スポンサーサイト


上記の広告は1ヶ月以上記事の更新がないブログに表示されます。
新しい記事を書くことで、こちらの広告の表示を消すことができます。  

Posted by ミリタリーブログ  at 

2014年01月01日

ネプチューン・スピアー Neptune spear  7

新年、あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。

パキスタン国境付近 ブラックホーク機内
シールズ・チーム6で、ビンラディン襲撃チームリーダー、トロイ・ロバーツ軍曹は、ヘルメットを小突かれて、目が覚めた。目を開けると、ソルベスキー軍曹がいた。

「作戦前に居眠りとは、余裕だな」。
ソルベスキーは笑った。トロイは決して余裕などで居眠りをしているわけではなかった。作戦直前は、極度の緊張状態となる。普通の人間ならば発狂してしまうところ、特殊部隊の人間は、居眠りをすることで、精神のスイッチを切って、心の平衡を保っている。機内で居眠りをしているのはトロイだけではなかった。

機内は、薄い赤色灯だけで、さほど明るくない。
「屋根から突入する作戦になったな。建物内部が分からねぇ厄介な任務だ。お前、大丈夫か?」 
「何が?」
「おめぇには、カミさんがいる。今度の任務はマジでやべぇ。突入は俺がやる。お前は屋上で待ってろ」。
「バカを言え。カミさんがいるからやるんだし、成功するんだよ。お前みたいな一人もんじゃできねぇよ」。
ソルベスキーは、ヘッと笑うと、トロイのヘルメットをもう1度小突いた。

緊張状態のトロイは、再び眠りに落ちた。それからどれくらい時間がたったか分からない。しかし、機内スピーカーから、「目標上空。降下スタンバイ!!」 パイロットからの指示が入り、メンバー全員が中腰になった。

後方の兵士から、ファストロープで降下するための治具が完全であるかチェックが入り、肩を叩いて前方へ知らせる。数秒で、先頭のソルベスキー軍曹に、「オールクリア」のサインが送られた。
「降下準備!!」。ソルベスキーは、命令した。

もう一方の襲撃部隊を乗せたブラックホークには、ダンハム大尉がいた。こちらのヘリも地上に降りるが、ファストロープで降りるわけではないので、時間的に少し余裕がある。

計画では、襲撃チーム(アルファ)が屋上に降り立ったのを確認してから、こちらは、付近の道路か空き地に着陸し、外壁の門の前に集合することになっている。ヘリの外を、パイロットの肩越しに見ると、ブラックホークのテール部分にある緑色の戦術ライトだけが見えた。

その戦術ライトが、次第に下方へ遠ざかってゆく。いいぞ、その調子だ。敵に気づかれていない。ダンハム大尉は、アルファチームがうまく屋上に降り立つことを願った。しかし、その願いは、あっけなく裏切られた。

ぐぁんという音がしたかと思うと、緑色のライトが右へ左へ大きく移動し、どんどん小さくなっていった。そして、ガガガガーっという音ともに、フッと視界から消え、再び、ぐぁんという音が響いた。

ダンハム大尉は、瞬間的に、ヘリが墜落したと分かった。
「アルファ、応答せよ。状況を報告せよ」。
無線は沈黙したままである。ダンハムはナイトビジョンのスイッチを入れ、眼下を見た。そこには、テール部分がポッキリと折れ、横倒しになったブラックホールの姿があった。

「アルファチームを救出する。機体の真横に着陸しろ!!」 ダンハムは、パイロットに命令した。

このブラックホークの墜落の原因は諸説ありまして、1つは、屋上に衛星写真では見えなかったポールのようなものがあり、それにローターが接触し、バランスを崩して墜落したという説。もう1つは、パイロットが屋上の高さを見誤って、屋上に激突し、そのまま機体が横倒しになったという説、さらに、ベータチームの方が先に着陸し、その際に、ローターが屋敷の塀に接触し墜落したという説があります。ここでは、元ネタの小説にある、アルファが屋根に激突した説を採用しています。


