2011年01月12日

タクール・ハーの戦い Takur Ghar 9

セルフ大尉は、ヘリ後部から飛び出すと、すぐに岩場に滑り込んだ。すでに岩場にいる部下たちに言葉をかける間もなく、周囲の状況を確認した。

まだ日が昇りきっておらず、あたりは薄暗かった。ヘリの右舷15メーターの位置には、スビタク軍曹のミニガンで射殺されたと思われるアルカイダ兵の死体があった。さらに2時方向には、何本かの木が立っており、その向こうに、アルカイダのタコツボ陣地があるようだった。

地面すれすれの位置に、銃火がいくつも見えた。おそらくあそこがアルカイダの本拠地なのであろう。しかし、たくみにカモフラージュされた陣地は、規模も、そしてどれくらいの兵力・火力があるのかも分からなかった。

テロリストたちは、そのタコツボ陣地から、ヘリに向けて盛んに射撃を加えてきた。いまだにヘリ内部に兵士がいると思っているのか、向こうもあたりの様子が分からず、やみくもに撃っているだけかもしれなかった。

とにかく、タコツボの大きさと兵力を量らないと、反撃も援軍要請もできないと思ったセルフ大尉は、ランカスター軍曹にチヌークの右側に回り、タコツボの大きさを見るように命令した。

「どうやら、少なくとも1日はこの場所に釘付けだ・・。もしかしたら俺の死に場所かもしれない・・」。セルフ大尉は思った。これから日が昇り、あたりが明るくなってくる。アルカイダも岩場に隠れているアメリカ兵がわずかだと知れば、容赦なく攻撃を加えてくるだろう。たとえ援軍を呼んだとしても、チヌークの大きな機体は、RPGの格好の餌食である。
「夜が空けきる前に、決着をつけねばならん・・」。セルフ大尉は、あせっていた。

相変わらず敵のタコツボからRPGが何発も発射されていた。岩場で身をかがめているレンジャーたちの頭上を何発も飛んでいった。そのうちの1発が墜落したチヌークのわずか10メーターのところで炸裂した。ロケット弾の破片が当たり一面に飛び散り、運が悪いことにその破片の1つがヘリ左舷をほふく前進していたランカスター軍曹の左ふくらはぎに食い込んだ。ランカスターは、その場から動けなくなってしまった。

すぐにウォーカー軍曹が駆け寄り、岩場へと引きずって戻った。悪いときには悪いことが重なるものだと、セルフ大尉は、心の中で舌打ちした。セルフは、他の部下たちにケガがないか確認するために、振り返ろうとすると、太ももに激痛が走った。みると、自分のBDUから血がにじんでいた。しかし戦闘での緊張のためか、それ以後、痛みを感じることはなかった。

部下たちに自分のケガのことは黙っていることにした。多くの重傷者、戦死者がいるこの状況で、隊長である自分がしっかりしなければ、部下を生還させることなど不可能だと思ったからである。

セルフは、岩場の影から2倍率のエイムポイントをのぞいて、敵情を観察した。相変わらず銃火がみえた。敵は弾丸のストックなどまったく気にしていないかのようであった。

その中で赤い斑点が2つ、敵のタコツボ付近を、並んでフラフラと漂っているのが見えた。あたりはまだ暗いので、よく分からない。しかし2つの斑点は、まるで映画「ターミネ―ター」のロボットの目が動いているようであった。
「なんだ、あれは?」。セルフは隣にいたウォーカー軍曹に言った。


次回更新は、1月19日 「タクール・ハーの戦い10」です。お楽しみに。
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Posted by 友清仁  at 07:06 │Comments(0)Story(物語)

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