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Posted by ミリタリーブログ  at 

2013年11月13日

キャンプ・アルファ Camp α 10

その日から、連日、襲撃訓練が行われた。訓練開始の時間は不定で、いつ始まるか分からない。シールズたちは、絶えず緊張して日々を過ごした。

「訓練開始。総員、配置に付け」。けたたましいサイレン音と共に、シールズたちに出撃命令が出る。シールズたちは、各自の装備をつけ、構内のヘリポートへ走る。すでにチヌークとブラックホークのローターは回転しており、いつでも飛び立てる状態であった。

総員がヘリに乗り込むと、点呼が行われ、すぐに飛び立った。前回と同じように2時間ほど飛行する。機内のトロイ・ロバーツ軍曹は、毎日繰り返される訓練で感覚が麻痺し、もしかしたら、今日は作戦決行の日で、敵地に向けて飛行しているのではないかとさえ思い始めた。そうやって感覚を鈍らせるのも、連日、訓練する目的でもある。

「降下スタンバイ!」。
ブラックホークのパイロットが叫ぶ。いつものように流れるように準備が進み、メンバーが降下をはじめる。トロイも屋上に降り立つ。ナイトビジョンでしか周囲を見たことがないせいか、昨晩も来たはずのキルハウスだが、同じ場所に来ている気がしない。

「突入!」。
ソルベスキー軍曹が、ベータチームのサインを確認して号令を出す。トロイたち、突入チームは、ロープを伝って三階に突入する。昨晩と同じ間取りだった。やはり訓練だった。

「ルームAクリア!・・・・・2秒」、「ルームBクリア・・・8秒」、「ルームCクリア・・・・17秒」。
先行してクリアリングをするメンバーの報告を聞きながら、トロイは、腕時計の秒針を見つめていた。最後の部屋がクリアリングするまで、時計から目を離すことはなかった。

「コンパウンド(建物)、オールクリア!・・・・59秒」。
トロイは、最後の部屋のクリアリングの報告を聞くと、すぐにダンハムとソルベスキーに報告した。
「だいぶ早くなったな」。ダンハム大尉から返信があった。
「訓練を重ねていますから・・・」、とトロイは答えたが、ストレスが溜まった。

どんなにクリアリングに早くなっても、所詮、実際の部屋の作りとは異なるわけで、もちろん、訓練ごとに、鍵のかかっている部屋や人質や敵の位置なども変えてはいるが、実戦でこのようにうまくいくとは限らない。どんなに訓練を重ね早くなったとしても、トロイは、砂を噛むような思いだった。

訓練を終え帰還すると、毎回、反省会が開かれる。どんなに些細なことでも意見され、メンバー全員で改善策を考える。突入チームリーダーのトロイも、反省点を求められるが、「とくに問題点は見つからない」、としか発言できなかった。

突入チームというものは、必要十分な人数で編成される。少なすぎると、クリアリングに時間がかかり、敵の反撃を受ける可能性があり、多すぎると、狭い通路で立往生してしまい、敵の攻撃を受けやすい。適切な人数とクリアリングの手順・・・。これを決めるものは、建物の構造だった。建物の構造を知りたい・・・。トロイの願いはその一点に絞られた。



ワシントンDC 大統領執務室
第44代アメリカ合衆国大統領、バラク・オバマは、早い朝食を終えると、すぐに執務室へ移動し、秘書官から本日の予定のブリーフィングを受けていた。

相変わらず、面会が多い。中には、何をやっているのか分からない団体の長との面談もある。はっきり言って、そのような人物に会う必要はないのだが、大統領というものは、そんな人物にも会ってやり、愛想笑いもしてやらなければならない仕事である。

1日のスケジュールの最後に、大統領秘書官は、CIA長官レオン・パネッタとアメリカ特殊作戦軍司令ウィリアム・マグレイブとの面談、と告げた。普段から犬猿の仲とも言われる、CIAと特殊作戦軍のトップが揃って面談を申し込むとは・・・・。オバマ大統領は、大きなものが動き出したことを感じた。