次回更新は1月8日「コードワード・ジェロニモ」です。
ご意見・ご感想をお待ちしております。


今後の即売会出店予定
1/19 コミックとレジャー22 (インテックス大阪) 5号館 キ-09b
1/26 コミックシティ東京133 (東京ビックサイト) 東5ホール か14a
2/2 東京コミティア106 (東京ビックサイト) 東5ホール R14b
2/9 サンシャインクリエイション62 (池袋サンシャインシティ) A23ホール K01a


------------------------------------------------------------------------------------------
同人誌も発行しております。こちらもどうぞ。同人誌書店COMIC ZIN通販ページと 虎の穴通販ページに飛びます。(購入には会員登録が必要です。)



私の訳書(共訳・監修)です。よろしかったらお読みください。
画像クリックでamazonへ飛びます。







  


Posted by 友清仁  at 07:00Comments(0)Story(物語)

2013年12月25日

ネプチューン・スピアー Neptune spear 6

この隠れ家の存在をアメリカに突き止められた。タレクに起こった事件から、ビンラディンは直感した。すぐに、この地の警察署長で、部下のナセル・アブドルザラクに使者を送り、新しい隠れ家を用意するように命令した。

すぐに移動せねば・・・。屋敷の者にも荷物を整理するように命じた。アメリカ軍がここへ攻めてくるのも時間の問題だ。ビンラディンの態度の変化をつぶさに感じた側近の一人は、「屋敷の警備を固めますか?」と尋ねた。
「いや、急に警備を固めたら、むしろ、私がここにいることを証明するようなものだ。皆には普段通りの生活をするように伝えろ」。

問題は、いつアメリカ軍が行動を移すかだ・・。パキスタン軍を主体とするならば、情報を掴んで、すぐに逃げることができる。空爆なら早いだろうが、領空飛行の許可を得るのに1週間はかかるだろう。

特殊部隊が襲撃に来る・・・? それは無理だ。
アフガニスタンから、パキスタン軍のレーダーを避けて飛んでくることができるわけがないし、そんなことをすれば、重大な主権侵害だ。アメリカは世界中から非難されるに決まっている・・・。


アフガニスタン キャンプ・アルファ
ネプチューン・スピアー作戦が開始されてから、カポスのバラックが総司令部となり、たくさんのモニターやコンピューターが運び込まれ、工作員が活動を始めた。カタカタとキーボードを叩く音だけが響き、モニターにさまざまな情報が表示されている。

「タレクの衛星携帯電話の微弱電波がなくなりました」。
工作員の一人が報告した。この報告に、カポスとチャーリーは、顔を見合わせた。ビンラディンに、こちらが追跡していることがバレた・・・。
「すぐに襲撃部隊を出動させろ」。チャーリーが叫んだ。

キャンプ内のシールズたちが待機している倉庫のサイレンが鳴った。いつものように訓練開始の合図である。隊員たちは、いつものようにテキパキと装備を身に付け、ヘリポートへ向かう。しかし、いつもと違うことが1つあった。

倉庫の入口で、ダンハム大尉が怒鳴っている。
「今日は訓練じゃない。実戦だ。弾丸を多めに持ってゆけ!!」

襲撃部隊のチーム6全員がヘリに乗り込むと、ヘリは、すぐに飛び立った。チームの全員が、ダンハム大尉の「実戦」の言葉の意味を考えていた。そこへ、隊長のダンハム大尉から無電が入った。

「ダンハム大尉からチームメンバーへ。本日は訓練ではない。実戦である。作戦名はネプチューン・スピアー」。

「作戦目的は、人質救出ではない。アルカイダの首領、オサマ・ビンラディンの殺害である。全員、気を引き締めろ」。

「繰り返す。作戦目的は、ビンラディンの殺害である。たとえ、奴が背を向けて逃げても、降伏を申し出ても射殺しろ。屋敷内にはビンラディンの家族もいる。女子供でも作戦の障害となるなら射殺せよ。これより、ビンラディンをジェロニモと呼ぶ。各員、注意せよ」。

