2013年04月17日
アボタバード Abbottabad 5
チャーリーは、市場でデマ情報を流し続けた。同じことを言い続けても、飽きられるだけなので、少しずつ、脚色していった。
「塀の中には、プールがあって、毎日、子供が泳いでいる」、「庭には、純金できた銅像が立っている」。
何と言っても、デマ情報である。どんなに大きなことを言っても問題はないし、話が大げさになればなるほど、広範囲に知られ、間違いを訂正する者も現れるだろう。それが正しい情報である。
町外れの屋敷が怪しいことは、セイフ・ハウスにいるCIAスタッフにも報告され、CIAは、直ちに屋敷の近くに監視小屋を建て、24時間体制で監視を続けている。しかし、目立った動きはなかった。
そんなことをして、1週間ほど経過した。チャーリーは、いつものように、人通りの多い通りに出て、物乞いをしていると、市場で野菜を売っている老人が、チャーリーに話しかけてきた。
「お前は、あの屋敷の主を、イスラマバードから来たと言っているが、それは間違っている」。
老人によると、1ヶ月ほど前、その屋敷に、トヨタのピックアップトラックが横付けされ、数人の男が屋敷から出てきて、多くの荷物が下ろされた。珍しいことなので、老人が、畑仕事の手を休めて、その光景を眺めていると、厳しい顔をしたリーダー格の男が歩み寄り、「爺さん、何を見てるんだ?」と尋ねた。
老人からすれば、特に目的があるわけではない。その光景が珍しいだけで、何の警戒心もない。
「引越しかい?」。老人は、呑気に返した。
その呑気さに、男もハッと我に返ったようで、すぐに頬を緩ませて、
「ああ、引越しだ。俺の名はタレクだ。チャルサダから来た。兄貴のアシェットの屋敷でしばらく厄介になる。爺さんも、よろしく頼む」。
そう言うと、ポケットからいくらかの金を出し、老人に与えたという。
「どんな奴だったんだい?」、チャーリーは尋ねた。老人は続けて、男は40代半ば、身長は170センチくらい、口ひげ以外はキレイに剃っていたという。チャーリーは、それ以上の詮索をせず、老人と世間話をして、その場をあとにした。
チャーリーは、箱車を漕ぎながら、「チャルサダ」という土地が気になった。この土地は、パキスタン北西部にあり、カイバル峠から100キロほどの位置にある。街自体は、大した街ではないのだが、問題は、1月ほど前に、そこから、何者かが衛星携帯電話を発信しているのである。
パキスタンの田舎町で、衛星携帯電話を発信する者・・・。それは、田舎に視察に来た政府高官か、タリバン・アルカイダ幹部くらいである。
チャーリーの情報を元に、セイフ・ハウスでは、1ヶ月内外で、衛星携帯電話を持ちうる、政府高官がチャルサダを訪れたかどうか調査した。結果は、そのような要人は一人もいなかった。
もう1つ気になるのが、40代半ばの小綺麗な男で、チャルサダから来た、タレクである。パキスタンでは、ある一定以上の階層の男は、口ひげ以外をキレイに剃る習慣がある。これは、タリバン・アルカイダ幹部でも同様である。
その後の監視小屋からの報告では、その屋敷に住んでいるはずのタレクが、それから、全くその姿を認めることができず、人の出入りもほとんどないという。
アボタバードの調査グループは、町外れの屋敷と、行方不明のタレクを徹底的にマークすることにした。
次回更新は、4月24日「アボタバード」です。
ご意見・ご感想をお待ちしております
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「塀の中には、プールがあって、毎日、子供が泳いでいる」、「庭には、純金できた銅像が立っている」。
何と言っても、デマ情報である。どんなに大きなことを言っても問題はないし、話が大げさになればなるほど、広範囲に知られ、間違いを訂正する者も現れるだろう。それが正しい情報である。
町外れの屋敷が怪しいことは、セイフ・ハウスにいるCIAスタッフにも報告され、CIAは、直ちに屋敷の近くに監視小屋を建て、24時間体制で監視を続けている。しかし、目立った動きはなかった。
そんなことをして、1週間ほど経過した。チャーリーは、いつものように、人通りの多い通りに出て、物乞いをしていると、市場で野菜を売っている老人が、チャーリーに話しかけてきた。
「お前は、あの屋敷の主を、イスラマバードから来たと言っているが、それは間違っている」。
老人によると、1ヶ月ほど前、その屋敷に、トヨタのピックアップトラックが横付けされ、数人の男が屋敷から出てきて、多くの荷物が下ろされた。珍しいことなので、老人が、畑仕事の手を休めて、その光景を眺めていると、厳しい顔をしたリーダー格の男が歩み寄り、「爺さん、何を見てるんだ?」と尋ねた。
老人からすれば、特に目的があるわけではない。その光景が珍しいだけで、何の警戒心もない。
「引越しかい?」。老人は、呑気に返した。
その呑気さに、男もハッと我に返ったようで、すぐに頬を緩ませて、
「ああ、引越しだ。俺の名はタレクだ。チャルサダから来た。兄貴のアシェットの屋敷でしばらく厄介になる。爺さんも、よろしく頼む」。
そう言うと、ポケットからいくらかの金を出し、老人に与えたという。
「どんな奴だったんだい?」、チャーリーは尋ねた。老人は続けて、男は40代半ば、身長は170センチくらい、口ひげ以外はキレイに剃っていたという。チャーリーは、それ以上の詮索をせず、老人と世間話をして、その場をあとにした。
チャーリーは、箱車を漕ぎながら、「チャルサダ」という土地が気になった。この土地は、パキスタン北西部にあり、カイバル峠から100キロほどの位置にある。街自体は、大した街ではないのだが、問題は、1月ほど前に、そこから、何者かが衛星携帯電話を発信しているのである。
パキスタンの田舎町で、衛星携帯電話を発信する者・・・。それは、田舎に視察に来た政府高官か、タリバン・アルカイダ幹部くらいである。
チャーリーの情報を元に、セイフ・ハウスでは、1ヶ月内外で、衛星携帯電話を持ちうる、政府高官がチャルサダを訪れたかどうか調査した。結果は、そのような要人は一人もいなかった。
もう1つ気になるのが、40代半ばの小綺麗な男で、チャルサダから来た、タレクである。パキスタンでは、ある一定以上の階層の男は、口ひげ以外をキレイに剃る習慣がある。これは、タリバン・アルカイダ幹部でも同様である。
その後の監視小屋からの報告では、その屋敷に住んでいるはずのタレクが、それから、全くその姿を認めることができず、人の出入りもほとんどないという。
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作戦終了 Over the Operation
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ネプチューン・スピアー Neptune spear 7
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コメントありがとうございます。
VOL2ですが、おかげさまで初版が完売しまして、大変驚いております。
現在、増刷しているところです。4月末には、コミックZINさんに入荷する予定です。同時に通販も再開されると思います。よろしくお願いします。
CDが空だったということで、大変申し訳ございません。良品をお送りいたしますので、
de4622000@yahoo.co.jp
まで、件名を「ナレッジレポーつVOL2のCDの件」として、ご住所とお名前をご連絡ください。
よろしくお願いします。