次回更新は、11月20日 「ネプチューン・スピアー」です。
ご意見・ご感想をお待ちしております。


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Posted by 友清仁  at 07:39Comments(0)Story(物語)

2013年11月06日

キャンプ・アルファ 9 camp A

「紹介しましょう。こちらは、今回の作戦のオブザーバーのチャーリー・ベッカーさんです」。
カポスが部屋のライトをつけて、ダンハムに紹介した。映像の途中で入ってきたのか、それとも始めからそこにいたのかわからないが、その人物は、カポスがその名を告げるまで、ダンハムは全く気が付かなかった。ダンハムは訳がわからなかったが、とりあえずチャーリーに会釈した。しかし、チャーリーは、微動だにしなかった。

初めてチャーリーを見て、その姿に、ダンハムはギョッとした。両足が膝から下がなく、左手も指がほとんどない。その様子から、傷痍軍人であることはすぐにわかった。

「時間がかかりすぎる」。
この言葉に、ダンハムは少しイラついた。今回は、初めての突入訓練であり、目的は、各人の動きを確認するためのものであって、これから訓練を重ねればもっと短くなるはずである。今回は15分だったが、10分くらいまで縮められるだろう。

「時間がかかりすぎだ。どんなに長くとも、8分が限界だ」。チャーリーは言った。
8分だと?ダンハムは、イラつきから怒りに変わった。
「あなたが何者かは知りませんが、あの建物の規模を考えれば15分はかかり過ぎにしても、8分は無理だ。むしろ8分で攻略できる手段を教えて欲しい」。

「そこをなんとかするのが、あんたらの仕事だ」。
チャーリーは、カポスの顔を見て、
「そろそろ、任務について教えてやってもいいのでは?」
カポスもそのつもりだったようで、頷いた。

「ダンハム大尉、今回の任務は、ほかでもなくビンラディンの暗殺です。そして、あなた方シールズ チーム6がこの作戦の実働部隊として選ばれました。心してこの任務にあたって欲しい」。
カポスは一気に言った。その言葉に、ダンハム大尉の体に衝撃が走った。

まさかとは思ったが、アメリカはついにビンラディンの居場所を突き止めた。そして、その襲撃作戦にシールズが選ばれた・・・。
なんということだろう。ダンハムは少し動揺した。動揺しているダンハムを全く無視するように、チャーリーが、8分以内でなければならない理由を説明し始めた。

ひとつは、領域侵犯であること。もう一つは、屋敷の近くに警察署や軍施設があり、すぐに搜索の手が伸びること、であった。一般的に15分という作戦時間は、十分、合格点だが、不測の事態が起こった際に、15分では対応しきれず、おそらくパキスタン軍が動き出す可能性があった。

ダンハム大尉は、呆然と聞いている。チャーリーが続けた。
「その代わり、交戦規定は特別とする。まず、ビンラディン本人に対しては、背を向けて逃走しても、射殺しろ。むしろ、生け捕りは困る。・・・・たとえ降伏を願い出ても射殺しろ」。
「屋敷には、ビンラディンの家族が住んでいる。女子供でも、作戦を妨害する行動をとったらならば、射殺してもよい」。

一通り、説明が終わると、チャーリーは、「以上の条件を下に、再度、作戦を練り直して欲しい。だが、部下には、まだビンラディン襲撃作戦であることを教えるな」。と付け足した。

以上で、検討会が終わった。ダンハム大尉は、部下の待つ倉庫へ歩いて行った。体が興奮しているせいか、アフガンの夜の空気がよけい冷たく感じた。

次回更新は、11月13日「キャンプ・アルファ」です。
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Posted by 友清仁  at 07:00Comments(0)Story(物語)