チームの一同、顔を見合わせた。キャンプ・アルファに来て以来、特殊な作戦を行うと思っていたが、まさかビンラディンの殺害とは・・・。誰もが予想していなかった。

「作戦は、当初の予定通り、屋上と地上の二手に分かれて行う。訓練通りにすれば、絶対に成功するぞ」。

母屋の襲撃チームのリーダー、トロイ・ロバーツ軍曹は、目を閉じてダンハム大尉の訓示を聞いていた。ついに、この日が来た。結局、最後まで内部の様子が分からなかった。

突入後、物陰からナイフで切りつけられるかもしれない。背後から撃たれるかもしれない。いろいろなことが頭を巡った。最後には、妻ブリタニーの顔を思い浮かべた。必ず生きて帰る・・・。そう、心に誓った。


アボタバード ビンラディンの屋敷
ビンラディンは、その夕食を、普段通りに家族とともにとった。妻、息子、孫、一家揃っての楽しい団らんであった。その場所から、わずか数メートルのところで、タレクの妻と娘が陵辱され、拷問を受けていることなど、全く気にしていない。

夕食を終えると、3階の寝室へ入り、そのままベッドに横になった。
落ち着け・・・。アメリカ軍はすぐには攻めて来ない。最近のアメリカは、くだらん個人主義やマスコミ世論を気にして、何をするにも時間がかかる国家になった。たとえ、今夜、私がここに居ることがバレても、すぐには、状況は変わらない。

今まで、そうやって逃げてきた。明日は警察署長のナセルを呼びつけ、家族だけでも避難させよう。やがて、ビンラディンは眠りに落ちた。


次回更新は、1月1日「ネプチューン・スピアー」です。
ご意見・ご感想をお待ちしております。



それはさておき・・・
まぁ、あんまりたいしたことではないんですが、
年末の31日、コミックマーケットに参加致します。
でも、間借り参加なので、あんまり本をもってゆきません。
一応、ブース番号は、東地区 U-09Bです。

------------------------------------------------------------------------------------------
同人誌も発行しております。こちらもどうぞ。同人誌書店COMIC ZIN通販ページと 虎の穴通販ページに飛びます。(購入には会員登録が必要です。)



私の訳書(共訳・監修)です。よろしかったらお読みください。
画像クリックでamazonへ飛びます。







  


Posted by 友清仁  at 07:00Comments(2)Story(物語)

2013年12月18日

ネプチューン・スピアー Neptune spear 5

パキスタン アボタバード
タレクは、倉庫の様子を見て愕然とした。目の前に広がるのは、もぬけの殻の倉庫であった。
「私の荷物は、どこだ?」 
タレクは、倉庫の管理人の胸ぐらを掴んで叫んだ。

管理人の初老の男は、泣きそうな顔をして、
「昨日、イスラマバードの本社よりトラックがやってきて、引渡しの日が早まったので、直ちに荷物を処分するとかで、すべての倉庫の荷物をトラックに乗せて持って行きました・・・」。

タレクは、管理人を突き飛ばすと、倉庫事務所の電話で倉庫会社の本社に怒鳴った。しかし、電話に出た担当者は、要領を得ないようで埒があかなかった。タレクは、受話器を叩きつけると、その場で頭を抱えた。

アルカイダ、いやビンラディン一家の財産を奪われた・・・。タレクは、胸に矢が刺さったかのような気持ちになった。非常にマズイ・・。ビンラディンの財産を預かる身として、この責任を取らねばなるまい。

このまま逃げてしまおうか・・・。一瞬考えたが思いとどまった。なぜなら、タレクの妻と娘が人質として、あの屋敷にいるのである。彼女らを捨てて自分だけ逃げるわけにはいかない。

