2013年09月18日

キャンプ・アルファ Camp α 2

乞食のチャーリーは、指輪を受け取ると、そのまま町にあるCIAの拠点に入った。そして、何年かぶりにシャワーを浴び、ヒゲを剃り、清潔な体になった。

案の定、翌日には、「あの乞食は相当な金を持っている」、という噂が広まり、街中の人間が、チャーリーを探した。街の有名人で金持ちを見たいという者もいれば、今までの浄財を返せと怒る者おり、いずれにせよ、チャーリーは、アボタバードに居られなくなった。シャワーを浴び、ヒゲを剃ったのも、今が撤退の潮時と考えたからである。

さて、あの指輪であるが、さらに調べてみると、男性王族が持つ物と女性王族が持つ物、また、王族のグレードにより、紋様に微妙な違いがあることがわかった。指輪の紋様は、男性王族で、しかも、かなり王室に近い者がもつものであることがわかった。

パキスタンの片田舎で、サウジ王室に密接に関わりのある者・・・。チャーリーは、パキスタン在住のサウジ王室の者を調べた。3名ほどいたが、すべて首都イスラマバードに住んでおり、王室との関係も、この指輪が持てるほど深くなかった。

ビンラディン以外に、何者があの屋敷に住んでいるのだろう。チャーリーは思った。ビンラディンはサウジ王室に近い。例えば湾岸戦争の時、ビンラディンは、ファハド皇太子に謁見し、アメリカ軍をサウジに入れないように進言した。皇太子に謁見を許される程の者ならば、この指輪を持っていてもおかしくない。

数日後、チャーリーは、この指輪とともに、荷物に紛れて、パキスタンを去った。


アフガニスタン某所 キャンプ・アルファ
アフガニスタンの砂漠の真ん中に、古ぼけたコンテナが大量に遺棄されている。塗装が剥げ、腐食が始まっている。コンテナにキリル文字(ロシアの文字)があることから、ソ連侵攻時に、ソ連軍が持ち込み、そのまま捨てていったのだろう。コンテナは、2段に重ねられ、整然と並んでいる。遠目で見れば、まるで城壁がそびえているようである。

誰が見ても、遺棄されたコンテナ群にしか見えないのだが、このコンテナ群には、カラクリがあった。実は、コンテナはロの字に並べられており、真ん中に空間が空いている。広さは、ちょうどサッカーコートほどである。そのコートほどの広さのところに、大小さまざまな仮設の建築物が建っていて、まさにコンテナは、城壁のようにそれらの建築物を囲んでいる。

その城塞の中の建物の1つに、先ごろアボタバードを脱出したチャーリー・ベッカーがいた。両足のないチャーリーは、ソファに座っていた。すでに、体を洗いヒゲを剃り、アメリカ人の顔に戻っている。長く伸びた髪は、後ろに束ねている。

そこに、男が一人入ってきた。国家秘密活動部長のスチュアート・カポスである。チャーリーは、その姿を見て、鼻で笑った。「CIAのお偉いさんってのは、世界のどこでもアメリカと同じ生活をするんだな」。

カポスの格好は、下はスラックスを履き、上はネクタイこそしていないが、糊の効いたシャツを着ていた。この建物もクーラーが効いていたし、カポスの机と思しき所には、パソコンが2台もあった。
「ここは、ビンラディン追跡の最前線基地です。これくらいは普通でしょう」。カポスには、チャーリーの嫌味が通じていない。

チャーリーは、バグラム空軍基地に到着したらすぐに、ヘリに乗せられ、この秘密基地、キャンプ・アルファに連れてこられた。与えられた役割は、カポスのアドバイザーである。
「危険な任務、ご苦労様でした。しばらくここで休んでください」。カポスは、丁寧な言葉遣いで言った。

「ありがとよ。ここはアボタバードに比べれば、飯は美味いし、ビールも飲める。クーラーも効いて、シャワーも存分に使える。まさに天国だ。しばらく厄介になる」。
チャーリーは、義足を付け、松葉杖を掴むと、キャンプ内の自室へ戻っていった。

次回更新は、9月25日「キャンプアルファ」です。
ご意見・ご感想をお待ちしております。
------------------------------------------------------------------------------------------
同人誌も発行しております。こちらもどうぞ。同人誌書店COMIC ZIN通販ページと 虎の穴通販ページに飛びます。(購入には会員登録が必要です。)
キャンプ・アルファ Camp α 2キャンプ・アルファ Camp α 2キャンプ・アルファ Camp α 2キャンプ・アルファ Camp α 2キャンプ・アルファ Camp α 2


私の訳書(共訳・監修)です。よろしかったらお読みください。画像クリックでamazonへ飛びます。
キャンプ・アルファ Camp α 2キャンプ・アルファ Camp α 2キャンプ・アルファ Camp α 2キャンプ・アルファ Camp α 2





同じカテゴリー(Story(物語) )の記事
 作戦終了 Over the Operation (2014-02-19 07:00)
 コードワード:ジョロニモ Code word GERONIMO 4 (2014-01-29 07:00)
 コードワード:ジョロニモ Code word GERONIMO 3 (2014-01-22 07:00)
 コードワード:ジョロニモ Code word GERONIMO 2 (2014-01-15 07:00)
 コードワード:ジョロニモ Code word GERONIMO (2014-01-08 07:00)
 ネプチューン・スピアー Neptune spear  7 (2014-01-01 07:00)

Posted by 友清仁  at 07:00 │Comments(0)Story(物語)

※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。