2013年10月30日

キャンプ・アルファ Camp α 8

屋上に降り立ったアルファチームは、素早く、階下の3階へ下りる準備を進めた。同時にスナイパー2名が当座の脅威となる敵兵、・・今回は訓練であるため、棒の先に赤い風船が取り付けられている・・、を手際よく排除していった。

スナイパーが、すべての敵を排除し終わると、ソルベスキー軍曹の肩を叩いて知らせた。暗闇の中では、ハンドサインや音声では、間違えることがある。感覚と視覚に訴えるのが一番である。それをソルベスキーは、ライトを3回点滅させて、門の前で待機するベータチームのダンハム大尉に伝える。

地上のダンハム大尉は、ライトの点滅を認めると、同じように、門のそばで爆薬を仕掛け終わっている兵士の肩を叩く。今回は、爆薬を仕掛けたことにして、門付近の2名の兵士は、勢いよく門を開けた。

門が開かれると、ダンハム大尉が何も命令せずとも、ベータチームは一斉に敷地内へなだれ込む。最後の兵士が敷地内へ入ったのを確認すると、ダンハムは、屋上に向かってライトを6回点滅させた。

屋上のアルファの侵入チームは、その点滅を見て、こちらも一斉に3階へ侵入する。ソルベスキー軍曹は、不測の事態に備えるため、スナイパーとともに屋上に残った。

「ムーヴ、ムーヴ、ムーヴ!」 侵入部隊のリーダーである、トロイ・ロバート軍曹は、メンバーを叱咤した。
「ルームAクリア!」、「ルームBクリア!」、「ルームCクリア!」、突入部隊のメンバーたちは、あらかじめ、番号を付けてある部屋をどんどんクリアリングしてゆく。

突入チームの無線のPTTは、入れっぱなしになっている。そうすることで、チーム全員が、クリアリングの状況を知り、自分のするべきことを考えられるようになっている。トロイもその無線を聞きながら、クリアリングメンバーのあとについてゆく。

やがて、トロイは、1階に到着し、「ルームKクリア!」という報告を聞き、すぐに、「コンパウンド、オールクリア!(建物制圧)」と、叫んだ。

その音声を聞いたダンハム大尉は、「GO!」と叫び、ベータチームを母屋のあるエリアに突入させる。チームは、二手に別れ、これも、敷地内にランダムに置かれた風船を射撃し、クリアリングを行った。こちらもすぐに、「フィールド、クリア!」と、部隊長から報告が入る。

「エヴァギュエイション(撤退)!」。ダンハム大尉は、メンバーに告げる。アルファ、ベータチームの総員が、屋敷の東側の畑のエリアに集合する。そして、メンバー全員が集まったことを確認すると、ダンハムは、上空に向けてライトを点滅させ、上空で待機するヘリを呼び寄せた。ブラックホーク2機が飛来し、襲撃メンバーを回収すると、瞬く間に上昇した。ダンハムが時計を見ると、突入から撤退まで、わずか15分であった。


キャンプ・アルファに帰ると、突入作戦の検証を行いたいと、基地責任者スチュワート・カポスがダンハムに言った。訓練はすべて、各兵士のライブカメラと上空のブラックホークのカメラに録画されている。その録画を見て検証するのだ。しかし、その検証に呼ばれたのは、ダンハム大尉だけであった。

ダンハムは、カポスの部屋に入った。すでに深夜だったが、カポスは、いつものYシャツにスラックス姿で待っていた。すでに部屋のライトが消され、訓練の映像が流れた。水が流れるが如き、完璧な作戦であった。ダンハム大尉は、CIAと行う、作戦の検証作業が何の意味を持つのか、そればかりを考えていた。

映像が終了すると、暗闇の中から声が聞こえた。「素晴らしい作戦だが、少し時間がかかりすぎる」。その言葉にCIAのカポスも同意見という顔をした。

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Posted by 友清仁  at 07:00Comments(3)Story(物語)