自分が逃げれば、その責任を妻子が取らねばならない。ひどい拷問のうえ、殺されるに違いない。そんな場面を、タレクは、今まで何度も見てきた。
とりあえず、屋敷に戻り、マスター(ビンラディン)の許しを乞おう・・・。タレクはトボトボと歩き出した。なんの警戒もせずに・・・。背後には、CIAの工作員が尾行し、屋敷に入るところを確認した。


アボタバード ビンラディンの屋敷
その日の夜、タレクは、羊のように丸まって、ビンラディンの前に平伏していた。ビンラディンは、最近、物資や金がなかなか送られてこなかったことを、思いつく限りの言葉で罵倒した。

そして最後に、ビンラディンはドスの効いた声で尋ねた。
「なぜ事前に連絡もせずに、ここへ戻ってきた?」 
タレクは、子犬のような目をして、
「久しくマスターのお顔を拝見しておらず、また屋敷の皆も元気かどうか心配になりまして・・・」。
消え入りそうな声で答えた。

「黙れ!そのような見え透いた嘘をつくな。何か隠しているだろう?」
ビンラディンの鼻腔が大きくなった。

タレクは観念し、荷物・財産を全て失ってしまったこと、衛星携帯電話が故障したことを必死に弁解した。5秒、沈黙が続き、ビンラディンは、「お前の携帯電話を見せろ」。静かに言った。

タレクは、恐る恐る懐から例の携帯電話を取り出し、ビンラディンに手渡した。見ると、電源が入ったままであった。電源が入っているということは、携帯電話から微弱電波が発信されているに違いなかった。この携帯電話の位置を知らせているようなものだ。

そのあと、ビンラディンは、急に穏やかな声になって、SIMカードやプリペイドカードを確認したかなどを尋ねた。タレクは、なぜそんなことを聞くのか分からなかったが、考える余裕はなかった。なによりも、ビンラディンの声が穏やかになったことで安心した。

安心すると、喉がカラカラに乾いていることに気がついた。たまらず目の前の氷水を一口飲んだ時だった。ビンラディンが立ち上がり、タレクの携帯電話を、バキバキと音を立てて2つに割った。目が鋭く、不気味に輝いていた。

タレクは、氷水のグラスを手から滑り落とすと、立ち上がることもできず、四つん這いになって、出口へ逃げようとした。これから起こることを、タレクは動物的な勘で察知した。

あと30センチで、ドアノブに手が届くというところで、タレクは、後ろの襟首を掴まれ、部屋の中央に引きずり戻された。タレクは、何かを叫びながら抵抗したが、身長が190センチ超の大男のビンラディンには、なんの意味もなかった。

ビンラディンの右の拳が、タレクの腹に突き刺さった。ビンラディンは、ただのサウジの金持ちではない。格闘技の相当な達人でもあった。腕力で周りを威圧しなければ、金だけ奪われて、国際テロ組織のリーダーになれなかっただろう。右の拳が、タレクの肝臓を破裂させた。

ビンラディンは、腹を抱え、激痛に苦しむタレクに何の情けをかけることもなく、顔や腹を何度も殴りつけた。10分後、タレクの体が動かなくなった。
「この死体を片付けろ。奴の妻と娘も犯して殺せ」。ビンラディンは、平坦な声で言った。


次回更新は、12月25日「ネプチューン・スピアー」です。
ご意見・ご感想をお待ちしております。


------------------------------------------------------------------------------------------
同人誌も発行しております。こちらもどうぞ。同人誌書店COMIC ZIN通販ページと 虎の穴通販ページに飛びます。(購入には会員登録が必要です。)



私の訳書(共訳・監修)です。よろしかったらお読みください。
画像クリックでamazonへ飛びます。







  


Posted by 友清仁  at 07:00Comments(0)Story(物語)