーに、「ジェラーユ ヴァーム ウダーチ !!」と声をかけた。
意味は、ロシア語で「健闘を祈る」という程度のことであったが、ロシア語に不慣れなロニーには、意味が分からなかった。
「あのオヤジは、何を言ってやがる・・・」。いつもは、アシモフが何を言っても無視するか、気にもならないのだが、この時は不思議と気になった。ロニー軍曹は、タリン・コットの街の闇に消えた。アシモフの言葉の意味を考えながら・・・。
次回更新は、12月5日「死に値すべきもの」です。お楽しみに。
ご意見・ご質問をお待ちしております。
------------------------------------------------------------------------------------------
同人誌も発行しております。こちらもどうぞ。同人誌書店COMIC ZIN通販ページと 虎の穴通販ページに飛びます。(購入には会員登録が必要です。)
私の訳書(共訳・監修)です。よろしかったらお読みください。
画像クリックでamazonへ飛びます。






作戦終了 Over the Operation
コードワード:ジョロニモ Code word GERONIMO 4
コードワード:ジョロニモ Code word GERONIMO 3
コードワード:ジョロニモ Code word GERONIMO 2
コードワード:ジョロニモ Code word GERONIMO
ネプチューン・スピアー Neptune spear 7
コードワード:ジョロニモ Code word GERONIMO 4
コードワード:ジョロニモ Code word GERONIMO 3
コードワード:ジョロニモ Code word GERONIMO 2
コードワード:ジョロニモ Code word GERONIMO
ネプチューン・スピアー Neptune spear 7
※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。
また飲みましょう。
前回のように。
お世話になります。今後ともよろしくお願いします。
ところで、当日、8時半くらいには現地に入れるのですが、何かお手伝いすることはありますか?
救援を請う