2013年10月23日

キャンプ・アルファ Camp α 7

作戦会議の翌日には、チームの編成が決まった。アルファチームの隊長は、ベテランのソルベスキー軍曹であり、トロイ・ロバーツ軍曹も同じチームになった。ベータチームは、ダンハム大尉が率いる。編成が決まった2日後には、キルハウスが完成したとのことで、チーム全員がヘリでキルハウスまで移動した。

キルハウスの見学は、夜間に行われた。理由は簡単で、コンテナ城塞から出るには、ヘリコプターで上空から出るしか手段がなく、昼間は、秘密基地の隠匿性を確保するため、ヘリの離着陸が禁止されているのだ。もっとも、突入作戦も夜間に行うのだから、シールズからすれば、こちらのほうが、都合が良かった。

初回は、フル装備ではあるが、突入訓練など行わずに、チーム全員が建物を回り、建物の状況を確認した。
「でかい建物だ。アルカイダの本拠地でも攻撃するつもりか?」 ソルベスキー軍曹が、いつものようにぶっきらぼうに言った。

その言葉に、その場にいた数名が、今回の任務は、もしやビンラディン襲撃か?と、一瞬、考えた。しかし、作戦について憶測してはいけないという、特殊部隊の不文律を守り、誰ひとりとして、その後の会話を続けなかった。

トロイ・ロバート軍曹は、侵入する母屋の内部にいた。いくつか部屋が作られてはいるが、内部の構造がわからないため、アフガニスタンの一般的な家屋の作りだという。つまり、実際とは異なるわけで、あくまでも参考程度にしかならない。

トロイは、ナイトビジョンを通して、建物を廻った。ドアを開けるたび、階段を下りるたび、自分がどのように動くべきかシミュレートし、頭の中に刻み込んだ。しかし、参考程度にしかならないのだ。ストレスが溜まった。
やがて、集合の無線が入り、各人はヘリに集合し、帰還した。

突入訓練は、翌日の夜から始まった。訓練は、キャンプ・アルファからヘリで飛び立つところから始められたため、突然、訓練の号令がかかり、各人、急いで装備をつけて、ヘリに乗り込む有様だった。

ヘリが離陸してから、2時間ほど経過した。昨夜は、キルハウスまで、わずか30分だった。機内の誰もがおかしいと思い始めたころ、ダンハム大尉は、「目的地までの飛行時間まで、実戦と同じなのだそうだ」、とメンバーに告げた。

それから数分後、ブラックホークのパイロットが、「降下スタンバイ」と告げた。機内の各人は、すぐにファストロープの安全具を確認した。機内に照明はないが、メンバーは、手の感覚で安全装置が正常であることを確認できる。後部のメンバーから前部のメンバーへ、チェックが済んだことを、肩をたたいて知らせてゆく。

「オール・クリーン!!」 ソルベスキー軍曹が、最終確認のサインを見た直後、パイロットに向かって叫んだ。そして、さらに数メートル降下し、機体が水平になると、「GO!GO!」とパイロットが叫んだ。その声と同時に、ヘリからロープが投げ放たれ、メンバーが次々とロープを伝い、闇に消えていった。

トロイの順番が来た。下を見ると、漆黒の闇で、着地地点が屋上なのか地面なのか、何メートルあるのかすら分からない。しかし、ファストロープの訓練は、今まで数え切れないほどやってきた。いまさら恐怖など感じない。無意識に体が動き、ロープを伝ってするすると降りた。

トロイが降りて数秒後、チームリーダーのソルベスキーも降りてきた。全員が降下すると、ブラックホークは、すぐに上昇し、闇に消えた。アルファチーム10名が屋上に降りるまで、わずか30秒であった。

ナイトビジョンのスイッチを入れると、ライムグリーンの中に、メンバーの姿が映った。眼下を見下ろすと、ベータチームが門に向けて走っているのが見えた。ついに突入訓練が開始された。

次回更新は、10月30日「キャンプアルファ」です。
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